お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

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第174話

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「ヴァローネ伯爵領を……ですか」
と言ったっきりアーロンは黙り込んでしまった。

昨日は誰にも何も話す事なく、私は何よりも睡眠を優先させた。アーロンもテオもやきもきした事だろう。

「そうなの。……皆私を買い被り過ぎじゃないかしら?」
昨日の夢の中の公爵様を含め、全員私に期待し過ぎだ。

「でも、ヴァローネ伯爵にだけ処分を下すというのは、やはり陛下もお優しいですね」
とテオが納得した様に頷いた。

「そうね。でも男爵位に格下げよ。ご夫人は妹君に顔向け出来ないと泣いていらっしゃったらしいわ」

ヴァローネ伯爵家も中々の名家だったのに……馬鹿な男1人の為に、その歴史に泥を塗る形となってしまった。ご夫人も御子息もヴァローネ伯爵に逆らえず止められなかった事をとても悔いていたと聞く。ご令嬢はまだ独身だったかと思うが、これではますます縁遠くなってしまうだろう。

「ヴァローネ伯爵領は今は荒廃していますがその領地は広い。そこを3分の2ですか……。これは骨が折れますね」
アーロンは難しい顔で腕を組んだ。

「実は、これを機にアーロンに補佐を付けようと思うの」
と言う私の言葉にアーロンは目を輝かせた。

「本当ですか?!いや~ありがたい!!オーネット公爵家はその大きさに似つかわしくなく、使用人が少な過ぎると思っていたんですよ」
と言うアーロンに私は心の中で(ケチだからよ)
と付け加えた。

「しかも陛下が紹介してくれるらしいわ。と、同時にギルバートにも補佐を。補佐というより……」
と言う私の言葉を継ぐように、

「父は今回の1件で随分とやらかしましたからね。……父に代わる者を育てるのですね?」
とアーロンは私に尋ねた。


「ええ。その通りよ。後にはアーロンの右腕になって貰えるように」

「私には補佐が2名って事ですか!少しは楽になりますかね」
と笑顔のアーロンに、

「私がまだまだですからね。アーロンさんには苦労かけると思いますが、よろしくお願いします」
とテオは小さく頭を下げた。

「さて、その補佐がいつから来るかはわからないけど、とりあえずやるべき事は山のようにあるわ。まずは、鉱山までの道のりの整備。それと、ヴァローネ伯爵領の再建よ!」
と私が元気にそう言うと、

「うちが管理する領地の名は?」
とアーロンが尋ねる。

「一応、タイラー伯爵領となるわ。いずれテオの子どもや子孫に残してあげる事が出来るでしょう?」
と私が口にすると、テオは少しだけ複雑そうな顔をした。
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