お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

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第173話

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「だって!私はただの伯爵令嬢だったんてすよ?!しかもかなり平凡な。
たまたま1度見たものを忘れないと言う特技があっただけです。
それなのにオーネット公爵家なんて大き過ぎる名前を任されて。
今まで何度心が折れそうになった事か!その上今回は命まで狙われましたよ?」

「それは私のせいではないが……無事で良かったな。しかしな、君は自分の価値を分かっていない。君の特技はそれだけじゃないぞ?」

「他に何があるって言うんです?」

「それだけでは、君の周りに人は集まらない。私には絶対に出来ない事だ」

「そりゃあ……公爵様はとても偏屈なので」

「フッ。その通りだ。………私は思うんだ。オーネット公爵家は変化するべきだ、と」

「変化?」

「そうだ。時代は変わっていく。これからは色々な事を柔軟に受け入れていくべきだ。今がその時なのだろう。君とテオドールを見ていると、そう思える」

「……見て下さっていたのですか?」

「もちろんだ。最初はヒヤヒヤしていたが……今はもう安心した。任せて良かったと思ってる」

「……これからも見守っていて下さいますか?」

私はつい公爵様に少し縋る様にそう尋ねていた。しかし公爵様は答えぬまま、段々とその姿が薄くなっていく。

公爵様は私の問いに少しだけ微笑んで、その姿は風に散った花びらと共に私の前から音もなく消えていった。

そしてまた私は草原に1人取り残された。



瞼の裏がとても明るい。……朝か。

私が伸びをして寝台から足を下ろしたタイミングでノックの音がした。
ソニアだろう。ソニアは何故かいつも私が起きたとほぼ同時に部屋へと訪れる。何処かから見られているのでは?と思った事も1度や2度ではない。

「どうぞ」
私はガウンを羽織りながら答えた。

「おはようございます。今日は随分とゆっくりなお目覚めでしたね。かなりお疲れだったのでしょう。少しは疲れが取れましたか?」
とカーテンを開けながら尋ねるソニアに、

「あら、私、今日は朝寝坊だったのね。どうりで日が高い筈だわ。ありがとう。お陰でゆっくり休めたわ」
と言いながら私は夢の事を思い出した。

……体はゆっくり休めたけど、公爵様が夢に出てきたお陰で……ちょっとだけ疲れたわ。ちょっとだけね。
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