お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶

文字の大きさ
180 / 189

第180話

しおりを挟む

それからまた半年が過ぎた。

そう……テオがこの屋敷を出て、1年が経ったという事だ。

「父が家に帰って、母が迷惑しています」
アーロンが眉間に皺を寄せながらそう言った。

ギルバートの後継はハリスンという男だ。彼はギルバートに代わり、今は領地で領主代行として働いている。かなりの切れ物だが、その反面人懐っこく、領地の民にも好かれている。
ギルバートは約半月前に引退し、奥様の居るご自宅へと戻ったのだった。

私もあれからは、何度も領地へ赴く様になった。
鉱山までの道は綺麗に舗装され、火事で焼け落ちた家の跡地には小さな商店を作った。
お陰で、夫婦で住む鉱夫の奥様方にとても感謝された。あ、メグにも。

店が出来ればそこを切り盛りする者、そしてそこへ商品を下ろす者が必要だ。少しずつ人が増えていく。職を求める者がオーネット公爵領へと来る様になった。

段々と私も維持だけではなく、オーネット公爵家に貢献出来る様になったと感じられて嬉しい。

「ギルバートはずっと奥様と離れて暮らしていたんですもの。夫婦とはいえ、他人とほぼ変わらないのかもしれないわね」

「我が家では父親は居ないものとして扱われておりましたから。視線の先に入るのも……目障りだ、と」

ギルバートの奥方もなかなか辛辣だ。

そんな話をしていると、ムスカがやや焦った様子で執務室へとやって来た。珍しい。

「奥様」

「あらムスカ?何だか少し焦ってない?珍しいじゃない」
と私が言うと、開いた扉、ムスカの大きな体の後ろから、

「ステラ様、ただいま戻りました」
とテオが顔を覗かせた。

「テオ!!」
私は直ぐ様立ち上がり、テオの元へと走り寄る。

そして、

「どうして帰って来るって教えてくれなかったの?」
とテオの両腕を握ってそう言った。

「驚かせたくて」

「十分驚いたわ。長旅で疲れたでしょう?さぁ、座って。直ぐにお茶を用意するわ」

「ステラ様の淹れたお茶が飲みたかったです。嬉しいな」
と顔をほころばせるテオに私も笑顔になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私、女王にならなくてもいいの?

gacchi(がっち)
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。 それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。 アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。 今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。 だが、彼女はある日聞いてしまう。 「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。 ───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。 それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。 そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。 ※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。 ※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

つないだ糸は切らないで

gacchi(がっち)
恋愛
オトニエル王国の侯爵家に生まれたアンリエットは、八歳の時に視察に行く両親について隣国の辺境伯領地に訪れたが、そこで両親は何者かに襲われ殺されてしまう。一人になったアンリエットを辺境伯二男シルヴァンは王都まで送り届け、いつまでも家族だと約束をして別れる。その十年後、アンリエットは新しく養父となった叔父には冷たくされ、王太子の婚約者として心身ともに疲れ切っていた。ついには義妹と婚約者の交換をちらつかされ何もかもが嫌になったアンリエットは、平民になってシルヴァンに会いに行く。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

処理中です...