2 / 140
その2
しおりを挟む「シビル、貴女に大事な話しがあります」
私はある日侍女長に呼び出された。
何故かそれを見て、今まで私に嫌がらせをしてきたご令嬢達がクスクスと笑っているのが見える。
嫌な予感しかしない。
私は侍女長の部屋に通された。
いつもは話なんて廊下でするのに…益々嫌な予感がする。…私、何かしたかしら?怒られる?
「シビル。貴女ミシェル王女がベルガ王国へ輿入れする話は聞いてる?」
「はい。確か、来月にはあちらに向かうと」
「そうなのよ。今回、南方の国境沿いで隣国のドルーア国と小競り合いがあって、それに援軍を送ってくれたのが、ベルガ王国。
それも知っているわね?」
「はい。ベルガ王国は獣人の国。
獣人は私達より遥かに戦闘力が高く、戦に優れた民であると。
私の兄も騎士団で働いており、そちらの戦争に、参加しておりました。
ベルガ王国には感謝しかありません」
「そう。お兄様はご無事?」
「はい。兄が前線へ送られてすぐに、ベルガ王国からの援軍が来たと。
まるで軍神のようであったと兄が申しておりました」
「そのベルガ王国と、正式に我がアルティア王国が軍事同盟を結ぶ事になって、その証にと、両国の王家で婚姻を結ぶ事になった。
ここまでは大丈夫ね?」
「はい。存じております。
それでアルティア王国からは第三王女であるミシェル様が、あちらの第三王子であるアーベル殿下へ嫁ぐ事になったのですよね?」
「その通りよ」
なんだか、長ったらしく説明をされたけど、これが私を呼び出した事に、どう関係するのかしら?
「それでね。ミシェル王女に1人だけ侍女を付けていく事になったの」
「1人だけですか?」
「ええ。あちらは今回の婚姻にあまり乗り気ではないの」
「!どういうことでしょう?」
「ベルガ王国は私達人間をあまり好ましいと思っていないらしいのよ」
「では何故ミシェル王女を?」
「それは、こちらが無理を通したみたいなの」
「…もしかしたら、獣人の方には『番』という者が存在するからですか?」
「ああ、いえ。そうではないわ。
昔は『番』が存在したらしいけど、今はそういう本能を持った獣人は殆んどいないらしいの。
だから『番』でなければならないと言う事も、『番』を激しく求める事もないそうよ。
ただ、人間とは違うから、違う者を拒む気持ちは誰しも持っているわ…それはミシェル王女もよ」
「と、いう事はミシェル王女は嫁ぐ事を…」
「大層嫌がってるわ」
「あちらも今回の婚姻をあまり善しとしておらず、ミシェル王女も乗り気ではないなら…この婚姻は誰の為なのでしょう?」
私は至極最もな疑問を口にした。
「ねぇ。本当誰の為なのかしら?
まぁ、このままでミシェル王女がこの国に居ても、結婚が難しいからじゃないかしらね」
「……そうかもしれませんが…」
ミシェル王女は黙っていれば、それはそれは可愛らしいお姫様だ。
黙っていれば。
口を開けば、我が儘ばかり。
末の娘で甘やかされたと言うか、あまり手をかけられずに育った弊害だろう。
自分の思い通りに事が運ばなければ、癇癪を起こす。
癇癪を起こせば、皆、宥める事が面倒くさく、結局、言う事を聞く。
そしてまたミシェル王女が付け上がるという悪循環に陥っていた。
王家にとっても、ミシェル王女は頭痛のタネだ。
厄介払いしたかったのかもしれない。
「では、ベルガ王国へ付いていく侍女も、あまり歓迎されていないと言う事ですね」
「護衛は国境までは付いて行くけれど、そこからはベルガ王国の護衛が付くそうよ。
侍女もそこまでは何人付いてきても良いと」
ベルガ王国までは馬車で1週間はかかる。
国境から、ベルガ王国の王都までは馬車で3日程だろうか?
私は学園で学んだ地理を思い浮かべていた。
「そこで、貴方にお願いがあるの」
「なんでしょうか」
「ミシェル王女の専属侍女となって、ベルガ王国へ付いて行って頂戴」
……へ?
180
あなたにおすすめの小説
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる