隣国へ嫁ぐワガママ王女に付いて行ったら王太子に溺愛されました

初瀬 叶

文字の大きさ
22 / 140

その22

しおりを挟む

流石に正解です!とは言えない私は、

「殿下は少し人見知りな所がおありでして…」
と告げると、

「そうか?謁見ではなかなか頓珍漢な発言をしていたが…俺の思う人見知りとは、定義が違うようだ」

その事は、昼間にクリス様に聞いて気にはなっていた。

殿下はきっと、何か粗相をしたんでしょうね…

「すみません。もしよろしければ、謁見で殿下がどのような事を仰っていたのか、お教え願いたいのですが…」

「なら、少しお茶でも付き合え。お茶ぐらいなら然程時間は取らせない」

…お腹、空いてるんだけどな…でも、私から聞きたいと言ったんだし、殿下の発言も気になるところだ。
私はその誘いを受けることにした。



クリス様に連れて行かれた場所…此処は確か、許可なく立ち入りの出来ない場所ではなかったか…私は躊躇った。

「どうした?」

「いえ、あの…ここは許可なく立ち入りが出来ない場所だとお伺いしていたものですから」

「あぁ。俺と一緒なら問題ない。さぁ、入って。その長椅子に腰を掛けろ」

私はクリス様に促されるまま、腰を下ろす。

ここは…どこだろう?

クリス様は近くの使用人に声を掛け、お茶を用意させた。

「腹も減ってるだろう?軽食も用意させた。少し待ってろ」

「はい。あの…ありがとうございます」
と私がお礼を言うと、クリス様は何故か嬉しそうだった。

私の前にはサンドイッチと紅茶が並べられた。どれもとても美味しそうだ。

しかし、クリス様の前には紅茶のみ。

「あの…クリス様はお食べになりませんのでしょうか?」
と私が訊ねると、

「あぁ。俺はもう夕食は済んだ」
と答える。…では何故私を夕食に誘ったんだろう?私が首を傾げていると、

「なんだ、食べないのか?」
とクリス様が心配そうな顔をする。

「あ、いえ…クリス様が先程夕食を、と誘って下さったので…クリス様が夕食を食べていらっしゃらないものだとばかり…」
と私が言うと、

「う?いや…そのなんだ、もう1度夕食を食べても良いかなと、そう思っただけだ」

…慌ててるクリス様が何故か可愛く見える。

「では、一緒に食べましょう!だってもう1度夕食、食べても良いって思うぐらい、お腹空いてるんですよね?
私もこんなたくさん食べられないので、残すより、一緒に食べて頂いた方が助かります」
そう言う私に、クリス様は、

「じ、じゃあ一緒に食おう」
と言ってサンドイッチを1つとると、大きな口で頬張った。
まだ仮面を着けたままだ。
まだ勤務中なのだろうか。

私もサンドイッチを1つ取って頬張った。美味しい!

「ところで、何が訊きたかったんだ?お前の主の」
と1つサンドイッチを食べ終えたクリス様が私に話しかける。

私は当初の目的を思い出した。

「あの…殿下から謁見の時、ベルガ流の挨拶が出来なかった事は聞いたのですが…他にも何か…粗相があったでしょうか?」

「あぁ。この国の王太子が陛下の息子ではない事は知っているか?」

「もちろんです。それに、この国ではそれが然程珍しい事では無いことも」

「まぁ、この国の王子に嫁いでくるつもりなら、それぐらいは基礎知識として知ってると陛下を始め、皆思っていたと思うがな。
お前の主は第一王子に向かって王太子殿下と言ったんだ」

…私はそれを聞いて目の前が真っ暗になった…最大級の粗相じゃないか…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

処理中です...