隣国へ嫁ぐワガママ王女に付いて行ったら王太子に溺愛されました

初瀬 叶

文字の大きさ
53 / 140

その53


「えっと…それはどういう意味で?」
私はレジーに訊く。

「あ、ごめんなさい。私達、いずれはシビルが侍女を辞める予定だから、それまでにしっかりミシェル殿下の為人を理解して、勤めるようにって言われたの。
だから、シビルに頼れるのっていつまでなのかな?って。もしかして、違うの?」
レジーは少しばつが悪そうな顔をした。

「い、いやぁ。私、自分から辞めるつもりはないのよね?つまりはいずれクビになるかも…って事なのかな?」
私のその言葉に、レジーの方が驚いている。

「なんか、ごめんなさい。私、余計な事を言っちゃったのかも…気にしないで」
レジーは泣きそうだ。

でも、気にしないのは無理だけど、2人に同情されるのは何だか違う気がする。

「うん。何でそんな話になってるのか、今は分からないけど、その時までは精一杯働くし、2人には殿下をお願いしなきゃならなくなるから…殿下をお願いね」
と私は努めて明るく振る舞う事にした。
表情は変わらないから、私の今の不安な気持ちも、上手く隠せていると思いたい。


私とレジーは、殿下の朝食後、お互い交代で朝食を取り、フェルト女史を迎える準備をする。

今日は珍しく殿下が庭を歩いてみたいと言うので、フェルト女史が来るまで、少し中庭を散策する事になった。

此処には、アルティアにない花もあるようだ。私も名のわからない花がたくさんある。

すると、少し歩いた所で、アーベル殿下が庭師に混じって花の剪定をしているのが見えた。

何故殿下が?と私が不思議に思っていると、アーベル殿下がこちらに気付き、若干嫌そうな顔をした。
しかし、流石に自分の婚約者(仮)を無視するのはよろしくないと思ったのか、こちらに声をかけてきた。

「…散歩か?」
その問いにミシェル殿下は、

「見たらわかるでしょ?」
とこれ以上ないぐらいに可愛くない返答をする。
…が、顔はほんのりと桃色に染まっている。照れてるの?

しかし、例え照れているにしても、その答えを聞いたアーベル殿下には伝わらない。
アーベル殿下の顔は益々苦々しいものになった。

「そうか。じゃあ」
と言ってアーベル殿下は切った花を抱えて城に戻って行った。

私は、アーベル殿下と一緒に居た庭師に、

「アーベル殿下はお花がお好きなのですか?」
と訊ねた。

その庭師はチラリとこちらを一瞥すると、

「ええ。殿下は小さな頃から花を育てる事に興味がおありで。今も暇があるとこうして花の様子を見に来るのです」
と笑顔はないまでも、答えてくれた。

私は、
「教えて頂いてありがとうございます。
こちらの庭のお花はとても色鮮やかで綺麗ですね」
と言うも、
その庭師はもうこちらを見る事もなく、

「どうも」
と言って作業に戻った。

この1ヶ月、こういう反応には慣れてきたが、慣れる事と、傷つかない事は同義ではない。

ミシェル殿下も、庭にはすでに興味を失ったのか、
「帰るわ」
と言って来た道をさっさと戻っていく。
その後を私と護衛は慌てて追いかけた。

もしかすると、ミシェル殿下はここにアーベル殿下が来る事を知っていたのかしら?

そうならば、少し可愛いなと思ったのだが、さっきの返答は全く可愛くなかったな、と改めて思い不器用な主に溜め息をついた。

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――