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その53
「えっと…それはどういう意味で?」
私はレジーに訊く。
「あ、ごめんなさい。私達、いずれはシビルが侍女を辞める予定だから、それまでにしっかりミシェル殿下の為人を理解して、勤めるようにって言われたの。
だから、シビルに頼れるのっていつまでなのかな?って。もしかして、違うの?」
レジーは少しばつが悪そうな顔をした。
「い、いやぁ。私、自分から辞めるつもりはないのよね?つまりはいずれクビになるかも…って事なのかな?」
私のその言葉に、レジーの方が驚いている。
「なんか、ごめんなさい。私、余計な事を言っちゃったのかも…気にしないで」
レジーは泣きそうだ。
でも、気にしないのは無理だけど、2人に同情されるのは何だか違う気がする。
「うん。何でそんな話になってるのか、今は分からないけど、その時までは精一杯働くし、2人には殿下をお願いしなきゃならなくなるから…殿下をお願いね」
と私は努めて明るく振る舞う事にした。
表情は変わらないから、私の今の不安な気持ちも、上手く隠せていると思いたい。
私とレジーは、殿下の朝食後、お互い交代で朝食を取り、フェルト女史を迎える準備をする。
今日は珍しく殿下が庭を歩いてみたいと言うので、フェルト女史が来るまで、少し中庭を散策する事になった。
此処には、アルティアにない花もあるようだ。私も名のわからない花がたくさんある。
すると、少し歩いた所で、アーベル殿下が庭師に混じって花の剪定をしているのが見えた。
何故殿下が?と私が不思議に思っていると、アーベル殿下がこちらに気付き、若干嫌そうな顔をした。
しかし、流石に自分の婚約者(仮)を無視するのはよろしくないと思ったのか、こちらに声をかけてきた。
「…散歩か?」
その問いにミシェル殿下は、
「見たらわかるでしょ?」
とこれ以上ないぐらいに可愛くない返答をする。
…が、顔はほんのりと桃色に染まっている。照れてるの?
しかし、例え照れているにしても、その答えを聞いたアーベル殿下には伝わらない。
アーベル殿下の顔は益々苦々しいものになった。
「そうか。じゃあ」
と言ってアーベル殿下は切った花を抱えて城に戻って行った。
私は、アーベル殿下と一緒に居た庭師に、
「アーベル殿下はお花がお好きなのですか?」
と訊ねた。
その庭師はチラリとこちらを一瞥すると、
「ええ。殿下は小さな頃から花を育てる事に興味がおありで。今も暇があるとこうして花の様子を見に来るのです」
と笑顔はないまでも、答えてくれた。
私は、
「教えて頂いてありがとうございます。
こちらの庭のお花はとても色鮮やかで綺麗ですね」
と言うも、
その庭師はもうこちらを見る事もなく、
「どうも」
と言って作業に戻った。
この1ヶ月、こういう反応には慣れてきたが、慣れる事と、傷つかない事は同義ではない。
ミシェル殿下も、庭にはすでに興味を失ったのか、
「帰るわ」
と言って来た道をさっさと戻っていく。
その後を私と護衛は慌てて追いかけた。
もしかすると、ミシェル殿下はここにアーベル殿下が来る事を知っていたのかしら?
そうならば、少し可愛いなと思ったのだが、さっきの返答は全く可愛くなかったな、と改めて思い不器用な主に溜め息をついた。
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