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その65
クリス様は続けて、
「俺はこの数日、アルティアに赴いてこの婚姻を白紙に戻す話し合いを重ねてきた。
穏便に済ませたかったが、アルティア側は責がベルガ王国側にあると言って譲らない。
話しは平行線であった為、仕方なくこの前のお茶会で、アーベルの体調を害する事になった事の顛末を話したよ。
獣人についてもう少し学ばせておくべきだったとな。
それでも、アルティア側はなかなか首を縦に振らなかったが、それならば同盟を破棄すると言ったら手のひら返しだ。
しかし、散々こちらが穏便に済ませる為に話を持っていったのを、わざわざ壊したのは、アルティア側なのでな。アルティアの有責で破棄させて貰ったよ」
そこまで聞いたミシェル殿下は、
「私に悪意は無かったわ!害する気もさらさら無い!こちらの有責と言うには、理由としては弱すぎる。こちらの足元を見るのね!だから、野蛮だと言われるのよ!」
…この場面で、何故それを言えるのか。私は聞くに耐えられず。
「ミシェル殿下!もう決まった事のようです。これ以上アルティアに不利になる事は…」
と私が話を遮るも、
「私は悪くない!悪くないわ!」
ミシェル殿下はそう叫ぶと泣き崩れた。
クリス様は、
「そう思っているのなら、それでも良いが、この婚約は破棄だ。それは変わらない。
これ以上俺を怒らせるなよ?アルティアとの関係をこれ以上悪化させたくなかったらな」
と冷たく言い放った。
ベルガ王国がその気になれば、アルティアは攻め入られ属国にされる。
鉱山だってその方が好きに出来るのだから。そうしないのは、昔からの付き合いがあるお陰だ。
本当にこの婚姻はベルガ王国にとってはどうでも良いものだったのだ。
アルティア王国側の有責…アルティアはどれだけの賠償金をベルガ王国に支払う事になるのだろう…いや、お金ではないのかもしれない。鉱山の1つや二つ持っていかれるのではないか。
私はあの時、熱を出した自分を責めた。
私が側についていれば、少なくとも今回のように、破棄をされる事はなかっただろう。
だからといって、レジーを責めるつもりはないが。
ベルガ王国の騎士や軍人が仮面を被り鼻を覆っているのは、その嗅覚が長所にも短所にもなり得るからだ。
火薬の臭いに敏感な為、その嗅覚で危険を察知する能力に長けているが、弱点にもなる。その為に特殊な加工をした仮面を被るのだ。それすら、ミシェル殿下は知らなかったのだろう。
私は殿下が勤勉でない事を知っていた。その殿下を甘やかした私にも責任はある。
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