隣国へ嫁ぐワガママ王女に付いて行ったら王太子に溺愛されました

初瀬 叶

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その66


そこへ、クリス様や、アーベル殿下の後ろの扉から、

「まぁ…大の大人が2人して女の子を虐めて何が楽しいのかしら?」
と声がした。
その人は、図書室からお目当ての本を脇に抱え戻って来た所らしい。


私は泣き崩れた殿下の側に膝をつき座っていたので、少し見上げる格好でフェルト女史を見やる。
フェルト女史は2人の横をすり抜けて、私とミシェル殿下、青い顔をしたユリアの所までやって来ると、クリス様と、アーベル殿下に向き直る。その顔はやや怒っているようでもあり、呆れているようでもあった。

フェルト女史は、

「全てをたった16歳の女の子に背負わせるのは、あんまりでは無くて?
確かに、ミシェル王女には、足りない所も多々あったと思うけど、獣人の国に1人…いえ、侍女とたった2人で来て、どれほど心細かったでしょうね?その条件を付けたのは、ベルガ王国でしょう?
歩み寄る必要があったのは、彼女だけかしら?アーベル殿下、貴方の態度にも問題があったのではなくて?それはお互い様なのではないの?
文化も慣習も違う国で彼女は彼女なりに頑張っていたわ。素直でない所はあったけれど、2人から責められる程、そんなに悪い事をしたかしら?」
とクリス様、アーベル殿下を相手に一歩も引かない。
その言葉に、クリス様もアーベル殿下もタジタジだ。

その後に、フェルト女史はミシェル殿下に近寄るよう膝を付くと、

「ミシェル王女。貴女にもたくさん非はあります。
まずは、人の話を聞く耳を持つべきね。
シビルは今までたくさん貴女に忠告をしてきた筈よ?今回の事は、貴女がその全てを無視した結果よ。
流石にこの婚姻についての決定権は王太子殿下にあるから、覆す事は出来ないけれど、貴女の立場がアルティアで悪くならないよう、力を貸します。
私は、貴女が頑張っていた事を知ってるわ。だから、もう泣くのはやめなさい。貴女はアルティアの王女なのでしょう?」
そう言ってハンカチをミシェル殿下に差し出した。

私も、ミシェル殿下もフェルト女史をじっと見つめた。女史は、

「婚約を…破棄される辛さは、良くわかっているつもりよ。色々と思うところはあるけれど、こんな風なやり方は、私はあまり好きじゃないの」
と微笑んだ。
その微笑みは、殿下の涙を止めるのに充分な力があった。

私も、この緊迫した状況から救ってくれたフェルト女史に心から感謝した。

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