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その91

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翌朝、私はやたらと早起きをしてしまった。

ふかふかの寝台にに慣れずに、あんまり眠れなかったからだ。

きっと、ウトウトは出来たと思うが、ぐっすりとは眠れなかった。

すっかり貧乏が身に付いてしまった私に、思わず苦笑する。


こんな時にはさっさと起きて支度するに限る。
私が着替えを終え、髪を纏めていると、
ノックが聞こえた。

「モンターレ様。お支度のお手伝いに参りました。部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
とこの邸のメイドの声が聞こえた。

…支度を手伝う?はて?
私は今までずっと自分で身支度をしてきた。誰かの手伝いは必要ない。

「あ、あのもう自分で出来ましたので…」
と扉を開けると、

「まぁ。お早いお目覚めでしたか。ベルを鳴らして頂ければ直ぐに参りましたのに。
気が付かず申し訳ありません」
と年若いメイドは頭を下げた。

私は慌てて、
「私はいつも自分で支度を整えているので、必要ないんです。お気遣いありがとうございます」
と頭を下げた。

私はまだ侍女なのだが…。
昨日の私も、今日の私も同じ『シビル・モンターレ』であるのに、周りの態度は 180度変わってしまった。

嫌でも自分の立場を認識せざるを得ないが、なんとも、自分が自分じゃなくなるようで、恐ろしい。


朝食を食べた後、私はミシェル殿下の元へ向かう準備をした。

馬車で2時間程だ。昼前には到着するだろう。
私が馬車に乗り込もうと外へ出ると、たくさんの護衛が待っていた。

私は首を傾げるも、イヴァンカ様は、

「仰々しくて、ごめんなさいね。でも、王太子殿下から、くれぐれも貴女の安全を守るよう、言付かっているの」
と少し眉を下げ、私に申し訳なさそうに謝罪した。

…これは、断れないって事よね。確かに、何かあって、責任をとるのは、フェルト公爵になってしまう。

「私…、あんまり外に出ない方が良いんですかね?」
自分が動く事で、たくさんの人に影響を与える事に思い至り、私は青くなった。

「一生、王城で過ごす事は出来ないんだから、気にする必要はないわ。…と言っても貴女の性格だと、気になっちゃうわよね」
とイヴァンカ様は苦笑する。

「はい…。何だか申し訳なさで心が苦しいです。私は私なんですけど…もうそう言う訳にはいかないんですね…」
と私はつい俯いてしまう。

「そうね…。今まで通りという訳にはいかなくなるでしょうけど…慣れるしかないわね」
とイヴァンカ様は俯く私を励ますように、背中を擦ってくれた。

それだけで、何故か涙が出そうになる。

…慣れる事が出来るのだろうか…。
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