130 / 140
その130
婚約者として皆に御披露目したからといって、私がやる事は今のところ変わりはない。
イヴァンカ様に厳しく指導されながら、王太子妃教育をこなしていく毎日だ。
変わった事と言えば、護衛にベロニカが付く事になった。
ベロニカは頼りになるお姉さんといった感じだ。
引退した筈なのに引っ張り出して申し訳なく思っていると、
「殿下の頼みは断れませんよ。子育ても一段落したので、大丈夫!」
と豪快に笑ってくれた。
私は前の様に下を向いて歩く事を辞めた。
あの時は周りは敵ばかりだと思っていたし、私が人間である限り、誰からも受け入れられないと思っていた。
クリス様も今は、私に寄り添ってくれているし、私にはイヴァンカ様も、リリーも、デイジーもベロニカもトムもバーレク様も居る。
今は出来る事も限られているが、出来ない事を嘆くより、出来る事に全力を注ごうと思えるようになった。
そんな私の癒しの時間、それは孤児院への慰問だ。
孤児院への慰問や寄附、教会の奉仕活動の手伝い等は王太子妃の仕事であるらしい。
私はまだ婚約者でしかないが、慣れるべきだと、孤児院への慰問を始めていた。
前に、貴族の方が種族意識が強いと言われた事が頷ける。
平民は私が人間だからといって、それだけで嫌悪する事はない。
その分、私個人の立ち振舞いをしっかりと見極めているのだと思える。
なので、孤児院にいる子ども達は、純粋に私を受け入れて懐いてくれた。
子どもは好きだ。私は子ども達と一緒に遊ぶこの時間をとても楽しみにしていた。
今日は初めて訪れる孤児院だ。
教会が運営していて、孤児だけではなく、仕事がない人達にも、教会の仕事や、孤児院での仕事を与えているらしい。
私はいつものように、孤児院の院長に挨拶をして、子ども達に紹介して貰った。
「さぁ、皆さん。この方がもうすぐこの国の王太子殿下のお嫁さんになるシビル様ですよ」
と院長が言うと、子ども達は、
「クリスさまのお嫁さん?すごーい」
と言って私を取り囲んだ。
私も、
「皆の事を知りたいから、お名前を教えてね。それから一緒に遊びましょう!」
と言うと、子ども達は自分の名前を我先にと教えてくれた。
私は名前を呼びながら、皆と遊びの輪に入っていく。
絵本を読んだり、鬼ごっこをしたり…一頻り遊ぶと、院長からお茶のお誘いをうけ、院長室へと向かった。
私が席に座ると、紅茶が目の前に置かれたのだが…そこで、
「シビル?シビルなのか?」
と懐かしい声が聞こえて、思わず私は顔を上げた。
「オーランド?」
そこには、元婚約者がくたびれた様子で立っていた。
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。