断罪された悪役令嬢は不眠侯爵と夜な夜なゲームに興じている

初瀬 叶

文字の大きさ
1 / 10

第1話 ただいま断罪中

しおりを挟む
「君との婚約は破棄する!」

目の前の男が私にビシッと指を差し高らかに宣言した。彼のもう片方の腕は水色の髪にピンク色の瞳をウルウルさせた小動物のような可憐な少女をしっかりと抱き締めている。

そこで私は全てを思い出した。ここが生前読んでいたライトノベルの世界であることを。
タイトルは……忘れた。あの頃の私は手当たり次第にラノベを読んでいたし、似たような内容も多かった。それにラノベって元々タイトルがめちゃくちゃ長くて正確に覚えられない。

私はビシッと指された指先を見ながら、この物語のあらすじを思い出すのに必死だった。

この目の前の金髪碧眼のイケメンは私の婚約者であるこの国の王太子殿下だ。名前は、ユリウス·グランツ。これは前世を思い出すまでもなく知っている。一応今まで婚約者として生きてきたのだし。
そして彼が庇うように抱き締めている小動物……もとい女性の名はシャルロッテ。市井で育った平民上がりの子爵令嬢で私の婚約者を横取りしようと画策して私を陥れるのに奔走していた。そして今やそれを成し遂げる直前の場面だ。そう、言うなら『悪役令嬢、断罪中』
ラノベの名場面であることは間違いない。


そしてこの物語の主人公は目の前のシャルロッテではない。指をさされているこの私だ。
私の名はロザリンド·ヴァレンティーヌ。悪役令嬢らしく気は強いが、聡明で思いやりもある……という役回りだ。
しかし、この小動物シャルロッテの虚言により、今、究極に『不味い』状況である。
ちなみに顔は悪役令嬢らしくキツめの美人であることを追加しておこう。

この物語。私が断罪されたのちに、このシャルロッテはユリウスと婚約するが、彼女の裏の顔がバレて、彼女の虚言は捲れ私の冤罪は晴れる。そしてこのユリウスは自分が私を誤解していたことで心を改め、実は聡明で優しい私を溺愛するようになるといういわば『元サヤもの』だ。

この後、一旦身を引いた私が国境沿いの問題の多い田舎町でスローライフを送りながらこの町を救う為に奔走する。そこで皆に慕われ過ごすうちに、王都ではシャルロッテの虚言が次々と暴かれていくのだ。
誤解をしていたユリウスは私に謝罪し、田舎町まで足繁く通い復縁を迫り、ユリウスに心動かされた私は王都に戻り無事ハッピーエンド!だったはずだが……正直めんどくさい。

このイケメン、顔も性格も良いし、この後のもだもだの期間に改心したユリウスの猛攻撃に私の心も絆される。そりゃあもう、読んでる時にはキュンキュンした。特に彼がどれだけ自分が愚かだったかを後悔し、ロザリンドの為に命を張る場面なんて『もうロザリンド許してやってよ』なんて私自身思っていたぐらいだ。しかし、待てよ?よく考えたら王太子殿下と結婚なんて、堅苦しくて仕方ないじゃないか。
常に誰かが側に居て、息つく暇もない。そんな生活、考えただけでも寒気がする。

前世の私は仕事はちゃんと出来たが家ではゴロゴロするのが大好きな干物女(死語かもしれない)だった。王族なんてオンもオフもないじゃないか!絶対に嫌だ!元サヤなんて真っ平御免だ。

だが物語の強制力というものがあるかもしれない。……どうすれば、このイケメンから逃れられるのだろう……。私は今、そればかりを考えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。

まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」 そう言われたので、その通りにしたまでですが何か? 自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。 ☆★ 感想を下さった方ありがとうございますm(__)m とても、嬉しいです。

幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~

銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。 自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。 そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。 テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。 その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!? はたして、物語の結末は――?

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

婚約破棄の日の夜に

夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。 ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。 そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します

佐藤 美奈
恋愛
セフィーナ・グラディウスという貴族の娘が、婚約者であるアルディン・オルステリア伯爵令息との関係に苦悩し、彼の優しさが他の女性に向けられることに心を痛める。 セフィーナは、アルディンが幼馴染のリーシャ・ランスロット男爵令嬢に特別な優しさを注ぐ姿を見て、自らの立場に苦しみながらも、理想的な婚約者を演じ続ける日々を送っていた。 婚約して十年間、心の中で自分を演じ続けてきたが、それももう耐えられなくなっていた。

処理中です...