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第5話 ベルモンド侯爵領へ
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陛下は余程ベルモンド侯爵との結婚を急がせたかったのだろう。一週間で何の用意が出来るというのか。
私は王家からプレゼントされたウェディングドレスと大切なドレスやアクセサリー、それと身の回りの物だけを持ってベルモンド侯爵領に向かう馬車に揺られていた。既に結婚式まではあと一日しかない。
「他の男と結婚するために作ったウェディングドレスって微妙」
私は流れる風景を見ながらそう呟く。
三日前、私は王妃陛下に呼び出され、王宮へと出向いた時のことを思い出していた。
『ロザリンド、来たのね』
『はい。妃陛下には多くのことを学ばせていただいて、本当に感謝しております』
私が深々と頭を下げるのを、妃陛下は制した。
『その言葉はもう手紙で読んだから、結構よ。……私の時間を奪った事実は消えないわ』
私は妃陛下が苦手だった。妃陛下はユリウス殿下を溺愛しているからか、私にかなり厳しかった。
『申し訳── 』
『謝ったって何も変わらないわ。それより……どうしてくれるのよ』
私は妃陛下の不機嫌な理由が分からず困惑した。私のことが嫌いだった妃陛下には、この結果は良かったのではないか?
『それはどういう意味でしょうか?』
『あの低能な小娘に王太子妃教育を施す気持ちにはなれないわ。ユリウスもあんな下品な女の何処を気に入っているのかしら……全て貴女のせいよ』
妃陛下は手に持っていた扇をパチン!と閉じる。妃陛下の言葉遣いがここまで酷い場面を見たことがなかった。
『……それはユリウス殿下に聞いてみませんと。私としては何とも……』
実際、ユリウスは学園でシャルロッテをずっと側に置いていた。それは学園中の皆が知っている事実だ。
婚約者の私を差し置いてシャルロッテを優先するユリウスに呆れている者も多かったが、相手はこの国の王太子殿下。誰も彼に意見することは出来なかった。
しかし……だからと言って私に同情する者も居なかった。何故って? それは私がこの物語の主人公ではあっても悪役令嬢だからだ。
それに主人公とは一旦不遇な時を過ごすものだ。その方がざまぁした時に読者の爽快感が増すって寸法だ。
ちなみに私はざまぁするつもりなど毛頭ない。残りの人生、のんびりと呑気にゴロゴロと過ごしたいだけだ。三食昼寝付きなんて願ったり叶ったりではないか。
家政なんて社交をしない家では、大した苦労はない。お茶会も舞踏会も全てまるっと無視すれば良いのだから。
結局不機嫌な妃陛下から『ウェディングドレスを捨てるのも勿体ないから持っていきなさい』と押し付けられたドレスは大層豪華だった。
そんなことを思い出していたところに御者の声がかかる。
「もうベルモンド侯爵領に入りました。もう少し行けば侯爵邸が見えてくると思います」
私はそう言われて窓の外に視線を向けた。王都を出て三日。もっと辺鄙な場所かと思っていたら、意外と活気のある街並みが目に入る。
「へぇ……意外と栄えているのね」
私の独り言は誰にも聞こえない。専属の侍女さえ連れて来なかった私は自分一人で着替えることが出来るシンプルなワンピースを見下ろした。
「こんな格好だと……不味かったかしら?」
勝手に田舎者だと決めつけて『これぐらいでも別にいいだろう』なんて考えていた自分が急に恥ずかしくなった。
私は王家からプレゼントされたウェディングドレスと大切なドレスやアクセサリー、それと身の回りの物だけを持ってベルモンド侯爵領に向かう馬車に揺られていた。既に結婚式まではあと一日しかない。
「他の男と結婚するために作ったウェディングドレスって微妙」
私は流れる風景を見ながらそう呟く。
三日前、私は王妃陛下に呼び出され、王宮へと出向いた時のことを思い出していた。
『ロザリンド、来たのね』
『はい。妃陛下には多くのことを学ばせていただいて、本当に感謝しております』
私が深々と頭を下げるのを、妃陛下は制した。
『その言葉はもう手紙で読んだから、結構よ。……私の時間を奪った事実は消えないわ』
私は妃陛下が苦手だった。妃陛下はユリウス殿下を溺愛しているからか、私にかなり厳しかった。
『申し訳── 』
『謝ったって何も変わらないわ。それより……どうしてくれるのよ』
私は妃陛下の不機嫌な理由が分からず困惑した。私のことが嫌いだった妃陛下には、この結果は良かったのではないか?
『それはどういう意味でしょうか?』
『あの低能な小娘に王太子妃教育を施す気持ちにはなれないわ。ユリウスもあんな下品な女の何処を気に入っているのかしら……全て貴女のせいよ』
妃陛下は手に持っていた扇をパチン!と閉じる。妃陛下の言葉遣いがここまで酷い場面を見たことがなかった。
『……それはユリウス殿下に聞いてみませんと。私としては何とも……』
実際、ユリウスは学園でシャルロッテをずっと側に置いていた。それは学園中の皆が知っている事実だ。
婚約者の私を差し置いてシャルロッテを優先するユリウスに呆れている者も多かったが、相手はこの国の王太子殿下。誰も彼に意見することは出来なかった。
しかし……だからと言って私に同情する者も居なかった。何故って? それは私がこの物語の主人公ではあっても悪役令嬢だからだ。
それに主人公とは一旦不遇な時を過ごすものだ。その方がざまぁした時に読者の爽快感が増すって寸法だ。
ちなみに私はざまぁするつもりなど毛頭ない。残りの人生、のんびりと呑気にゴロゴロと過ごしたいだけだ。三食昼寝付きなんて願ったり叶ったりではないか。
家政なんて社交をしない家では、大した苦労はない。お茶会も舞踏会も全てまるっと無視すれば良いのだから。
結局不機嫌な妃陛下から『ウェディングドレスを捨てるのも勿体ないから持っていきなさい』と押し付けられたドレスは大層豪華だった。
そんなことを思い出していたところに御者の声がかかる。
「もうベルモンド侯爵領に入りました。もう少し行けば侯爵邸が見えてくると思います」
私はそう言われて窓の外に視線を向けた。王都を出て三日。もっと辺鄙な場所かと思っていたら、意外と活気のある街並みが目に入る。
「へぇ……意外と栄えているのね」
私の独り言は誰にも聞こえない。専属の侍女さえ連れて来なかった私は自分一人で着替えることが出来るシンプルなワンピースを見下ろした。
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