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第9話 結婚式
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朝から湯浴みをし、ウェディングドレスを着る。
モニカの腕は素晴らしく、自分でもうっとりするほど美しい花嫁になったと思う。
「大変お綺麗でございます」
モニカと共にドレスを着せてくれた侍女長のジョアンナも笑顔で褒めてくれた。
褒められるのは素直に嬉しい。
転生して嬉しかったのは、この容姿だ。鏡を見ることが楽しくなる。
「セオドア様は教会でお待ちでございます」
ジョアンナの言葉に私は頷いた。正直、まだあの侯爵と結婚するという実感が湧かない。
政略結婚なんて前世を思い出した今、違和感しかない。異世界に来たみたいだ……いや、ここは異世界だった。
恋愛して結婚して……それが普通ではない世界に転生してしまったのだなぁ……なんて私は教会に向かう馬車の中でぼんやりと考えていた。
実感は湧かなくても今日から私の夫はあの侯爵だ。そして私はユリウスとの復縁という結末から逃げ出す事ができるというわけだ。
物語の強制力というのがどれほど強力なものなのかは分からないが、まさか人妻をどうこうしようとはユリウスも思わないだろう。……義理の叔母になるのだし。
それと同時に私は昨日の侯爵の言葉を思い出していた。……白い結婚でいいのかしら?まぁ、私はどちらでも構わないが。いや、待てよ?処女のままだと万が一でもユリウスルートの可能性が残されたりしないだろうか?
ほら……王家に嫁ぐには純血じゃなきゃならないとかありそうだし。
「初夜だけは済ませてもらうか……」
そんな邪なことを考えているうちに、教会へ着いたと御者に告げられる。思わず私は『神様、いやらしいことを考えていてすみません』と心の中で謝罪した。
結論から言うと、結婚式は淡々とそして厳かに執り行われた。
招待客は無し。私と侯爵、そして司祭のみ。
誓いの言葉を述べてお互いが『誠実に尽くします』と誓いを立てた。……が、あまりに淡々としすぎていて、まるで他人事のように思える。
目の前の男に何の感情もないのに、今日から夫婦なんて、本当に不思議な話だ。── いや、不思議なのは小説の世界に転生したことだ。不思議というより、ホラーに近い。まずそこからだろと自分にツッコミを入れた。
誓いのキスもなく、私達は神に認められ夫婦になった。
「一緒に馬車に乗るのですか?」
教会からの帰り。私と同じ馬車に乗り込む侯爵に私は驚いたように尋ねた。
「当たり前だ。一応夫婦なんだから」
それだけ言うと侯爵は向かいに座る。
侯爵が御者に合図を送ると、馬車は静かに動き出した。
……無言。馬の足音と馬車の車輪の音だけが響く。私は何となく居た堪れなくなり、仕方なく口を開いた。
「素敵な領地ですね。賑わいもあり自然も多くて」
私がそう言うと侯爵は少しだけ口角を上げた。あら……嬉しそう。
「領民がこの領地を育ててるんだ。私はその手助けをしているだけだ」
そう言いながら侯爵は誇らしげだ。……可愛らしいところもあるのだと私はちょっとだけ驚いた。── 相変わらず隈は酷いが。
モニカの腕は素晴らしく、自分でもうっとりするほど美しい花嫁になったと思う。
「大変お綺麗でございます」
モニカと共にドレスを着せてくれた侍女長のジョアンナも笑顔で褒めてくれた。
褒められるのは素直に嬉しい。
転生して嬉しかったのは、この容姿だ。鏡を見ることが楽しくなる。
「セオドア様は教会でお待ちでございます」
ジョアンナの言葉に私は頷いた。正直、まだあの侯爵と結婚するという実感が湧かない。
政略結婚なんて前世を思い出した今、違和感しかない。異世界に来たみたいだ……いや、ここは異世界だった。
恋愛して結婚して……それが普通ではない世界に転生してしまったのだなぁ……なんて私は教会に向かう馬車の中でぼんやりと考えていた。
実感は湧かなくても今日から私の夫はあの侯爵だ。そして私はユリウスとの復縁という結末から逃げ出す事ができるというわけだ。
物語の強制力というのがどれほど強力なものなのかは分からないが、まさか人妻をどうこうしようとはユリウスも思わないだろう。……義理の叔母になるのだし。
それと同時に私は昨日の侯爵の言葉を思い出していた。……白い結婚でいいのかしら?まぁ、私はどちらでも構わないが。いや、待てよ?処女のままだと万が一でもユリウスルートの可能性が残されたりしないだろうか?
ほら……王家に嫁ぐには純血じゃなきゃならないとかありそうだし。
「初夜だけは済ませてもらうか……」
そんな邪なことを考えているうちに、教会へ着いたと御者に告げられる。思わず私は『神様、いやらしいことを考えていてすみません』と心の中で謝罪した。
結論から言うと、結婚式は淡々とそして厳かに執り行われた。
招待客は無し。私と侯爵、そして司祭のみ。
誓いの言葉を述べてお互いが『誠実に尽くします』と誓いを立てた。……が、あまりに淡々としすぎていて、まるで他人事のように思える。
目の前の男に何の感情もないのに、今日から夫婦なんて、本当に不思議な話だ。── いや、不思議なのは小説の世界に転生したことだ。不思議というより、ホラーに近い。まずそこからだろと自分にツッコミを入れた。
誓いのキスもなく、私達は神に認められ夫婦になった。
「一緒に馬車に乗るのですか?」
教会からの帰り。私と同じ馬車に乗り込む侯爵に私は驚いたように尋ねた。
「当たり前だ。一応夫婦なんだから」
それだけ言うと侯爵は向かいに座る。
侯爵が御者に合図を送ると、馬車は静かに動き出した。
……無言。馬の足音と馬車の車輪の音だけが響く。私は何となく居た堪れなくなり、仕方なく口を開いた。
「素敵な領地ですね。賑わいもあり自然も多くて」
私がそう言うと侯爵は少しだけ口角を上げた。あら……嬉しそう。
「領民がこの領地を育ててるんだ。私はその手助けをしているだけだ」
そう言いながら侯爵は誇らしげだ。……可愛らしいところもあるのだと私はちょっとだけ驚いた。── 相変わらず隈は酷いが。
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