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テイラー侯爵
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レオ様は一戦交えた後、ベッドの中でここ最近のお仕事についてお話してくれた。
「実は明日には公表されるが、側妃であるエミリー様のお父上、テイラー侯爵が逮捕された」
「え?どういう事ですの?」
「前々から、王太子にはフィリップ殿下を推す声が多かった。
フィリップ殿下のお妃様であるロレッタ様は筆頭公爵家のご息女だし、フィリップ殿下の人気も高い。
それに異を唱えていたのがテイラー侯爵を始めとする、第2王子派の貴族達だ。
レベッカは、正妃であるアメリア妃が同盟国であるエリアル帝国の第1王女である事は知ってるよね?」
「はい。同盟を結んだ際に輿入れされたと聞いております」
「そうだ。帝国との関係をより強固にする為だが、アメリア妃にはなかなか御子が出来なかった。
それで、側妃として、エミリー・テイラー侯爵令嬢を娶られた。
元々エミリー様は陛下の婚約者候補の筆頭だったが、同盟と同時にアメリア様の輿入れが決まった為、陛下は婚約者不在の中、直ぐアメリア様とご結婚する事になったんだ。
帝国は強力な軍事力を持っているからね。隣国で、きな臭い話が出ていた為に、事を急ぐ必要があったんだ。
例え反対意見があったとしても、言わば決定事項だったってわけ」
「では、テイラー侯爵には不満だったと?」
「ああ、もちろんそうだろうが、その時は受け入れるしかなかった。
議会も満場一致の採決だったと聞いている。
だからテイラー侯爵も1度は諦めたんだ」
「1度は?」
「ああ、でもアメリア妃に御子が出来ないとみるやいなや、直ぐ様側妃に自分の娘であるエミリー様をねじ込んだ。
元々テイラー侯爵は野心家だからね、次期国王にテイラー家の血筋が入り、王家と繋がりを強固にする事を願っていた。
それにエミリー様もずっと婚約者候補として陛下を慕っていたと言うし」
「では、側妃になるのはエミリー様にとっても望みであったのですね?」
「まぁ、本来なら正妃候補だったんだから、そこに不満はあっただろうがね」
「でも、エミリー様が嫁がれて直ぐにアメリア様が懐妊されたのですよね?」
「ああ、そうだ。陛下とアメリア様も政略結婚ではあったが、関係は良好だったしね。しかも王子が産まれた。
これで、エミリー様の立場はあまり良くない物になってしまった。
でも、アメリア妃はエミリー様を殊更気にかけていらっしゃった。
きちんと側妃として、尊重するよう、陛下にもおっしゃっていたらしい。
なので、陛下も務めを果たされて、2年後にはローガン殿下が産まれた」
「そこら辺の事柄については、詳しく…ではありませんが存知ておりました」
「まぁ、そこからはやはり王太子に誰を推すか…そういう話になってくる。
しかもフィリップ殿下には幼い頃よりロレッタ様との婚約が決まっていたしね。
筆頭公爵のウォーカー公爵がフィリップ殿下派になると、それに続く貴族も多かった」
「ならば、フィリップ殿下で決まりそうなものですけど…」
「そうだ。でも、フィリップ殿下が国王になれば、エリアル帝国の干渉が大きくなるとの懸念を示したのがテイラー侯爵だ。
確かに、エリアル帝国としては、同盟というより、支配に近い関係を築きたかったという思惑もあり、アメリア様の輿入れを決めた…という話も当時はあったからね、
アメリア様が王子を産んで、その子が国王になればエリアル帝国としては扱いやすい…そう思われてもおかしくはない」
「でも…それを許したのは、当時の議会ですよね?直ぐにアメリア妃が御子を産めば、そもそも側妃の話はありませんでしたし」
「そうだな。だからややこしくなったしまったんだ。なまじ側妃を娶って、しかも王子が産まれてしまったばっかりに、後継者を争わなければならない事になってしまった。
でも、ここで重要なのが、ローガン殿下には王位に対する執着が全くないと言う事だ」
「え?ではローガン殿下は…」
「何かあった時の為にスペアは必要だが、継承権はそのままで、臣下降格する予定でいた。
しかし、そうはさせたくないテイラー侯爵は自分の派閥の家から婚約者を決めさせようとしたんだ。
それに危機感を覚えた陛下は、国内外のバランスを取る為という名目でローガン殿下には他国の姫君を宛がう事にした。
陛下として、兄弟を無駄に競わせたくはなかったんだろう。
なんてったってローガン殿下にその気はない。ローガン殿下は剣の腕が確かだし、今は第1騎士団の副団長も勤めている。将来は国の軍事を司る方が適任だろう」
「…それで丸く収まりそうですけどね」
「我々もそう思っていたよ。しかしテイラー侯爵は諦めきれなかったんだろう…フィリップ殿下が王太子に近々決定するという情報をつかんで、焦ったんだ。
そして、フィリップ殿下の命を狙った」
「え?!それは!」
「その事件が起きたのが、俺の休みの間ってわけ。もちろん、優秀な護衛がついていたから、殿下に問題はなかったよ。しかし、なかなかテイラー侯爵との繋がりが見えてこなかった。で、あの夜会で、フィリップ殿下の王太子即位を発表してその後のテイラー侯爵の動きを見張る事になったんだ。
証拠集めに時間がかかってしまったが、ようやく逮捕が出来るだけの物が集まったからね」
「では、レオ様が忙しかったのも…」
「ああ、この為だ。でもようやくケリがついたから、明日からは定時に帰れるようになるはずだ」
「エミリー様はどうなるのですか?」
「……エミリー妃は今回の件には関わってなかったが…離宮への幽閉は決定だろうな…」
「それは…」
「エミリー妃は自ら処分を受けると仰った。自分は処刑されても良いから2人の子には何もしないで欲しいと…
もちろん、陛下も王太子殿下もローガン殿下やシャーロット王女を処分するつもりはなかったよ。
でもエミリー妃は自分の父親のした事だから、と」
「それで、幽閉に…。もちろんテイラー侯爵は…」
「テイラー侯爵の処刑は免れない。
王族の命を狙うという事はそういう事だ。だが、焦ったにしろ、フィリップ殿下を暗殺しようとするなど…馬鹿な事を」
私はその話を聞いて少しだけ違和感を持った。
テイラー侯爵の人となりを知らない私だが、そんな危険な橋を渡るような人物には思えない。
その違和感の正体がなんなのか、その時の私にはまだわからなかった。
「実は明日には公表されるが、側妃であるエミリー様のお父上、テイラー侯爵が逮捕された」
「え?どういう事ですの?」
「前々から、王太子にはフィリップ殿下を推す声が多かった。
フィリップ殿下のお妃様であるロレッタ様は筆頭公爵家のご息女だし、フィリップ殿下の人気も高い。
それに異を唱えていたのがテイラー侯爵を始めとする、第2王子派の貴族達だ。
レベッカは、正妃であるアメリア妃が同盟国であるエリアル帝国の第1王女である事は知ってるよね?」
「はい。同盟を結んだ際に輿入れされたと聞いております」
「そうだ。帝国との関係をより強固にする為だが、アメリア妃にはなかなか御子が出来なかった。
それで、側妃として、エミリー・テイラー侯爵令嬢を娶られた。
元々エミリー様は陛下の婚約者候補の筆頭だったが、同盟と同時にアメリア様の輿入れが決まった為、陛下は婚約者不在の中、直ぐアメリア様とご結婚する事になったんだ。
帝国は強力な軍事力を持っているからね。隣国で、きな臭い話が出ていた為に、事を急ぐ必要があったんだ。
例え反対意見があったとしても、言わば決定事項だったってわけ」
「では、テイラー侯爵には不満だったと?」
「ああ、もちろんそうだろうが、その時は受け入れるしかなかった。
議会も満場一致の採決だったと聞いている。
だからテイラー侯爵も1度は諦めたんだ」
「1度は?」
「ああ、でもアメリア妃に御子が出来ないとみるやいなや、直ぐ様側妃に自分の娘であるエミリー様をねじ込んだ。
元々テイラー侯爵は野心家だからね、次期国王にテイラー家の血筋が入り、王家と繋がりを強固にする事を願っていた。
それにエミリー様もずっと婚約者候補として陛下を慕っていたと言うし」
「では、側妃になるのはエミリー様にとっても望みであったのですね?」
「まぁ、本来なら正妃候補だったんだから、そこに不満はあっただろうがね」
「でも、エミリー様が嫁がれて直ぐにアメリア様が懐妊されたのですよね?」
「ああ、そうだ。陛下とアメリア様も政略結婚ではあったが、関係は良好だったしね。しかも王子が産まれた。
これで、エミリー様の立場はあまり良くない物になってしまった。
でも、アメリア妃はエミリー様を殊更気にかけていらっしゃった。
きちんと側妃として、尊重するよう、陛下にもおっしゃっていたらしい。
なので、陛下も務めを果たされて、2年後にはローガン殿下が産まれた」
「そこら辺の事柄については、詳しく…ではありませんが存知ておりました」
「まぁ、そこからはやはり王太子に誰を推すか…そういう話になってくる。
しかもフィリップ殿下には幼い頃よりロレッタ様との婚約が決まっていたしね。
筆頭公爵のウォーカー公爵がフィリップ殿下派になると、それに続く貴族も多かった」
「ならば、フィリップ殿下で決まりそうなものですけど…」
「そうだ。でも、フィリップ殿下が国王になれば、エリアル帝国の干渉が大きくなるとの懸念を示したのがテイラー侯爵だ。
確かに、エリアル帝国としては、同盟というより、支配に近い関係を築きたかったという思惑もあり、アメリア様の輿入れを決めた…という話も当時はあったからね、
アメリア様が王子を産んで、その子が国王になればエリアル帝国としては扱いやすい…そう思われてもおかしくはない」
「でも…それを許したのは、当時の議会ですよね?直ぐにアメリア妃が御子を産めば、そもそも側妃の話はありませんでしたし」
「そうだな。だからややこしくなったしまったんだ。なまじ側妃を娶って、しかも王子が産まれてしまったばっかりに、後継者を争わなければならない事になってしまった。
でも、ここで重要なのが、ローガン殿下には王位に対する執着が全くないと言う事だ」
「え?ではローガン殿下は…」
「何かあった時の為にスペアは必要だが、継承権はそのままで、臣下降格する予定でいた。
しかし、そうはさせたくないテイラー侯爵は自分の派閥の家から婚約者を決めさせようとしたんだ。
それに危機感を覚えた陛下は、国内外のバランスを取る為という名目でローガン殿下には他国の姫君を宛がう事にした。
陛下として、兄弟を無駄に競わせたくはなかったんだろう。
なんてったってローガン殿下にその気はない。ローガン殿下は剣の腕が確かだし、今は第1騎士団の副団長も勤めている。将来は国の軍事を司る方が適任だろう」
「…それで丸く収まりそうですけどね」
「我々もそう思っていたよ。しかしテイラー侯爵は諦めきれなかったんだろう…フィリップ殿下が王太子に近々決定するという情報をつかんで、焦ったんだ。
そして、フィリップ殿下の命を狙った」
「え?!それは!」
「その事件が起きたのが、俺の休みの間ってわけ。もちろん、優秀な護衛がついていたから、殿下に問題はなかったよ。しかし、なかなかテイラー侯爵との繋がりが見えてこなかった。で、あの夜会で、フィリップ殿下の王太子即位を発表してその後のテイラー侯爵の動きを見張る事になったんだ。
証拠集めに時間がかかってしまったが、ようやく逮捕が出来るだけの物が集まったからね」
「では、レオ様が忙しかったのも…」
「ああ、この為だ。でもようやくケリがついたから、明日からは定時に帰れるようになるはずだ」
「エミリー様はどうなるのですか?」
「……エミリー妃は今回の件には関わってなかったが…離宮への幽閉は決定だろうな…」
「それは…」
「エミリー妃は自ら処分を受けると仰った。自分は処刑されても良いから2人の子には何もしないで欲しいと…
もちろん、陛下も王太子殿下もローガン殿下やシャーロット王女を処分するつもりはなかったよ。
でもエミリー妃は自分の父親のした事だから、と」
「それで、幽閉に…。もちろんテイラー侯爵は…」
「テイラー侯爵の処刑は免れない。
王族の命を狙うという事はそういう事だ。だが、焦ったにしろ、フィリップ殿下を暗殺しようとするなど…馬鹿な事を」
私はその話を聞いて少しだけ違和感を持った。
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