とりあえず結婚してみますか?

初瀬 叶

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殺害 sideレオ

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「何?テイラー侯爵が?」

それは、俺がテイラー侯爵の裏を探る為に生かされていると聞かされた3日後の事だった。

テイラー侯爵を収容している地下牢の見張りが真っ青な顔で、王太子殿下の執務室に飛び込んで来た。

「はい!今朝見張りの交代に行きましたら、夜間の見張りの兵士が殺されており、牢の中の侯爵が…亡くなっていて…」

「……口を塞がれたか…死因は?」
殿下が報告に来た兵士に問う。

「今、医師を派遣し調べさせておりますが…目立った外傷がない為毒殺ではないかと…」

「引き続き、死因の特定を急いでくれ」

報告に来た兵士を下がらせ、殿下は俺に問う。

「どう思う?」

「内通者の特定を急ぐべきです。これではこちらの手の内がバレバレです」

「…そうだな。テイラー侯爵の事を知ってる者はある程度限られるが…影を使うか」

殿下はご自分の影に内通者の特定を命じると溜め息をついた。

「まいったな。私の側に裏切り者がいるようだ。情けない」

「仕方ありません。今後はもっと少数で動きませんと」

「使える者が限られるな」

そう話していると、アレックス殿が許可を得て入室してきた。

「テイラー侯爵と、その派閥の密輸相手がわかりました」

「そうか…で、相手は?」

「アスガルド王国のウガロ伯爵ですね。
この家は薬師をたくさん抱え込んでおり、アスガルド王国での地位を確立してきた家です」

「…そこから不法薬物を密輸しているのだな?」

「そのようですね。…ただこれだけではあの不自然な金の流れの全ては説明出来ません。
まだ何かありそうです。引き続きの調査は必要かと」

「その不法薬物の中にはどのような薬が?」

俺がアレックス殿に問いかけると、

「…媚薬、麻薬、毒薬…その辺りでしょうか?今の所、証拠を掴めているのは」

「まさか不法薬物の売買にテイラー侯爵が手を染めていたとはな」
殿下が呟く。俺は気になって、

「エミリー妃は、このことをご存知だったのでしょうか?」

「さあな。今はまだこの事は公表できないから、確かめようがないが、もしご存知であったなら…エミリー妃の処罰も変わってくるかもしれない。それより…テイラー侯爵が死んだ今、他の同派閥の貴族の監視も強化する必要があるな」

「まさか、関係貴族の全員を口封じなんてこと…ありませんよね?」
そう、俺と殿下が話していると、

「相手がウガロ伯爵だけであれば、そこまでするとは思えませんが…そのウガロ伯爵を裏で操っている人物がもっと強大であれば…」
とアレックス殿が口にする。

「アレックス…まだ想像だ。証拠がない。
で、テイラー侯爵がこちら側から輸出している物は?」

「今のところ、薬物に使用する原材料ですかね?これは違法ではありませんので堂々と輸出してますよ。これは問題には出来ません」

「そうだろうな。……輸出入に使用しているのは、陸路か?それとも海路か?」

「おそらく海路でしょう。特に違法薬物については陸路では、国境警備の関所を通るのが難しい。相手がウガロ伯爵である事を考えれば海路なら…」

「スミス領のルーベンか…」
そう俺が呟く。

「スミス伯爵はテイラー侯爵の分家だったな…繋がったな」
殿下も同意する。

「積み荷の検分はスミス伯爵家の者と王宮から派遣された者とで検品しているはずだが…」
そう俺が疑問を口にすると、アレックス殿は

「買収されていると見るのが正解だな」
と冷たく言い放った。

「…これを機に、膿を出しきる必要があるな」
殿下がキッパリと言う。


俺達3人は、重くなった空気の中、これからするべき事を考えていた。

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