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サミュエルの結婚
しおりを挟む今回の事件は一応の終焉を迎えた。
きっと細かな問題はまだ残っているのだろうが…。
それでも、やっと、平穏な生活が戻ってきた。
レオ様も怪我をする前と変わらぬ剣捌きを見せるようになると、早速殿下の専属護衛に戻って行った。
私も悪阻の時期を乗り越え、逆に食欲が湧きすぎて困っている。
何を食べても美味しい。
お医者様からは適度に体を動かした方が良いと言われているのに、レオ様を始め邸の皆が過保護過ぎて、私が少しでも無理をすると、ベッドへ直行させられる為、なかなか思うように体を動かす事も出来ないでいた。
アレックスお兄様はとことん拗ねている。
週に1回、私がコッカスのタウンハウスに泊まりに行く約束だったが、妊娠した為にそれを反故にされたからだ。
安定期には入っているが、馬車にわざわざ週に1回揺られる事はないとレオ様が譲らなかった。
アレックスお兄様は約束違反だと、駄々を捏ねたが、妊婦の私に無理をさせるのはお兄様も不本意だったようで、週に1回、お兄様が、ランバードの邸に来て一緒に晩餐を取るという折衷案で妥協した。
しかし、その晩餐が必ずレオ様が夜間の護衛が入っている時なのは、絶対に偶然ではないだろう。
お兄様はレオ様の予定を全て把握しているので、レオ様が例え悔しがっても、お兄様の方が一枚上手だった。
今日もレオ様不在時を狙い済ましたアレックスお兄様が、私と晩餐を共にしていると、
「そういえば…サミュエルが結婚するらしいぞ?」
「え?サミュエルお兄様が?どなたと?」
私は寝耳に水でビックリだ。
「一緒に医学を学んでいた女性でな。なんと、あのランドン侯爵の一人娘だそうだ」
「え?じゃあ…サミュエルお兄様は…」
「婿にいく事になる」
「ランドン侯爵様と言えば、宮廷医師の長としてご活躍されていますわね?領地は?」
「ランドン侯爵は領地を持たない宮廷貴族だ。
だから、サミュエルも宮廷医師として働くようになるようだ」
まさか、サミュエルお兄様が侯爵になるなんて…。それに宮廷医師…。
「お兄様はその方…ランドン侯爵様の御息女であれば…アニタ様よね?
そのアニタ様とは恋仲だったのかしら?」
「サミュエルは同じ医師を目指す者同士として、切磋琢磨する仲間だと思っていたようだ。
それに、ランドン侯爵にも憧れていたみたいだしな。
しかし、アニタ嬢の方はサミュエルにただならぬ想いを持っていたみたいだぞ。
サミュエルは色恋には鈍感だから、本人は気付いていなかったようだが、周りはみんなアニタ嬢の気持ちに気付いていたらしい」
サミュエルお兄様らしいといえば、お兄様らしい。
でも、サミュエルお兄様もアレックスお兄様には鈍感なんて言われたくないだろう。
「サミュエルお兄様が幸せになるのなら、私は大賛成。
それにお兄様と結婚する人は幸せだと思うもの。お兄様はとてもお優しいし、頭も良いし、顔も良い。非の打ち所がないわ」
「ベッキー。それは妹フィルターを通して見たサミュエルの姿だ。
あいつはそこまで完璧ではないよ。
まぁ、それでもきっとアニタ嬢とは良い夫婦になってくれるだろう」
「お父様とお母様には?」
「手紙は書いたと言っていた。
来週のお前の結婚式に2人がこっちに来るだろう?その時に紹介すると言ってたな」
「そうなのね。じゃあ、アニタ様にも招待状を用意するわ。私も会えるのが楽しみ!」
そう、私の結婚式はもう来週に迫っていた。
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