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サプライズ
しおりを挟む私とレオ様の結婚式の日。
その日はとても晴れて気持ちの良い風が吹いていた。
「良いお天気に恵まれて、良かったですね!」
私の準備をしているアンナは上機嫌だ。
「本当に。結婚式の後はガーデンパーティーだから、お天気が悪くなったらどうしようかと不安だったもの」
私はお義母様が用意してくれたドレスに袖を通す。
少し目立つようになったお腹を締め付けないよう、胸の下に切り替えがついている、所謂エンパイアラインのドレスだ。
胸元には花の飾りがたくさんついており、大きなバックリボンが後ろ姿を華やかに見せてくれる。
とっても可愛いドレスだ。
だがこのドレス…
「レベッカ……とても綺麗だ。
ああ、本当に言葉にならないよ……でも……肌を露出し過ぎじゃないかな?
これじゃあ、レベッカを誰にも見せられない」
そうこのドレス、袖がなく肩も丸出しなのだ。
可愛いらしいデザインなので全くいやらしさはないのだが、レオ様は不満なようだ。
「レオナルド…貴方私が用意したドレスに何か文句でもあるの?
まぁ…レベッカ、本当に綺麗よ。とっても良く似合ってるわ。レオナルドの言う事なんて、無視して良いから」
お義母様はレオ様に厳しい。
「さぁさぁ準備が整いましたよ。皆さん教会でお待ちですからね」
とフェルナンデスが控え室の私達に声をかけた。
「じゃあ、レベッカ。俺は中で…」
そう言い掛けたレオ様の目が控え室の開かれた扉の向こうに縫い付けられた。
(間に合ったのね…良かった…)
私は振り返らずともそこにいる人物が誰か分かっていた。
お義母様もフェルナンデスも固まっている。
「兄さん…」
「ジョシュア…」
「ジョシュア様…お帰りなさいませ」
レオ様とお義母様はまだ理解が追い付いてないようだ。
「ただいま。…レオナルド、レベッカさん。結婚おめでとう」
そうジョシュア様が微笑むと、
お義母様は、
「ジョシュア。ジョシュアなのね…」
と涙を流しジョシュア様に抱きついた。
レオ様も目が赤い。
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「母上、私の我が儘で本当に申し訳ない事をしました。
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ただ、謝意だけでも受け取っていただけると…」
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廃嫡なんて、そんな事しか出来なかった私達を、ジョシュア、貴方の方が責めても良いの」
「母上。ソフィアと結婚をしなくて済んだ事、それが私の1番の望みだった。
その望みを叶えてもらって感謝こそすれ、責めるなんて。
廃嫡も自ら望んだ事です。後悔はしていません。
さぁ、今日はめでたい日です。涙は似合わない」
そうジョシュア様がお義母様に言うと、お義母様もやっと顔を上げ、涙を拭った。
「兄さん。今日は…」
レオ様が言うと、
「レベッカさん。招待ありがとう。もうこの国の土を踏むことはないと思っていたが…思いきって来て良かった」
「いえ…。間に合って良かったですわ。
申し遅れました。はじめまして、レベッカ・ランバードです。
これからよろしくお願いいたします」
私は心からの笑顔で挨拶をした。
「レベッカ…君が兄さんを?」
「ええ。ソフィア様はもうジョシュア様を苦しめる事はありませんでしょう?
なら、この国へ帰って来る事も可能なのではないかと思ったのです。
せっかくの結婚式。ジョシュア様にもお祝いしていただきたくて。
ただ…帰って来られるかはジョシュア様次第でしたので、今まで黙っておりました。
変な期待を持たせては…と思いまして。
でもサプライズ成功ですわね?」
私が微笑みながらレオ様に答えると、
「ありがとう…本当にありがとう。
レベッカは最高の妻だ。
これ以上レベッカの事好きにさせてどうするの?好きすぎて困っちゃうよ」
泣き笑いのような顔でレオ様が私を抱きしめた。
そんな感動的な空気を壊したのは、私の側に居たアンナだ。
「レオナルド様、花嫁をそんな抱きしめないで下さい!せっかくのお衣装が崩れてしまいます!」
「あ、ああそうか、ごめんアンナ』
そういってレオ様は腕をパッと離した。
そのタイミングで、フェルナンデスが、
「さぁ。皆さん待ちくたびれてしまいますよ!行きましょう」
と声をかけてくれた。
私達はそれぞれの場所へ歩き出す。
その後ろでジョシュア様とフェルナンデスが固く握手をしている姿が私の視界にチラリと見えた。
フェルナンデスも嬉しそうで…私はその姿に少しだけ涙が出そうになった。
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