理想のオトコ、飼ってます。

初瀬 叶

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2日目

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翌日、私が起きてダイニングへ行くとすでに千秋くんがキッチンに立っていた。

「おはよう」

「あ、奏さんおはよう!もうすぐ朝ごはん出来るよ。座ってて。」
そう千秋くんは言うと、私の椅子の前に、手際よく朝食を用意していく。

今日のメニューは、ご飯と味噌汁。納豆と焼き鮭だ。

「温かいうちに食べて~」

「千秋くんは?」

「俺もすぐ座るよ」
そう言って自分の分のご飯をよそう。

「いただきます」
手を合わせて、箸をとる。

私は朝からきちんと食べる派だ。そうじゃないと頭が働かない。

「美味しい!」

「そう?良かった~」
千秋くんも自分の分を食べながらニコニコ笑う。

なんか、すでに馴染んじゃってる感じがする。本当に不思議な子だ。

ご飯を終えて、仕事に行く準備をする。

「あ、奏さん!お昼、お弁当作ったんだ。良かったら持って行って!」

いつもは病院の近くのコンビニで買うか、定食屋に行って食べるかだったので、私はびっくりする。

「え?お弁当まで作ってくれたの?」

「うん。あ、お弁当箱探すのに、色々な戸棚開けちゃった。ごめんね。」
そんな事は些細な事だ。

「全然いいよ~。ありがとうお弁当。助かる!」

「本当?良かった~。昨日の残りとかも入れてるから、簡単なやつだけど。これぐらいなら、毎日作るよ。」

本当に至れり尽くせり。

「じゃあ、私は仕事に行くね。鍵、これ使って」
と私は千秋くんに合鍵を渡す。

なんで、こんなに彼を信用しちゃってるんだろ?
どうしても彼に警戒心がわかない。

「ありがとう。俺ももう少ししたら出かけるね。奏さん、今日は何時に帰る?」

「多分、18時半ぐらいかな?あ、それとお金、少しは持ってないとダメでしょ。」
と言って財布から一万円を渡す。

「ありがとう。絶対仕事始めたらお金返すから。」

「フフッ。急がなくていいよ。良い仕事見付かるといいね。」
と言って私は仕事へ向かう。千秋くんは玄関まで見送りに来てくれた。

急に同居人が出来たからといって、私のやる事は変わらない。
とにかく、仕事!仕事!

私の職場は個人病院だ。
レントゲン技術は私の他にもう1人、中年の男性が居る。
朝の挨拶と軽くミーティングをして仕事開始だ。

昼になり、食堂へ千秋くん作のお弁当を持って行く。

「奏~こっち席空いてるよ~」

窓際の席で、受付の真奈美ちゃんが手招きする。
石田 真奈美ちゃんは私と同じ歳で、仕事を始めてからの友人だ。
病院で1番親しくしてる。

「お疲れ~。やっぱり月曜は忙しいね。」
といいながら私は、真奈美ちゃんの前に座る。

「え、奏、今日お弁当?珍しいじゃん。」と真奈美ちゃんが目を丸くする。

「まぁ、ちょっとした心境の変化。」

「え、なに~?女子力アピール?」
といいながら、真奈美ちゃんはコンビニで買ってきたサンドイッチを頬張る。

「そんなんじゃないよ。アピールしたい人もいないし。」
といって笑う。
ちなみに女子力が高いのは私じゃない千秋くんだ。

「そういえば、知ってる?長野さん、別居してるって!」
少しトーンを抑えた小声で真奈美ちゃんが私に言う。

「嘘!?」
私はびっくりしながらも、小声で答えた。

「本当らしいよ。小杉さんが言ってたもん。」
小杉さんとは、うちの薬剤師だ。
長野 伊織さん。製薬会社の営業マン。
そして私が3年前付き合ってた不倫野郎。

「私、狙っちゃおうかな~」
と真奈美ちゃんが言う。
長野さんは、物腰が柔らかく、顔立ちも良い。
受付の人達にも人気がある。

私は真奈美ちゃんにも、長野さんはと付き合った事は言ってなかった。

病院に出入りしてる人だから、職場恋愛とは少し違うけど、やっぱり言いにくい。
なので、私が不倫していた事を知ってる人は職場にはいない。
逆に私が付き合ってる事を言っていたら、既婚者だって事にもっと早く気づけただろうけど。

「やめなよ~。まだ離婚って決まったわけじゃないんでしょ?」

「まぁ、確かにね。今だと不倫になっちゃう」
私は、思わず心が傷んだ。

「でもなんで別居?」
つい私は理由を聞いてしまっていた。知った所で仕方ないのに。

「そこまでは、知らないなぁ。でも、長野さんモテそうだし、色々あるんじゃない?」

「浮気がバレたとか?」
もう3年も前に別れたのだ、私が原因とは思えないが、気になった。

「さぁ?小杉さんが聞いたのは、長野さんと同じ製薬会社の人かららしいよ。小杉さんなら、理由知ってるかもだけど…ってか奏も長野さんに興味あったんだ。」
と真奈美ちゃんは笑う
「奏って、顔可愛いのに、男っ気ないから、あんまそういうのに興味ないのかと思ってた。」

「!別に男に興味がないわけじゃないけど、あんまりいい男と付き合ってこなかったら、今は恋愛から距離を置いてるだけ。といっても、長野さんに興味があるわけじゃないから。」
薮蛇になりそうな話題だ。
もうこれ以上は深堀りしない方が良いだろう。

「まぁ、あんまり人様の家庭に首突っ込まない方がいいよね。さて、ご飯たべよ」
と私はこの話を終わらせて、お弁当を開ける。
そこには、卵焼きとウィンナー、昨日の残りの唐揚げが入っていた。

「凄ーい。朝から作ったの?」
真奈美ちゃんが声を上げる。

「唐揚げは昨日の残りよ。」
と言うと、

「独り暮らしで唐揚げ作るのダルくない?揚げ物面倒くさいよね。お母さん亡くなってから、そんな奏見たことなかったよ。」

確かに…母が亡くなってから、自分1人の食事は面倒くさいメニューは避けてたかも。

「まぁ、たまにはね。」

「ふ~ん。私も見習わなきゃなぁ」
真奈美ちゃんも、独り暮らしだ。彼氏も今はいないらしい。
私は元カレの話に衝撃を受けながらも、千秋くんのお弁当を堪能した。
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