〈If...〉婚約解消された私はお飾り王妃になりました。でも推しに癒されているので大丈夫です!

初瀬 叶

文字の大きさ
3 / 38

第3話

しおりを挟む
今日は、何故か父であるオーヴェル侯爵から面会の申請が来ていた。

珍しい…いや、仕事以外で話すのなんて、初めてではないだろうか?

わざわざ面会の時間を取るなんて…嫌な予感しかないのだけど…。




「妃陛下…お時間ありがとうございます」
と定型の挨拶の後に席に着いたオーヴェル侯爵に私は、

「要件を。あまり時間はないの」
と無表情で告げる。…顔は親子にしか見えないのに、態度は余所余所しい。

そんな私に、父も表情を変える事なく、

「ジュリエッタの事だ」
と端的に告げる。

「ジュリエッタの婚約について?」
と私が訊くと、

「いや…アズナブル侯爵の息子を知ってるか?」
と訊ねられた。そういえば、少し前にジュリエッタの口からその名を聞いたばかりだ。

「ニール殿ね。それが?」
と訊けば、

「その男と、懇意になっているようだ…。あの家はうちを敵視してる。何か裏があるのではないかと思って、調べてみたんだ」
と父は私に書類を渡す。

私はそれに目を通すと、

「これは…。ニール殿の婚約者は確かミラス王国の侯爵令嬢ではなかったかしら?どうするつもりなの?」
書類に書いてある事が衝撃で、思わず父へ訊いてしまう。

「さぁ…。そこに書いてある通り、向こうはまだ事実を知らないようだが、バレたら婚約破棄は免れないだろう。このまま相手の女を処分…なんて事になったら、完全にアズナブル侯爵は犯罪者だ。流石にそれはないと思うが…」
と父は難しい顔をする。

「相手はアズナブル侯爵家のメイド?でも、これとジュリエッタ…何の関係があるのかしら?」

書類に書いてあったのは、ニール殿と侯爵家のメイドの関係だ。しかもメイドは妊娠しているらしい。アズナブル侯爵も自分の息子をコントロール出来ていないと見える。目の前の誰かさんと同じだ。

「あいつの息子がジュリエッタに純粋に好意を持っている…と思いたいが、違うだろう。あの娘は好きになった男に直ぐにのぼせ上がるし、そうなると周りは見えなくなる。…前の時の様にな」

私は父の言葉に、おやっ?と思う。

「ジュリエッタが家出したのを、知っていたの?」
と私が訊けば、

「知らん訳ないだろう。あの娘も妻も、私にはバレていないと思っているようだがな」

「まさか…あの親子に何もしていないでしょうね?」
私はジョーとその母の事が気になった。

「何も。いや…口止め料は払ったがな」

…良かった。無事なようだ。

「ジュリエッタがそんな娘だとわかっているなら、早々に手を打ったら?ニール殿の…いえ、アズナブル侯爵の企みはわからないけど、このままでは不味いでしょう」
私が警告すると、

「あぁ。もしアズナブル侯爵が婚約破棄後の事を考えて、ジュリエッタへの婿入りを考えていたりしては面倒だ。うちを乗っ取る気かもしれん」

「そこまでわかってるなら、ジュリエッタに注意を…」
と私は言いかけて、止めた。あの娘がそんな言い付けを守る訳がない。

「お前だってわかっているだろう?あの娘は『会うな』と言えば、ますます意固地になる。また家出されても面倒だ」

そんな娘にしたのは、お前だろう?と言いたい。甘やかして、付け上がらせて…。

「それなら、修道院にでも行かせたら?行儀見習いで預ける貴族も多いでしょう?」
と私が言えば、

「もうすぐ学園に通うようになる。修道院に預けるのも手だが、あの娘は学園に通うのを楽しみにしている」

…それが甘いと言うのよ。別に、貴族令嬢だからと言って、絶対に学園に通わなければならない訳じゃない。修道院でも色々と学べるのだから。

「そんな甘い事を言っていては、手遅れになるわよ?逆にあの娘が学園で何か仕出かす前に、修道院に閉じ込めてしまいなさいな」
と私が言えば、

「それは、あまりに可哀想だ。…そこで、だ。妃陛下にお願いがあるんですが…」

と改めて姿勢を正した。

…内容を聞く前に断って良いかしら?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】笑顔で離縁してください 〜貴方に恋をしてました〜

桜夜
恋愛
「旦那様、私と離縁してください!」 私は今までに見せたことがないような笑顔で旦那様に離縁を申し出た……。 私はアルメニア王国の第三王女でした。私には二人のお姉様がいます。一番目のエリーお姉様は頭脳明晰でお優しく、何をするにも完璧なお姉様でした。二番目のウルルお姉様はとても美しく皆の憧れの的で、ご結婚をされた今では社交界の女性達をまとめております。では三番目の私は……。 王族では国が豊かになると噂される瞳の色を持った平凡な女でした… そんな私の旦那様は騎士団長をしており女性からも人気のある公爵家の三男の方でした……。 平凡な私が彼の方の隣にいてもいいのでしょうか? なので離縁させていただけませんか? 旦那様も離縁した方が嬉しいですよね?だって……。 *小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

あなたが幸せになるために

月山 歩
恋愛
幼馴染の二人は、お互いに好きだが、王子と平民のため身分差により結婚できない。王子の結婚が迫ると、オーレリアは大好きな王子が、自分のために不貞を働く姿も見たくないから、最後に二人で食事を共にすると姿を消した。

全てがどうでもよくなった私は理想郷へ旅立つ

霜月満月
恋愛
「ああ、やっぱりあなたはまたそうして私を責めるのね‥‥」 ジュリア・タリアヴィーニは公爵令嬢。そして、婚約者は自国の王太子。 でも私が殿下と結婚することはない。だってあなたは他の人を選んだのだもの。『前』と変わらず━━ これはとある能力を持つ一族に産まれた令嬢と自身に掛けられた封印に縛られる王太子の遠回りな物語。 ※なろう様で投稿済みの作品です。 ※画像はジュリアの婚約披露の時のイメージです。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...