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第4話
しおりを挟む父は私が話す許可も与えていないのに、
「今から学園に入るまで…妃陛下の侍女としてジュリエッタを働かせてもらえないだろうか?」
と私へのお願いを口にした。
…ほら~やっぱり聞かなきゃ良かった。
「いやよ」
私は即答する。
「妃陛下がジュリエッタを嫌っているのはわかっている。しかし…」
「ならば、私の答えは聞くまでもなかったでしょう?それに、ジュリエッタ自身も私に使われるなんて嫌でしょうに」
…というか、王妃の侍女よ?侍女としてのスキルが特別に高い者が選ばれるのが普通よ?
私の侍女はクロエである私個人の侍女だから、王宮侍女ではないけれど、彼女達は、私が何も言わずとも、私の好み、私の日課、私の体調を全て把握して、私が過ごしやすい様に、先回りして環境を、そして私を整えてくれている、云わば『私』のエキスパートだ。
その中に、何も出来ないジュリエッタを入れろと言うの?
彼女達の邪魔にもなる事間違いなしだわ。
「物理的にやつの息子と離したいんだ。家に置いておいても、ジュリエッタは抜け出すだろう」
「馬鹿馬鹿しい。縄で縛り付けておいたら?」
そう私が言うと、父は顔を真っ赤にして、
「自分の妹を犬のように縛り付けろと言うのか?」
と怒り出した。
…犬の方が、賢いわね。犬に失礼だわ。
「躾に失敗したのは、貴方達でしょう?その尻拭いを私にさせないで」
と言う私に、
「わかってる!…それについては、反省している。半年…いや、3ヶ月でも良い!この王宮に置いてやって欲しい。
その間に、アズナブル侯爵の息子の件は片を付けるし、ジュリエッタの婚約者も決める。どうか頼む!この通りだ!」
と父は頭を下げた。
私に頭を下げる父を見るのは初めてだ。私は白髪の増えた父の頭を見る。
……仕方ない。
「では、約束して。直ぐにアズナブル侯爵の企みを暴き、ニール殿を物理的にジュリエッタから離す事。
それと、私が必要だと思えば、学園に通わせるのではなく、修道院へ行儀見習いに行かせる事。
それが出来るのなら、私があの娘を預かるわ。…それと、ニール殿のお相手は今、どうしてるの?」
と言う私の言葉に、
「本当か?!約束する!。
それと、例のメイドはニール殿とは手切れ金を渡されて別れさせられたらしい。…直ぐに保護する」
私の言いたい事がわかったようだ。
「その女性が切り札になるかもしれないわ。それと…ジュリエッタが妹だからと言って、私は甘くないし、甘やかすつもりもない。それは理解させてね」
と私は言って、
「…話は終わり?なら、侯爵はすぐにやるべき事に取りかかって。私は仕事に戻るから」
と席を立つ。
「妃陛下…ありがとうございます」
と再度私に頭を下げる父に目をくれる事もなく、私は部屋を出る。
…私も甘くなったものだ。
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