4 / 38
第4話
しおりを挟む父は私が話す許可も与えていないのに、
「今から学園に入るまで…妃陛下の侍女としてジュリエッタを働かせてもらえないだろうか?」
と私へのお願いを口にした。
…ほら~やっぱり聞かなきゃ良かった。
「いやよ」
私は即答する。
「妃陛下がジュリエッタを嫌っているのはわかっている。しかし…」
「ならば、私の答えは聞くまでもなかったでしょう?それに、ジュリエッタ自身も私に使われるなんて嫌でしょうに」
…というか、王妃の侍女よ?侍女としてのスキルが特別に高い者が選ばれるのが普通よ?
私の侍女はクロエである私個人の侍女だから、王宮侍女ではないけれど、彼女達は、私が何も言わずとも、私の好み、私の日課、私の体調を全て把握して、私が過ごしやすい様に、先回りして環境を、そして私を整えてくれている、云わば『私』のエキスパートだ。
その中に、何も出来ないジュリエッタを入れろと言うの?
彼女達の邪魔にもなる事間違いなしだわ。
「物理的にやつの息子と離したいんだ。家に置いておいても、ジュリエッタは抜け出すだろう」
「馬鹿馬鹿しい。縄で縛り付けておいたら?」
そう私が言うと、父は顔を真っ赤にして、
「自分の妹を犬のように縛り付けろと言うのか?」
と怒り出した。
…犬の方が、賢いわね。犬に失礼だわ。
「躾に失敗したのは、貴方達でしょう?その尻拭いを私にさせないで」
と言う私に、
「わかってる!…それについては、反省している。半年…いや、3ヶ月でも良い!この王宮に置いてやって欲しい。
その間に、アズナブル侯爵の息子の件は片を付けるし、ジュリエッタの婚約者も決める。どうか頼む!この通りだ!」
と父は頭を下げた。
私に頭を下げる父を見るのは初めてだ。私は白髪の増えた父の頭を見る。
……仕方ない。
「では、約束して。直ぐにアズナブル侯爵の企みを暴き、ニール殿を物理的にジュリエッタから離す事。
それと、私が必要だと思えば、学園に通わせるのではなく、修道院へ行儀見習いに行かせる事。
それが出来るのなら、私があの娘を預かるわ。…それと、ニール殿のお相手は今、どうしてるの?」
と言う私の言葉に、
「本当か?!約束する!。
それと、例のメイドはニール殿とは手切れ金を渡されて別れさせられたらしい。…直ぐに保護する」
私の言いたい事がわかったようだ。
「その女性が切り札になるかもしれないわ。それと…ジュリエッタが妹だからと言って、私は甘くないし、甘やかすつもりもない。それは理解させてね」
と私は言って、
「…話は終わり?なら、侯爵はすぐにやるべき事に取りかかって。私は仕事に戻るから」
と席を立つ。
「妃陛下…ありがとうございます」
と再度私に頭を下げる父に目をくれる事もなく、私は部屋を出る。
…私も甘くなったものだ。
79
あなたにおすすめの小説
【本編完結】笑顔で離縁してください 〜貴方に恋をしてました〜
桜夜
恋愛
「旦那様、私と離縁してください!」
私は今までに見せたことがないような笑顔で旦那様に離縁を申し出た……。
私はアルメニア王国の第三王女でした。私には二人のお姉様がいます。一番目のエリーお姉様は頭脳明晰でお優しく、何をするにも完璧なお姉様でした。二番目のウルルお姉様はとても美しく皆の憧れの的で、ご結婚をされた今では社交界の女性達をまとめております。では三番目の私は……。
王族では国が豊かになると噂される瞳の色を持った平凡な女でした…
そんな私の旦那様は騎士団長をしており女性からも人気のある公爵家の三男の方でした……。
平凡な私が彼の方の隣にいてもいいのでしょうか?
なので離縁させていただけませんか?
旦那様も離縁した方が嬉しいですよね?だって……。
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
あなたが幸せになるために
月山 歩
恋愛
幼馴染の二人は、お互いに好きだが、王子と平民のため身分差により結婚できない。王子の結婚が迫ると、オーレリアは大好きな王子が、自分のために不貞を働く姿も見たくないから、最後に二人で食事を共にすると姿を消した。
全てがどうでもよくなった私は理想郷へ旅立つ
霜月満月
恋愛
「ああ、やっぱりあなたはまたそうして私を責めるのね‥‥」
ジュリア・タリアヴィーニは公爵令嬢。そして、婚約者は自国の王太子。
でも私が殿下と結婚することはない。だってあなたは他の人を選んだのだもの。『前』と変わらず━━
これはとある能力を持つ一族に産まれた令嬢と自身に掛けられた封印に縛られる王太子の遠回りな物語。
※なろう様で投稿済みの作品です。
※画像はジュリアの婚約披露の時のイメージです。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる