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第8話

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「ジュリエッタ、陛下に迷惑をかけないで。貴女が周りをうろちょろすると、他の者に示しがつかないのよ」

私は見るに見かねて、ジュリエッタと向かい合って話をする事にした。


側妃を狙うご令嬢やその家(主に反王妃派)の動きが大胆になってきたのには、このジュリエッタの振る舞いが大きく影響していた。


ー姉が王妃で、妹が側妃に収まろうとしてるー

そんな馬鹿げた噂をする者まで現れては、私も見過ごすことは出来ない。

…今までも注意していたけど、この娘には効き目がなかった。

ジュリエッタが王宮に来たタイミングも悪かったのだろう。
父のオーヴェル侯爵の野心を疑われてしまう始末だ。


「お義兄様は、私を可愛がってくださってるわ」

…『お義兄様』と呼ぶなとあれほど言ったのに…。

確かに陛下はジュリエッタに甘い。

私が何度かそれとなく注意しても、『自分には弟妹がいなかったから、どう接したら良いのか、わからなくて…つい』と言う答えが返ってくるだけだ。

…ロッテン様の時にも思ったのだが、陛下はこういう女性に弱いのではないだろうか?
と言うのは、良い意味ではなく悪い意味の。
自由奔放に振る舞う女性に惹かれる質なのか?それとも押しに弱いだけか。

「可愛がっているのではなく、邪険に出来ないだけよ。陛下はお優しいから」
と私が言っても、

「私が顔を見せれば、お義兄様は喜んで下さるわ。私はお姉さまみたいに、いつもピリピリしていないもの。
そんな風に男性にプレッシャーを与える女性はモテないわよ?」
と減らず口を叩く。

…モテないかもしれないけど…陛下には『好き』って言われたもん!と反論したくなるが、それは流石に大人げない。

「ジュリエッタ。貴女、此処に来た理由をわかってる?行儀見習いの為よ?それなのに、全く真面目にやる気配はないじゃない」

…ニール殿と距離を置く為だとは、ジュリエッタには言っていない。
言えば反発必須だ。…しかし、ニール殿と会えなくなったと言うのに、それを嘆くような言葉がジュリエッタから聞こえてこないのは何故だろう。

「そんなの、お姉さまとお父さまが勝手に決めた事じゃない!それに、私は貴族令嬢なのよ?
それなのに、何故侍女の真似事をしなくちゃならないの?
そんな侯爵令嬢なんて見たことないわよ!」

父よ、ちゃんと説得してから、此処へ預ける約束だったではないか…あの嘘つき。

「貴女は侍女としては失格よ。そんな簡単な仕事ではないから、私だって貴女にそれを求めるのは早々に諦めたわ。
でもね、最低限のマナーや貴族のルールを身に付けなければ、学園に通う事も難しくなるのよ?」

…流石に、ここで『修道院に入れる』なんて言えば、この王宮からも逃げ出すかもしれない。
慎重にならなければ、この娘は、何を仕出かすかわかったもんじゃない。

すると、

「私、学園に通うの辞めるわ」
と突然、ジュリエッタは予想外の事を言い出した。

「?貴女、学園に通うのを楽しみにしていたのでは無くて?」
と私が問えば、


「私、決めたの。私がお義兄様の側妃になるわ!」

……おい、おい、おい。何て事を言い出したんだこの娘は。
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