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第7話

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「疲れた…」

という私の呟きに、セドリックが反応した。

「確か、今日は王妃主催のお茶会の筈でしたね…そんな大変でしたか?」
と周りに人が居るため、ちゃんと弁えた物言いで私に訊ねる。

「精神的に、疲れたわ…陛下の側妃狙いのご令嬢が結構居てね」

今の貴族は大きく分けると、私に反発している『反王妃派』、私の改革を支持する『王妃派』、どっち付かずの『中立派』だ。

今回のお茶会はその派閥の壁を少しでも低くする為に開催したのだが…側妃を狙う者が意外と多くて辟易した。
特に、反王妃派の家のご令嬢はグイグイ来るし、私がお飾りの王妃だからと、若干馬鹿にした感じが見え隠れしていた。

「そうか…特に反王妃派は、ロッテン子爵令嬢が側妃候補から外れた途端に、陛下に側妃を早く持てと急かしているからな」
と言うセドリックの言葉に、

「私を煙たく思っている家にしてみれば、自分の娘が側妃になって、跡継ぎを産めば、私を追い落とす事が出来るものね」

「そうですね。明らかにそれを狙って、最近ではハニートラップを仕掛けてくる輩もいるのでね」

「ハニートラップ?私、そんな事聞いていないわよ?」

そんな事になってるなんて、初耳だ。

「…っと。陛下に口止めされていたのを忘れておりましたね」
とセドリックは、しまった…という顔をした。

「何故私に内緒にするの?一緒に対策を考えるのに…」
と言いかけて、私は陛下の気持ちに気づいた。

「私にプレッシャーを与えたくなかったのね…陛下は」
と私は自分で答えを出した。

セドリックは、

「焦らせたくないんでしょうね」
と言うと、

「ここからは、元婚約者の言葉として聞いて下さい」
と私の目を見る。

私は頷いて、先を促すと、

「お前は昔から、自分の気持ちに素直になるのが苦手だ。それと、生真面目だから、約束事を反故にする事を嫌う」

…確かに素直になるのは少し抵抗があるが、私、セドリックと何か約束したかしら?

首を傾げる私に、

「お前は忘れているかもしれないが、無意識に、俺との約束を守ろうとしている。それがお前の足枷になっている」

…何だか謎かけみたいなんだけど?ヒントくれないかしら?

「何の事だかわからないって顔だな。俺もそれを親切に教える気はない。
これはクロエが自分の気持ちに素直になれば、自ずと答えは見えてくる筈だ。というより、これはお前自身が気づく必要がある事だ」

…ますます訳がわからない。

「自分の心に問いかけろ。そうすれば、お前を縛っている物がわかるだろう」
そう言うとセドリックはいつもの宰相の顔に戻り、

「私が口止めされていた事を言ってしまったので、陛下に怒られるかもしれませんが、ハニートラップについては、只今対応中ですので、妃陛下はご心配なさらずに」
と笑顔で言った。

…これ以上ヒントはないって事ね。
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