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第11話
しおりを挟む「陛下、ご心配をおかけして…」
と言う私に、
「クロエ、すまなかった。君の不調に気付かないなんて…私は夫、失格だ」
と陛下はショボくれた。
どこの家庭の夫が、PMSや生理中の不調に気づくと言うのだ。前世でも、そんな男性は稀だろう。
「いえ。私が言わなかったのですから、気付かずにいて当然です。陛下のせいではありません。女性特有のものなのですから」
と私が言うと、
「いや…仕事が多くて、休めなかったのだろう?君が頑張り屋なのは知っていたのに…」
と陛下は今だに自分を責めていた。
「この症状に多くの女性が悩まされております。そうだ!…王宮で働く女性が増えた今、彼女達には『生理休暇』を与える事にしましょう。それが良いですわ!早速、そのように手配を…」
と私が寝台を出ようとすると、
「ダメだ!先生にも言われていただろう?今は仕事の事は考えるな…と言っても君には無理なんだろうな」
と陛下は困ったように笑って、
「その『生理休暇』とは何だ?」
と私に訊ねてくれた。
「すみません…つい。生理ではわかりませんよね。『月の物休暇』とでも言いましょうか。この症状が重くなる月の物の3日間程、休暇を与えるのです。最初から休みがあると思えば、心も軽くなります」
と私が説明すれば、
「わかった。クロエの事務官に伝えておこう。その代わり、クロエはゆっくりと休むんだ。
君が倒れたと聞いて、生きた心地がしなかったよ」
と陛下に言われてしまった。
「いつもはここまで酷くならないのですが…やはり疲れていたのかもしれません。ジュリエッタの事があって、少しイライラしていたもので…」
と反省する私に、
「そうか…。ジュリエッタ嬢は良い方へ捉えれば、天真爛漫だからな。クロエとは正反対と言うか…」
ん?ちょっと聞き捨てならないんだけど?
「陛下は、私を奸佞邪知だと仰るのですか?」
…私、そんなずる賢い?ひねくれてる?
「ち、違う!そう言う意味では…ただ、ジュリエッタ嬢は自分の欲のままに動くと…」
と、陛下がグダグダと言い訳をしているが、頭に血の昇った私の耳には届かない。
「陛下が私の事をどのようにお考えなのか、よーくわかりました!もう私は休みますので、陛下は出て行って下さい!」
と私は大きな声で言うと、シーツを頭まで被り、ベッドへ横になった。もちろん陛下に背を向けて。
「ク、クロエ!違う!誤解だ!」
と慌てて言う陛下に、
「出て行って下さい!」
ともう1度大きな声で叫ぶ。
陛下は、
「クロエ…」
となんとも情けない声で私の名を呼ぶと、静かに部屋を出て行った。
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