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第10話
しおりを挟む「…エ。…すま…い。…ロエ」
誰かが私の名前を呼んでいる。…?泣いてるの?…あぁ…この人は、私に謝っているんだ。…何故かしら…?
私の左手が温かい。…きっとこの泣き虫さんが、握っているのね。
私はゆっくりと目を開ける。…今は何時だろう。
私は自分の左手に額を擦り付けるようにして手を握っている人物へと顔を動かした。
「…陛下…」
「クロエ!気がついたのか!?おい!誰か!医者を呼べ!」
と陛下は私の手を握ったまま、廊下の護衛へと大声で声をかけた。
その声に反応したであろう護衛が廊下を走っていく音がする。
「陛下…私…」
寝起きのように声が少し掠れてしまう。
それを見た陛下は私の手を名残惜しそうに離すと、近くの水差しからグラスへと水を注ぎ、
「クロエ、少し起きれそうか?体を起こそう」
と言って、私の背中を抱き起こすと、そこへ枕を入れて整える。そして、ゆっくりと、私の背中を枕へと預けた。
陛下に手渡されたグラスから水を少し飲み、喉が潤うといつもの様に声が出る。
「陛下…私、どれぐらい眠って?」
と私が訊ねると、
「丸一日だ」
と陛下は答える。その目は赤い。
すると、護衛に呼ばれた医者…ユニ先生が部屋へと入って来た。
私の顔を見たユニ先生は、
「クロエ様…、我慢も程々にしませんとね」
とホッとしたように微笑んだ。
…どうも、たくさんの人に心配をかけた様で申し訳ない。
すると横に居た陛下が、
「私のせいだ。私が頼りないから、クロエに無理をさせてしまって…」
とションボリしてしまった。
私がその様子に目を丸くすると、
「陛下…先ほども言ったように、クロエ様の体調不良は月の物によるものです。
女性は多かれ少なかれ、月の物の少し前から体調を崩すものなのです。
確かに今回のクロエ様はその症状が重く出てしまいました。 もちろん疲れやストレスが原因とも考えられますが、1番はクロエ様が我慢し過ぎる事です」
とユニ先生は陛下へ諭すように言うと、私に向かって、
「ほら見て下さい。倒れたクロエ様より陛下の方が酷い顔をなさっているでしょう?
陛下の方が病気になるかと思われるぐらい心配なさってました。これに懲りたら、次からは早めに休んで下さい。
それと、少し貧血気味のようですね。若い女性には多い症状ですが、貧血が酷くなると、ますます疲れやすくなりますからね。
貧血に効く食べ物を料理長に伝えておきましたから。それとハーブティーもブレンドしてきました。きちんと食べて、しっかり休んで下さい。わかりましたか?」
と私に釘を刺す。
「ごめんなさい。心配をかけたわ」
と私が謝ると、
「素直でよろしい。吐き気はいかがです?」
とユニ先生が訊ねる。
「吐き気は少し…それより、お腹と頭が痛くて…」
と私は素直に自分の症状を言う。
その度に、陛下の表情が曇るのだが、今は素直に自分の不調を伝えなければならない。
「そうですか。では痛み止めと吐き気止めの薬を出しておきましょう。
どちらも症状が治まれば飲まなくて結構です」
ユニ先生は私の手首で脈を計りながら言った。
ユニ先生から薬を貰い早速飲むと、
「さぁ、ゆっくりとお休みになってください。それと!月の物が終わるまで、仕事はお休みして下さいね」
とユニ先生が念を押す。
私が返事を渋っていると、
「大丈夫だ!絶対に休ませる。私が約束する!」
と陛下が私の代わりに答えてしまった。
「陛下。クロエ様は甘えるのが苦手なようです。しかし、妻を甘えさせるのも夫の努めですよ?では、私はこれで。
また何かあったら直ぐに呼んで下さい」
と言うユニ先生に、陛下は首がもげそうな程頷いて、
「わかった。また頼む」
と先生の背中を見送った。
扉が閉まり、部屋に陛下と2人きりになる。ナラを呼んだ方が良いかしら?そう私が考えていると、陛下は私の側の椅子に腰かけた。
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