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第95話
「い、いやそれもあるが、僕の今までの行動、発言全て── 」
「分かっております!もちろん愛人など作るつもりはございません!あの時は売り言葉に買い言葉というか……。とにかく!このブラシェール伯爵家に泥を塗るような行いをするつもりはありませんので、ご安心下さい」
「いや、僕が言いたいことはそうじゃなくて── 」
「ブラシェール伯爵領を盛り上げること。それが今の私の使命だと心得ておりますので、私は今はそれに全力投球する所存です。レニー様は何もお気になさらず、健やかにお過ごしください!」
まるで決意表明のように私は胸を張り、まくしたてた。出来ることなら社交クラブの件を有耶無耶にしてやり過ごしたい。その気持ちが前面に出ていたのかもしれない……レニー様は訝しげに私を見た。
「……何か隠し事でもあるのか?」
「とんでもございません!ただ、私はブラシェール伯爵家のためにならないことは一つも── 」
「今はブラシェールの家の名などどうでもいい!……とにかく僕の懺悔を聞いてほしいんだ」
レニー様は優しく諭すように私の目を見る。懺悔?私が首を傾げると、レニー様は大きく息を吐いて、話し始めた。
「まず。結婚した当日の話しなんだが──」
え?半年前の懺悔?何?
私は目をパチパチとさせていた。レニー様は何を話すつもりなのだろう。
「あの日の夜の僕の……その、あの夜の発言なんだが──」
私は夜会の時のレニー様との会話を突然思い出した。確か……子作りがどうとか言ってなかったかしら?もしや言いたいことはコレ?
「子作りが義務だという発言ですか?それならば、私もそれが伯爵夫人の務めだと心得ておりますので、レニー様に命令されればその時は── 」
「違う!!そうじゃなくて!」
レニー様は慌てている。── その時。
「失礼いたします。旦那様、お話が……」
ノックと共に執事から声がかかる。
「うるさい!今は忙しいんだ!」
レニー様はイライラしたように答える。
「しかし……!アリシア様が急ぎの用とのことで── 」
「知らん!後にしろ!」
レニー様の言葉に私は驚いた。アリシア様の願いなら、すぐさま飛び出していく筈なのに……。しかし、執事も退かない。
「クラッド様からもお手紙が届いておりまして……どうか扉をお開けください」
「兄さんが……?」
「レニー様、私は逃げませんから、クラッド様とアリシア様のお話を先に。私とのお話はゆっくりで構いませんから」
私が微笑むと、レニー様は渋々といった風に立ち上がり、扉を開けた。
「何の用だ」
レニー様は刺々しい。
「あ、あの……クラッド様の代わりにアリシア様と観劇に行って欲しいと。クラッド様が急用で行けなくなったようで。中々手に入らないチケットだった上、今日が千秋楽らしくて。クラッド様からも頼むと手紙が……」
執事は手紙を見せながら、おずおずとレニー様に頭を下げた。
「はぁ?観劇ぃ??」
レニー様は呆れているようだ。私も立ち上がって、レニー様の側へ向かう。執事の持つチケットに目をやった。
「まぁ!この歌劇。物凄く人気ですのよ。レニー様、行ってらしてください。アリシア様も楽しみにしていたでしょうし、行けなくなったとすればがっかりされますわ」
いつもはクラッド様の居ない隙にコソコソ会ってるレニー様だが、今回は違う。クラッド様直々のお願いなのだ。堂々とレニー様はアリシア様とデート出来るではないか。
私も社交クラブの件を有耶無耶に出来るかもしれない。
「兄さんが行けなくなったのなら、一人で行けばいい」
……レニー様ったら。嬉しいくせに。私はもう一押しレニー様の背中を押してあげることにした。
「レニー様も今日は机に着いてずっとお仕事していらしたのですから、気分転換にちょうど良いと思いますよ」
私がそう微笑めば、レニー様は死んだ魚のような目をして私を見た。
「分かっております!もちろん愛人など作るつもりはございません!あの時は売り言葉に買い言葉というか……。とにかく!このブラシェール伯爵家に泥を塗るような行いをするつもりはありませんので、ご安心下さい」
「いや、僕が言いたいことはそうじゃなくて── 」
「ブラシェール伯爵領を盛り上げること。それが今の私の使命だと心得ておりますので、私は今はそれに全力投球する所存です。レニー様は何もお気になさらず、健やかにお過ごしください!」
まるで決意表明のように私は胸を張り、まくしたてた。出来ることなら社交クラブの件を有耶無耶にしてやり過ごしたい。その気持ちが前面に出ていたのかもしれない……レニー様は訝しげに私を見た。
「……何か隠し事でもあるのか?」
「とんでもございません!ただ、私はブラシェール伯爵家のためにならないことは一つも── 」
「今はブラシェールの家の名などどうでもいい!……とにかく僕の懺悔を聞いてほしいんだ」
レニー様は優しく諭すように私の目を見る。懺悔?私が首を傾げると、レニー様は大きく息を吐いて、話し始めた。
「まず。結婚した当日の話しなんだが──」
え?半年前の懺悔?何?
私は目をパチパチとさせていた。レニー様は何を話すつもりなのだろう。
「あの日の夜の僕の……その、あの夜の発言なんだが──」
私は夜会の時のレニー様との会話を突然思い出した。確か……子作りがどうとか言ってなかったかしら?もしや言いたいことはコレ?
「子作りが義務だという発言ですか?それならば、私もそれが伯爵夫人の務めだと心得ておりますので、レニー様に命令されればその時は── 」
「違う!!そうじゃなくて!」
レニー様は慌てている。── その時。
「失礼いたします。旦那様、お話が……」
ノックと共に執事から声がかかる。
「うるさい!今は忙しいんだ!」
レニー様はイライラしたように答える。
「しかし……!アリシア様が急ぎの用とのことで── 」
「知らん!後にしろ!」
レニー様の言葉に私は驚いた。アリシア様の願いなら、すぐさま飛び出していく筈なのに……。しかし、執事も退かない。
「クラッド様からもお手紙が届いておりまして……どうか扉をお開けください」
「兄さんが……?」
「レニー様、私は逃げませんから、クラッド様とアリシア様のお話を先に。私とのお話はゆっくりで構いませんから」
私が微笑むと、レニー様は渋々といった風に立ち上がり、扉を開けた。
「何の用だ」
レニー様は刺々しい。
「あ、あの……クラッド様の代わりにアリシア様と観劇に行って欲しいと。クラッド様が急用で行けなくなったようで。中々手に入らないチケットだった上、今日が千秋楽らしくて。クラッド様からも頼むと手紙が……」
執事は手紙を見せながら、おずおずとレニー様に頭を下げた。
「はぁ?観劇ぃ??」
レニー様は呆れているようだ。私も立ち上がって、レニー様の側へ向かう。執事の持つチケットに目をやった。
「まぁ!この歌劇。物凄く人気ですのよ。レニー様、行ってらしてください。アリシア様も楽しみにしていたでしょうし、行けなくなったとすればがっかりされますわ」
いつもはクラッド様の居ない隙にコソコソ会ってるレニー様だが、今回は違う。クラッド様直々のお願いなのだ。堂々とレニー様はアリシア様とデート出来るではないか。
私も社交クラブの件を有耶無耶に出来るかもしれない。
「兄さんが行けなくなったのなら、一人で行けばいい」
……レニー様ったら。嬉しいくせに。私はもう一押しレニー様の背中を押してあげることにした。
「レニー様も今日は机に着いてずっとお仕事していらしたのですから、気分転換にちょうど良いと思いますよ」
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