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第117話
「クラッド!何の冗談?全く笑えないわ!」
アリシア様は顔にかかるピンク色の髪を耳にかけ、クラッド様を睨んだ。
「アリシア……君こそ喜ぶと思ったんだがなぁ。学生時代、よく皆に自慢していたらしいじゃないか、レニーと僕が自分を奪い合っているんだって」
その言葉にアリシア様はカッと顔を赤くする。
「そ、それは── !」
「いいんだ。君がそんな風に僕たちを思っていたことは知っていたよ。どちらを選ぶか……僕だって賭けだった」
「そんな……僕はアリシアに気持ちを伝えたことなど──」
レニー様はそう言いながら、私にも自分の気持ちがバレバレだったことを思い出したのか、口を噤んだ。
「レニー。お前の気持ちなんて言わずとも皆知ってたよ。アリシアだって。でも……アリシアは僕を選んだ。……僕がハルコン侯爵を継ぐからだろう?」
クラッド様はゆっくりと自分の両手をテーブルの上で組んだ。その手を見つめるように呟く。
「プロポーズを受けてくれた時、本当に嬉しかったんだ。レニーじゃなくて僕を選んでくれたこと。僕を愛していると言ってくれた君の言葉を僕は信じてた。……ハハッ!おめでたい奴だと腹の底では笑っていたんだろう?」
クラッド様の瞳が暗く沈む。アリシア様は慌てたように腰掛けると、テーブルの上のクラッド様の手を軽く握った。
「クラッド、何を言ってるの?私は本当に貴方を愛して── 」
クラッド様はアリシア様の手から逃れるように、自分の手を膝の上に置き直した。
「あぁ、もう演技は十分だ。大丈夫だよ、そんなに取り繕わなくても。もう僕は傷ついていない。僕に大切なのは、このハルコン侯爵家を守っていくことだ。君と一緒に居ても、この家を守れない。だから、離縁する」
クラッド様はあくまでも冷静に、そして淡々とアリシア様に話して聞かせる。アリシア様の唇は微かに震えていた。
「兄さん!二人がどうなろうと僕には関係ない!そしてデボラにも── 」
レニー様はまだ立ったまま、クラッド様を睨みつけていた。握った拳に力が入っているのがわかる。私はその拳にそっと触れた。
レニー様は私を見下ろす。少しだけ困ったような、泣きそうな顔をしてストンと椅子に座り込んだ。
「レニー。お前、アリシアを好きだったんじゃないのか?」
クラッド様はほんの少し首を傾げた。不思議がっているようだ。
アリシア様もレニー様を見つめる。その目は何かを期待しているようだった。
「……子どもの頃の話だよ。僕はもう結婚している」
アリシア様の大きな瞳が不安そうに揺れていた。今にも涙かこぼれ落ちそうだ。
「政略結婚だ。お前、最初は嫌がっていたじゃないか」
── ダンッ!
レニー様の拳は握られたまま、テーブルに打ち付けられた。
「いつの話をしてるんだよ!僕は今──」
「ふむ……最近二人が夫婦の寝室で寝ているというのは……そういうことかな?だが、行為自体はないようだが──」
「な、何でそれを……?」
レニー様のテーブルに打ち付けた拳がプルプルと震えていた。私も目を見開いて、クラッド様の言葉を聞く。
すると、何故かアリシア様が嬉しそうに言った。
「レニー!私との約束を守ってくれていたのね!」
「約束?」
私はそう呟いてレニー様に視線を向けた。
彼は、首を何度も横に振った。
「違う!── 違うんだ!」
「違わない!レニーは私と約束したの。デボラさんとの間に子を作らないって!」
アリシア様はそう叫んだ。
隣のクラッド様はフッと口角を上げた。それは、引き攣れたような笑いだった。
アリシア様は顔にかかるピンク色の髪を耳にかけ、クラッド様を睨んだ。
「アリシア……君こそ喜ぶと思ったんだがなぁ。学生時代、よく皆に自慢していたらしいじゃないか、レニーと僕が自分を奪い合っているんだって」
その言葉にアリシア様はカッと顔を赤くする。
「そ、それは── !」
「いいんだ。君がそんな風に僕たちを思っていたことは知っていたよ。どちらを選ぶか……僕だって賭けだった」
「そんな……僕はアリシアに気持ちを伝えたことなど──」
レニー様はそう言いながら、私にも自分の気持ちがバレバレだったことを思い出したのか、口を噤んだ。
「レニー。お前の気持ちなんて言わずとも皆知ってたよ。アリシアだって。でも……アリシアは僕を選んだ。……僕がハルコン侯爵を継ぐからだろう?」
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「プロポーズを受けてくれた時、本当に嬉しかったんだ。レニーじゃなくて僕を選んでくれたこと。僕を愛していると言ってくれた君の言葉を僕は信じてた。……ハハッ!おめでたい奴だと腹の底では笑っていたんだろう?」
クラッド様の瞳が暗く沈む。アリシア様は慌てたように腰掛けると、テーブルの上のクラッド様の手を軽く握った。
「クラッド、何を言ってるの?私は本当に貴方を愛して── 」
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「あぁ、もう演技は十分だ。大丈夫だよ、そんなに取り繕わなくても。もう僕は傷ついていない。僕に大切なのは、このハルコン侯爵家を守っていくことだ。君と一緒に居ても、この家を守れない。だから、離縁する」
クラッド様はあくまでも冷静に、そして淡々とアリシア様に話して聞かせる。アリシア様の唇は微かに震えていた。
「兄さん!二人がどうなろうと僕には関係ない!そしてデボラにも── 」
レニー様はまだ立ったまま、クラッド様を睨みつけていた。握った拳に力が入っているのがわかる。私はその拳にそっと触れた。
レニー様は私を見下ろす。少しだけ困ったような、泣きそうな顔をしてストンと椅子に座り込んだ。
「レニー。お前、アリシアを好きだったんじゃないのか?」
クラッド様はほんの少し首を傾げた。不思議がっているようだ。
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「……子どもの頃の話だよ。僕はもう結婚している」
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「政略結婚だ。お前、最初は嫌がっていたじゃないか」
── ダンッ!
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「ふむ……最近二人が夫婦の寝室で寝ているというのは……そういうことかな?だが、行為自体はないようだが──」
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「約束?」
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「違う!── 違うんだ!」
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