愛人を作ってもいいと言ったその口で夫は私に愛を乞う

初瀬 叶

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第151話

その後私はレニー様におじ様との『賭け』について話をした。

『レイノルズ伯爵がそんな面白い人物だとは知らなかったよ』

レニー様は私が黙っていたことに不快感を示すこともなく、笑って言った。

『おじ様は確かに付き合う人を選びますが、決して気難しい人物ではありません。ただ、あまり貴族らしくはありませんし、自分がワクワクすることが好きなのです』

『それで?明日からレイノルズ伯爵領へ向かうのか?』

『はい。なんとか王都へ果実を運ぶ目処も立ちましたし、一度ご報告に伺おうと思いまして。ついでに実家にも寄ってこようかと』

兄に執事を紹介してくれたことに礼をまだ言えていない。
スタンはあの日から、仕事のない時間は全て店に通ってレオナを手伝っていたようだ。
レオナの叔父のことを護衛から聞いたらしく、自分がいる事で抑止力になれば……なんて言っていたが、彼の目当てがそれだけでないことは、屋敷の皆が知っている。まぁ、口には出さないで生温かく見守っているということだろう。── しかし、当のレオナが気づいているかどうかはまだ確認出来ていない。


『ならば僕も一緒に行こう。君のご実家に……一度もきちんと挨拶を出来ていないしな』

レニー様は少しだけバツが悪そうに頭を掻いた。





「── ラ?デボラ?」

窓の外を見ながらボーッと考え事をしていた私をレニー様の心配そうな声が引き戻した。

「あ……はい。すみません」

私は向かいに座って馬車に揺られるレニー様に視線を向けた。頬杖をついていた掌が少し熱い。ずいぶんと長い間物思いに耽っていたらしい。

「疲れたかい?」

「いえ……少し考え事を。そういえば、こうしてレニー様と馬車に乗っていると、一緒にブラシェール伯爵領へ行った時のことを思い出しますね」

まだ一年も経っていないはずなのに、ずっと昔のことのように思える。……色んなことがありすぎて。

「あの時は……すまなかった」

レニー様はそう言って大きな体を背を丸めて少しだけ小さくしてみせた。

「フフフッ。お互い様です。あの時は私の態度も褒められたものではありませんでしたから」

レニー様が私の顔をジッと見つめる。

「君には本当に感謝している。あの時君が本気でブラシェール伯爵領のことを考えてくれていると分かって、目が覚めた思いだった。覚悟の無かった僕を一人前の── いや、それは言い過ぎかな。とにかく領主としての自覚を持たせてくれた。──ありがとう」

そう言ってレニー様は膝の上に置いた私の手を握りしめた。

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