明るいパーティー(家族)計画!勇者になれなかった僕は…

にゃも

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尾行失敗!?

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  ユウキは一定の距離を保って薬売りの怪しげな男を追っていた。

  海の男達のまとめ役である男の家、街一番の服屋、そして普通の民家を一件、そしてやはりと言うべきかミミルが働いているマッサージ店の隣の建物へと入っていったのだ。

 『妹を助けて下さい!』

  ミミルの言葉を思い出す。
  マッサージ店の皆の協力のお陰でバレてないとはいえ、いつまでもつかわからない。

  なぜなら、あのフードの男が教会に通じている薬売りであり、同時にマッサージ店の女達を教会へと送っているまとめ役の建物の主なのだという。
 
 『本人が滅多に店に顔を出さないけど実は隣の店はオレがオーナーだと言ってました。妹は目が不自由で働けないのでと話をしたら、同じ建物にいるから面倒を見てあげようって……妹に目に見えなくても大丈夫な仕事を働く気があれば与えようと言ってくれてました。知らない人から声をかけられるだけで怖がるのでと言って先延ばしにして頂きましたが……優しい人だと思ってたのに、毒を撒いている人だったなんて』

 働いて出た給与の部分から妹の食費や家賃も引くからと言っていたという事で利益があるうちは大丈夫だろうかが……。

  いや、正規の方法ではなく賄賂で教会へマッサージ店の女を流していた男だ。そんな正体の男が大丈夫なわけないだろう。

 気分次第ではあの薬を飲ませ病状がといって、どこかに売り飛ばさないとも限らない。

  ミミルの妹をなんとか連れ出す方法も考えておかなければならない。

  「よう!」

  「うわっ!?」

   声をかけられ反射的に通りに出てしまう。

  「何驚いてるんだ?ユウキ」

   現れたのはブラッドである。

  「何でここに?」

  「なんでって……それはあれだ!オレ様の……(嫁さんを)」

  「え?なんだって?」

  こんな所で上半身全裸の男が何を恥ずかしがっているのだか……。

  とにかく、ここにいるのは不味い。 
 
  「ブラッドさんは奥さんを迎えに?」

  「お、奥さんは気がはやいって。そりゃー、秒読みだがよ。でも、そうかお前にはそう見えるか!」

  バンバンッと背を叩くブラッドにこんな所で目立ちたくないのにと思うユウキはマッサージ店に逃げ込むことにする。

  「オレ、あの店に用があるから!」

  「そうなのか?オレの嫁も……」

  「嫁はカルメンさんとこに居ますよ!」

  「ん?ああ、そういやそんな事言ってたな。ついつい癖で寄っちゃうんだよな」

   どんだけ常連だったんだこの人。ついついで寄るような場所では決してない裏路地のはずなのだが。

  「ちなみにオレ様の嫁が辞めたらナンバーワンはハミルトンって子だ。テクニックはナンバーワンだぞ!指名してみろ」

 親指を立ててカルメンの元酒場の方面へ去っていくブラッド。
 途中で花束なんぞを買っている。

 ……いい人なんだろうけど。

  マッサージ店の前まで歩いていき周りを見渡す。

  (暗いな……勝手に入る理由にはいかないしな)

 対面の壁まで下がり窓の数を数える。高さ的に三階、部屋は各階に三つくらいだろうか?
 幅的に対面って形では無くアパートみたいな作りになっている気がする。
 
  バタンッ

 ユウキはこの音に気づかなかった。正確には微かに聞こえたが気にしなかったのだ。

  パリンッ!!

  「ぐっ!」

  突如目の前が暗くなり地面に倒れふす。

  (……血?)

  倒れた横には植木の鉢が割れていた。

  上から偶然落ちてきたのだろうか?

  ユウキは薄れていく意識の中で調べていた階段からネズミ顔の男が降りて来て、窓の上になにやらサインを送っているのを確認する。
 
  (くそ、バレてたのか……)

  

  「あー……カルメンとこにいた穴兄弟?」

  ネズミ顔の男は予想と違う歳のユウキの顔を足で動かしながら確かめる。

  「騎士団か他の組織の奴かと思ったんだが……武器も持たない普通のガキがなんでオレをつけてくる?」

  聞かれた窓から鉢を落とした大男がピンクのマッサージ店の看板を指さす。

  「さぁ、でもうちの看板見たあとボスの家の前をウロウロしたり窓を見たりしてましたんで」

  ピンクの看板を指差した後、窓を指差す。

  「オレに話があったのか……」

  「いや、どうでしょう。冒険者ギルドのブラッドが何と何か話してましたが、微かにハミルトンって名前が聞こえましたが」

 「なに?うちのナンバーワンじゃねーか。うちの常連だったアイツが普通に勧めてやってただけの客じゃねーか?」

  二人はユウキを見下ろしどうするか悩む。
 
  「……入りたいけどって言う若さゆえの店前でウロウロって奴じゃないのか?周りに目がないかキョロキョロしながら人がいないタイミングって奴だ。身に覚えがあるだろう?お前も」

  「オレは普通に入れる」

  まぁ、そうか。そんな頭良くないもんな。とネズミ顔の男は言うと頭をかく、仕方がねぇー。

  「やっちまったもんは仕方がねぇー。けど、コイツいい顔してるよな。殺すのは惜しいか……」

  ネズミ顔の男は、よしっ!と何かを決めると大男に指示を出す。

  「予定と違うがそいつを教会に連れていく。樽が二つになるが持てるか?」

  「問題ない」

  ならばとユウキを担いで今日の献上品と共に樽に入れ持って行くように指示を出す。

  「あの方の趣味ではなくとも、売れる方を紹介して下さるかもしれないからな。ま、男か女か若いか年寄りか……誰に使われるかは知らんがな」
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