明るいパーティー(家族)計画!勇者になれなかった僕は…

にゃも

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勇者だけがチートじゃない。始まりの日。

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持っている者にとってはそれは当たり前の事かもしれないが、持っていない者にとってはそれは羨望のそして嫉妬の対象である。

ない者がある者を超そうとするならば、相手の得意な所で勝負するのではなく、ある者にとって出来ない事やあるからこそやらない短所を突き、伸ばし超える事こそが戦う力となる。

ここに、それを信じ努力し続けてきた少年がいる。

全てを奪われ、全てを二番手として生きてきた少年。

その少年が二番手として、時に三番手として裏で暗躍する物語である。

これは決して伝説の勇者の物語ではない。

一人の少年の自由気ままな異世界生活と明るく楽しい家族と欲望と復讐の物語である。

己の為に行動した結果として、結果を知った第三者が歴史を美化し改ざんするのは世の常だ。

英雄色を好む。表の歴史の背景に黒歴史あり。

勝者が全てであり、成した者が栄光を手にする。

自分達の都合のいい解釈をし助けた覚えのない者にまで崇められるのは助けられたと勘違いする人間のご都合なので諦めるしかない。

そんな賢者と勇者達の物語。

「子供の知らない本当の英雄達の物語を話そうか。最後に残された私の生涯の最後の思い出語り。」

老婆は懐かしき日々を思い出すかのような瞳でその本を閉じ、ゆっくりと思い出を語り始めるのだった。


 「キャー!ナイスシュート!逆転よ!」

 騒ぐ観客。

 ビーッ

 試合終了の合図が黄色い声援により聞きずらいが辛うじて勝った俺達は中央サークルに整列し礼をする。

 「今日もナイスパス!」

 「俺にできるのはこれくらいだから。」

 爽やかな笑顔で肩を叩いてきた後、右手を高らかに上げる少年。

 「キャーっ!」

 「玲くーん!」

 レイ君と呼ばれた少年は熱狂的なファン達に対して実に爽やかな笑顔を振りまいている。キラリと光る白い歯だが、実は黒い光が混じっているを知っているのは俺やマネージャーくらいであろう。

 そう、俺は絵にかいたような主人公ではなく。コイツの好感度アップに使われている便利な幼馴染である。運動神経抜群でありイケメンでありモデルもしている背の高い青年風のレイと違い、俺は少し背が小さく中性的にみられる事が多い。
 高校三年生なのだから少年よりも青年で見られたいが、いつも横にいるコイツのせいでより幼さが目立つようである。

 「お疲れ様ユウキ。ナイスパスだったよ。」

 「…入れたのはレイだぞ。行ってやれよ。」

 「…あ、うん。…そうだね。」

 マネージャーからタオルとドリンクを貰うだけ貰いその横を通り過ぎる。
 微かに震えているのは俺の冷たい態度に怒っているからだろうか。

 (そんなわけがあるはずないな。どうでもいい。)

 俺は次の試合の人たちが使うであろうベンチを開ける作業をし始める。

 「先輩、ここは僕たちがやりますから。レギュラーメンバーは先にアップをしてた場所で反省会をするそうですので。」

 「わかった。レイにも声をかけといてくれ。」

 「…嫌なやつですよね。僕苦手なんですよ。声かけなきゃダメですか?」

 「はは、まあそういうなよ。アイツはお前の先輩なんだしエースなんだからさ。」

 俺はチラリとレイを見るとマネージャーと目が合った。

 「…ッ!」

 (見るんじゃなかった。)

 俺はさっさと体育館を後にするのだった。


****************

 「見つけた!」

 確かに勇者の素質がある者がそこにいる。
 ようやく見つけたのは二つの魂。

 (素質がある人間が近くに二人もいるなんて…)

 微かに感じられる魂の波動。けれどもそれはどちらが我々の求めている人材なのか判断する事ができない。

 少女は自分の血を床に書かれた魔法陣に少しづつ量を増やし捧げていく。

 血が落ちるにつれて平面であるはずの図形が変化を起こしていく。血の滴った場所から少しずつ光の線が魔法陣を沿うようにして走り術の完成へと向かっていく。

 少女は呪文を唱えながら召喚される者に対する条件を確認する。

 一つ、今の世界に未練のない者
 二つ、適合者(魔法の素質がある者又は勇者かその祝福を受けている者)
 三つ、未成人(18歳未満)である事

 その対象者とパスを繋げていく。
 チャンスは一度だけ。一方通行の召喚の儀式。

 (この世界を救ってください勇者様。私のすべてを貴方様に捧げます。)

 「さあ、頼んだぞ!フレミアよ。魔王を倒すためにも勇者を召喚するのだ!」

 王の声が聞こえる。道具としてしか見られず、今まで一度たりとも呼ばれた事のない名前を父に呼ばれた。父に期待をされている。それだけでも呪いを受ける意味はあるに違いない。フレミアはそう思う事にしギリギリまで自身の血を注ぎ術を完成させるのだった。

 (もう一人には申し訳ないけれども我々の世界の危機を救うため。どちらか判断できない以上、犠牲になってもらうしかないわね。)

 罪は呪いとして受けよう。異世界の人間とはいえ今の生活を無理矢理に終わらせてしまうその事に対しての罪の意識はある。…が、迷いはない。

 「いきます。皆さん下がっていてください!勇者を召喚致します!」
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