ハイドランジアの花束

ashiro

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教室

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家も学校も居場所なんてない。
家を出たは良いものの、行くあては思いつかない。居心地の良い場所なんて存在しない。

特に学校は地獄だ。
価値観の全く異なる人間を狭い空間に押し込められる場所。結果、弱者と強者がその場の雰囲気で決まり、弱いと認定されれば攻撃を受ける。強者による暇つぶしの巣窟だ。


自分は弱者と認定され、クラスである意味目立ち、ある意味影のない存在として扱われている。世間ではいじめというものになるのだろう。教師もきっと知っているだろうが、見て見ぬふりをしている。
だから、学校に助けを求めることは、余計に自分に対して傷をつけるだけだ。



始まりは、同性の些細な一言だった。多分、何も考えずに発した言葉だったと思う。


「お前、名前だけじゃなくて、女みてーな体してるよなぁ~」
「ほんとは女なんじゃね笑確認しよーぜ」


帰り支度をしていた放課後の教室。クラスで一軍と呼ばれるような男子が5人ほどにやにやしながら近寄ってくる。


「…やめろ……」


母親譲りの華奢な体型、ストレートの黒髪、長いまつ毛、白い肌。女子には羨ましがられるけれど、同性からは馬鹿にされる容姿。偶然こう生まれただけで、自分が何かをしたわけでは無い。

必死に手を振り払っても、纏わりつくみたいに、無理やり壁に追い詰められる。

周りのクラスメイトも、見て見ぬふりをしつつ、興味本位な視線だけはじっとりとこちらに向けている。
そういう視線が一番嫌いだ。当事者にはならずに、何のダメージも受けずに、他人の愚かな姿を目に映して、結局は自分たちの欲を満たしてるのだろう。

誰一人、助けてくれないんだ。


「はーい、抵抗すんなよー」
「ほっそ笑」


気持ち悪い。
力が足りない。
自分のせい?もっと強くいればよかった?明るく冗談のように振る舞えばいいのか?
こういうときですら、自分にも非があるんじゃないかと疑心暗鬼になる。
弱い人間の典型だ。

抵抗も虚しく、手足を壁に押さえつけられ、下着ごとズボンを勢いよく下げられる。


「ほんとにやめろって!!やめっ……お願いだから」

「ざんねーん、ついてんじゃん笑でもこいつなら男でもいけるかも」
「きっしょ笑」
「証拠写真撮ろーぜ」


気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
そんな気持ち悪い目で見るな。

一刻も早く、この地獄が終わってほしいと願うことしかできない自分が情けない。けれど、抵抗は無謀だと感じるほど集団の力は恐ろしいのだ。報復を防ぐには大人しくするのが最も安全だと分かっている。
これで終わればいいと思っていた。
だが、猿みたいな浅はかな脳みその高校生は、限度というものを考えない。


「…もういいだろ……」

「舐めろよ」

「……は?」


パシンッと強い音が鳴ったあと、すぐに左頬に鈍い痛みが走る。
唇が切れて、血の味がする。
髪の毛を頭ごと掴まれ、壁に打ちつけられた。


「は、じゃねーよ!どんな口聞いてんのお前ごときが。俺の舐めさせてやるよっつってんの」

「ヒロヤー、あんまり可愛い顔に傷つけんなよ~笑興奮できなくなるじゃん」


鈍い痛みと憎悪と恐怖で声が出なくなり、身体が強張る。

無理矢理口の中に指を入れられ、反射でえずいてしまう。さっき流れた血が唾液と一緒に床に垂れる。何が起こっているのか、どうすればいいのか、考えようとするも、思考が一時停止したその瞬間、咥内にその男のものをねじ込められた。喉まで届くそれは気管を強く圧迫して、あまりの苦しさで涙が出る。


「んぐっ……、う……」

「あー、口ん中あったか」

「ちょ!まじでフェラやってんだけど、うける」

「ヒロヤ気持ちいー?」

「意外といけるわ」


男はそのものを自分の咥内に出し入れする。腰の動きが慣れていて、自分は、一時の快楽のための使い捨ての道具に過ぎないのだと感じてより惨めになった。別にこの男の特別になりたいなんて心底思わないが。
動物的な動きとともに、男の匂いが鼻腔に充満し、舌が性器の形と熱を感じとって、またえずいてしまう。


「おぇっ……んぁ……」


無意識に口が閉じかけて、別の男に奥歯を開くよう固定される。


「絶対歯立てんじゃねーぞ」

「う……っぐ……」


段々と男のものが、芯を持ち、熱く、硬くなっていくのを感じる。何か自分の唾液とは異なる味を舌に感じ、吐き気が止まらない。
同性にも欲情する人がいるとは知っているが、それとは違う。自分自身に、というより、目の前の表情を変える性処理の道具に興奮する、薄っぺらいものだ。この行為だって、相手からしたら都合がよかっただけで、止めようとしない周りのクラスメイトにとってもどうでもいいことなんだろう。

誰か、先生を呼ぶだけでいいのに。

自分は助ける価値すら無い存在なのだと、思い知らされる。

今やられていることより、そっちの方が辛くて、恥ずかしくて、悲しい。


「ユイちゃん、泣かないでー」

「お前馬鹿にしてんだろ笑ってか、泣き顔もそそるんだけど」

「ヒロヤのちんこでかくなってる笑」


苦しい。
腰の動きがどんどん早くなっていき、もう少しだろうかと終わりを待つ。同じ男だから、どこをどうすれば達しやすいか分かる。ユラユラとした記憶の中で、この際、いかに早く終わらせるかを考えた方がいいと思った。

不本意だが、舌を使って露わになった尖端を刺激する。刺激すればするほど粘液が溢れ出て、相手が感じているのが分かる。こんなの気持ち悪くないわけが無い。

だけど、こうするしかないじゃないか。
誰も助けてくれる人はいないのだから。

くびれた部分を舌で強めに擦ると、腰がピクッと震えた。反応した所を執拗に責める。圧倒的に虐げられているこの状況でも、馬を人参で釣るように、目の前に快楽を提供して錯乱させることくらいはできる。


「やばい…、いきそ」

「出しちゃえ」

「なんかこいつも気持ち良さそうじゃん。変態が」


なんだ、最初から強くやっときゃ良かった。
相手の弱い所をつくのは、気持ちがいい。最低な人間に対しては。


「出る」


男は達したようで、目を瞑って、咥内に生温かいどろどろとしたものを吐き出した。腰はビクビクと震えて、最後に念押しのように一突きされた。咥内から子どもが産まれるわけじゃないのに、子種を一滴残らず植え付けようとする動物的な本能が見える。
達する瞬間、目が合って、その瞬間だけはこいつも自分と同じ男で、人間なのだと、謎に二人だけの時間を共有をした気持ちになる。


「ユイちゃん、口元から溢れ出てるよ~」

「飲み込めよ、吐き出すなよ」


今度は、他の男に力ずくで口を閉ざされ、無理矢理飲み込む。苦くて、少し酸っぱくて、喉に残ったものが気持ち悪い。猛烈な吐き気で涙が出る。


「待って、こいつ勃ってんだけど!!」


……え?
そういえば、制服のズボンは下げられたままで……、視点を下に移すと、そこには自分のものが刺激を待ち侘びるように上を向いていた。


「え、やば!無理矢理やられて興奮してんの!」

「ドMやん」

「うける笑みんなで抜いてあげようぜ!」



そこからが本当の地獄だった。

こんな狂った相手に嬉んで反応してしまった自分の身体が、信じられない。

保健の授業だとか訳の分からないことを言って、机の上に全裸で仰向けに寝かされた。手足は、男が指名したクラスメイトに押さえられた。その中には、女子もいた。全員、話したことのないただのクラスメイト。
騒ぎを聞き、他のクラスからもギャラリーが集まっていた。

足は膝を立てて開かされ、一糸纏わぬ姿とはこういうものだと、意志が無くなった脳で事実を受けとめた。自分でも何を考えればいいのか、訳が分からなくなっていた。ただ、こんな状況にも関わらず、平坦な身体には元気よくそそり立つものがあり、自分の身体もおかしいということを認識した。


「じゃあ~、まず部位から説明しまーす」

「しんど笑」

「私初めてこんな近くで見るんだけど」

「先生来たらやばくない……?」

「お前廊下見張っとけ」

「あ、その前に皮被ってるから剥こっか!」

「剥いたことないんじゃね?完全に被ってるし」


先端まで覆い被さっている皮を、根元に向かって躊躇なくずり下げられる。


「あっっ、痛っ……」


真っ赤な尖端が顔を出した瞬間、突き刺さるような痛みとともに、ピュッと真っ白な液体が飛んだ。
痛い、熱い、気持ちいい、気持ち悪い。ぐちゃぐちゃに絡まった糸屑の中から、快楽という糸口を引っ張り出して、その気持ちよさに縋る。惨めな状況下で味わう快楽は、別の意味で気持ちが昂り、興奮してしまうのだろう。
自分は、そういう気持ち悪い人種なのだ。と、今知った。

はあはあ、と息をしながら、ぼんやりとした意識で、天井の丸の並びを眺める。

この異常な遊びを囲む多数の部外者は、クズだ。天井にあけられたグリッドのように、皆同じ顔をして、お行儀よく並んで、何もしない。何も考えない。
目の前の、哀れな人間にさえ、その列をはみ出して手を差し伸べるなんてことはしない。


「え、今のでイったの!やっば!!!」

「まだ説明もしてないのに、悪い子だねー」

「先生!お仕置きが必要だと思います!」

「これ早漏って言うのー?」


普段自分ですることもほとんどない、敏感なそこは、急に他人に触れられた強い刺激に耐えることなどできなかった。

時間差で、俯瞰的に自身の現状を目の当たりにすると、とたんに苦しさが湧き上がってきた。ぷすぷすと穴を開けられていた心臓は、もういいよという合図とともに、無惨にも切り裂かれ、だらだらと血が流れる。

皆が見ている前で。自分は。

しんどい。
死にたい。
しんどい。
死にたい。
しんどい。
死にたい。


「ヒロヤの番じゃない?お仕置きしてやってよ」


最悪の元凶となった男は、少し離れた場所で、黙って見ている。

もう涙腺は愚か、身体と感情の制御がままならなくなった自分は、裸体を大勢のギャラリーに晒したまま、一人泣きじゃくっていた。
泣いて解決するものなど、何もないことは分かっている。
それでも、とめどなく溢れる涙で、皆の顔が歪んでぼやけて、このまま存在ごと消えられたらいいのにと思った。


「……俺、もう帰るわ。飽きた」


真顔でその場を去る男をぼやけた目で追うと、さっき自分の咥内で達した瞬間の男の顔を思い出した。

佐野紘埜《さのひろや》は、自分の真後ろの席にいる。目立つグループに属しているが、口数は少ない。
それでも、自然と人が群がる。誰にも見下されない圧がある。そのような人間は、大体学年に一人や二人いるものだ。そいつの気分次第の一言で、有無を言わさず誰かが犠牲になるのだ。その対象になることを避けるために、皆仮面を被り、無意志の共犯者となる。
今日をもって最下民の奴隷となることが決定した自分にとって、最も憎むべき相手はサノヒロヤなのであるが、傍観者に徹する人々も心底軽蔑する。


「ヒロヤが帰るなら俺も帰るわー」

「じゃあ、今日の授業はここまで!」

「先生~、次の授業はいつですか!」


そこから、週に一回、ヒロヤの気まぐれで保健の授業という名の性的な嫌がらせが始まった。
潮を吹けるようになるまで無理矢理弄られる、バイブを当てられ続ける、後ろの穴に入れられる……、この世の全ての変態がやることは網羅したと思う。

ヒロヤがやると言ったら始まりだ。気分ではないと言うと、その日は何も無い。物を隠されたりだとか陰湿な嫌がらせは特になかった。

自分は、ただただ、ヒロヤという絶対的な存在の判断によって使われる性処理道具であり、同時に一般市民の見世物となったわけだ。

ギャラリーがいればいるほど、味方がいないことを知る。

自分も触れたくない被害内容で、誰にも助けを求められない。


こんなことが一年ほど続いていた。



この間は、ブジーという凹凸がついた細長い棒を尿道に入れるという「授業」だった。

もちろん、やったことがない。自分のものに異物を挿し込むなんて痛いに決まっているし、これを考案した人を恨むしかない。

……気がついたら、人を恨んでばかりの嫌な人間になっていた。でも、しょうがないよな。誰一人助けてくれる人はいなくて、ひとりぼっちで、嫌なことを強要されて、他人に見られて。誰かに優しくしようなんて、思える瞬間も無くなってしまった。


「消毒が大事らしいよ」

「うわっ、これが入んの?いたそー」

「これはヒロヤがやるだろ?……なんかさ、失敗したら俺の責任みたいになりそうだし……」

「俺も……これはちょっとパス」

「当たり前だろ、俺がやる」


なんでこうなったんだろう。この男に、自分は何か気に触ることでもしただろうか。
前後の席だけど、特に話したこともない、関わったこともない。
手袋をはめた手に光る銀色のブジーは、教室の蛍光灯のもとで鋭さが際立つ。いたって真剣な顔で、ヒロヤは行為の準備を進めている。

銀髪で襟足がくすんだ藍色、がたいは良い方ではない。いつもマスクをつけているから正直顔はよく分からない。学校の成績は良く、大体学年一位か二位にいる。その気怠げな雰囲気、見かけとのギャップ、絶対的な存在感によって、異性からは密かに人気があるらしい。こんな非人道的なことを主導してやっていても、だ。

細長い指先が医療器具を繊細に扱うのだが、それは手慣れていて、微かな違和感を感じた。

どうして自分なのだろう。
どうしてこうなったのだろう。
どうしてこの人はこんなことをするのだろう。


「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢しろよ」


どうして?


「一回勃たせた方がいいらしいな」


どうして?


「あんまりやるとすぐ出ちゃうから、ほどほどにな笑」


どうして?


「ほら、ゆいちゃん敏感だからすぐ反応しちゃうから~笑」


どうして?


「」



死のうと思った。
これ以上、生きていても、良いことが無い。
別に自分が存在しなくても、世界は回る。逆に、いなくなった方がいいんじゃないか。


芯を持ってきたところで、先端にローションを垂らされる。冷たさと刺激に反応してしまい、ピクっと腰が動く。大勢にこんな姿を晒すなんて惨めすぎて、もはや感情を持たない涙が頬を伝う。


「ゆいちゃん、我慢しな~頑張れ~」


皮を剥かれ、出てきた先端の孔は何故かその凶器を待ち侘びるように、パクパクと開いていた。


「期待してんじゃん笑」

「動くなよ」


凶器の先端が、自分の小さな孔に入り込む。1センチほど入っただろうか。違和感と排尿しそうな感覚で気持ち悪い。
そのまま押し進めたところで、突然、鋭い痛みが尿道の中を走った。


「痛いっっ……」

「うわぁー、痛そ!」

「痛いって言いながら勃ってんじゃん笑」

「やめて、これ以上はっ……」


懇願も無視され、凶器は勢いよく奥まで突き抜けた。


「あっ、あぁっ、いだい……あっ……」


あまりに痛すぎて、涙が止まらない。自分のものもさすがの痛みで少し柔らかくなっていた。


「なぁ、ヒロヤ、さすがにやばくね?」

「病院行くとかなったら面倒やん」


こんな状況でも男は手を止めない。鬼畜とはこういう人間のことを言うのだと思った。


「こっからだから」


ぼそっと自分だけに聞こえるように、呟いた。
そして、さらに奥に進んだとき、ギュンとなにかに当たった感覚があった。


「あっ?!ああっ」


それがあまりに気持ち良くて、思わず一旦引いた凶器に自ら自分のものを押し進める。


「あっ、あっ、んっ……」


男はその気持ち良いところに当たるように、抜き差しをする。先程までの痛みはまだ残っているが、それを超える快感に抗えない。


「ん……っ、あ、」

「やば、喘いでんだけど笑急に気持ち良くなっちゃったー?」


でも、その快感は凶器によって堰き止められているため、吐き出すことができない。ただただ気持ちよかったのが、出せない苦しさに変わっていく。


「ちんこパンパンじゃん笑」

「出したくても出せないよな~」

「んぁ……っ、出したい……」


皆に聞こえないように、男に耳打ちされる。


「僕の精子を出させてください、だろ」


男は一切笑っていない。
どんな感情でこんなに人を苦しめるんだろう。


「早く言えよ。言わないとずっとこのままだかんな」


出したくて、出したくて、早く快楽の頂点に辿り着きたくて、それが見せしめの辛さを上回ってしまった。


「……僕の、精子を…出させてください」


「やっば!笑なに?めっちゃうけんだけど!」
「完全にヒロヤの奴隷だな」
「変態ユイちゃん、気持ちよくさせてあげよーぜ笑」


「カウントダウンしねー?」
「いいじゃん!笑」

「いくよー!さーん!にー!いーち!」


勢いよく引き抜かれた瞬間、白い液体がダラダラと溢れ出す。


「あっ……ああ……」


気持ちいい。あまりの気持ちよさに、もうギャラリーの目など入っていなかった。全身が痙攣したようにビクビクと動いている。


「はーい、今日はここまで!ユイちゃん自分のものは自分で片付けてね!」

「めっちゃ気持ち良さそう笑」

「俺も自分でやってみよっかなー笑」

「ヒロヤも帰ろーぜ!」

「部室に忘れ物したから先帰ってて」

「りょーかい、じゃーな!」


男と二人きりの空間になって、快楽で埋まっていた脳が冷酷な現実に引き戻される。

部室に忘れ物なんて嘘だろう。
今度は何をされるんだろう。ギャラリーがいないだけマシか。
茫然とした頭で天井を見つめる。

すると、男は突然マスクを外して、顔を近づけてきた。
整った顔立ちからは想像できないことを、この男は平気でする。
長いまつ毛が触れる距離まで来たとき、低い声が耳に響く。


「お前さ、逃げられると思うなよ。お前は一生俺のもんだから」


そして、唇にそっと何かが触れた。

キスをされた。

この最低で最悪で残虐な男に。






自然と学校とは反対方向に歩いていた。

サノヒロヤはあれ以来、キスをしてくることはなかった。別にして欲しいわけではないし、むしろ気持ち悪くて、あの後何度も唇を洗った。ゴシゴシと拭っても消えない、悪夢のような感覚は今でも残っている。
その後も、いつも通り、過酷な嫌がらせは続いた。

男は何を考えていたのか分からない。



でも、もういいのだ。家からも学校からも逃げることに決めた。
苦しみから逃げることは、悪いことじゃないと、誰かが言っていた。

現実、お金が無いから、逃げると言っても、死ぬか、他人に頼るかしかないが。
スマホも充電に限りがある。手は血だらけで警察に見つかったら厄介なことになるだろう。


公園で手を洗い、とにかく歩き続けた。スマホが切れるのを避けるため、ナビはつけずに夕方になるまで歩き続けた。
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