Lyra

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序章

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  春、和やかな空気が影を潜め、涼やかでそれでいてほのかに暖かい夕暮れ。男は一人路を行く。その背中は弱々しく丸まり、時々ふと顔を上げてはまたうつむいて歩いて行く。
「さて、どうしたものか、」
ぼそりと呟いた時、彼の鼻はなにかを感じ取った。短く刈り取られた草ばかりの道が、急に華やぎ、生き生きと輝きだしたような気がした。そしてはっと顔を上げた。すると、そこには、眼が痛くなるように鮮やかな華、華、華。
 男はなんどもよれた袖で目をこすった。しかしその華たちは消えない。幻覚を疑うことを諦めたとき、彼の右腕は無意識のうちに前にのび、一輪の花を抜こうとした、その時ーーーー
 
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