Lyra

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第1章

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「なぁ、さくら、出逢ってもう3年だろう?だからさ、もうそろそろ」
「どういうこと?」
「わかってるんだろ?」
「ちゃんと言ってくれなきゃわかりませーん」
 男は深くため息をついた。女は無邪気なところが良い点でもあり悪い点でもある、男はそこに惚れたのだが、今だけはその無邪気さに困り果てていた。男の名は八雲。彼の言う通り、この二人は出逢ってから三年、ちょうど今日がその記念日だ。八雲はさくらに結婚の申し出をしようと思っているのだが、どうもその勇気が出ない。
「ほら八雲さん、なにが言いたいの?」
「だから、だから、その…」
「ほら言っておしまいよ!私からも話があるんだから」
「じゃあ、さくらが先に話すといい」
八雲が投げやりにそう言うとさくらは嬉しそうに大きく口角をあげた。彼はそれに嫌な予感を覚え、止めようとしたが、
「私たち、結婚しません?」
もう時はすでに遅く、一番言いたいことを言われてしまった。
「・・・そうだな、そうしよう、結婚しようじゃないか」
八雲は自分もそれを言おうとしていたと言うことを悟られまいと平静を装った。
「ふふふっ」
「なんだ」
「じゃあ、八雲さんのお話をどうぞ?」
いたずらっぽくいうさくらの美しさに八雲は一瞬たった腹をすぐに納めてしまった。
「またしてやられた」
悔しそうにいう彼にますます嬉しそうな微笑みを浮かべる。彼はよくこうしてやり込められてしまうのだ。
「さくら、結婚の話は、本当だろうね?本当に、僕と結婚してくれるんだね?」
「もちろんよ、だ・ん・な・さ・ま!」
「ふーーっ・・・一旦真面目に話そう」
「はーい・・・」
「僕は結婚したらこの村に越してこようと思ってるんだ。君の生まれ育ったこの村で君と一緒に暮らしたいと思ってる。義母さんもお歳だし、3人でいればなにかと安心なんじゃないかな」
さっきまでの威勢とは一転、さくらは黙りこくってしまった。
 さくらの村は小さな貧しいところだった。山が美しく、昔からの風習で何本かの木の幹に赤い帯がまかれている。そして何より、この村には美しい人が多いのだ。華やかな美しさから慎ましく匂い立つような美しさまで、男女問わず兎に角美形ぞろいの村だ。と言っても全員がそう美しいわけではない。彼女の母親はいたって一般的な顔立ちだ。美しいのは子供達と、大人のうちの半分くらいである。外の世界とは切り離され、人々は村の中だけで慎ましく暮らしていた。八雲はこの村の生まれではなかったから最初は物珍らしがられたが、三年も経った今は、村に住んではいないものの、もうその一員のようなものだった。
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