おっさん賢者の、ハーレム居酒屋繁忙記!

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第1話 おっさんのもう一つの現実は、チートでハーレム持ちの賢者。

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 居酒屋のバイトを終えて帰宅したのは、夜中の二時頃。ポストに、不在届を見つけた。差出人に心当たりはなかったけど、昼頃届くようにWEBサービスにて登録。

 俺の城は、八畳の1Kアパート。一応風呂とトイレは別だ。街中ではあるが、ボロいので家賃は安い。発泡酒を飲みつつ、コンビニ弁当を食べる。一人暮らしで誰かを呼ぶ事も無いので、部屋は散らかり放題。脱ぎ捨てた服や、ゴミが散乱している。いわゆる汚部屋ってやつです。片付けたいけど、気力が出ないんだよなぁ。

 食事と風呂を済ませて睡眠。惰眠を貪る。宅配業者に起こされ、荷物を受け取った。

 差出人は、株式会社シャングリラ。やはり一切心当たりが無い。

「まさか、爆弾って事もないだろう」

 そう独りごちながら、小包を開封する。中には、真新しいヘッドセットが入っていた。説明書によると、どうやらこれのみでプレイが可能な「VRゲーム」のようだ。また、モニターに当選した旨も書かれていた。

 ヘッドセットを頭に装着して、布団などに横になる。それでゲーム開始の準備は完了との事。

「モニターに当選......? 応募した覚え、ないんだけどな」

 怪しい。だがそれ以上に好奇心を掻き立てられた。金を請求されたら、警察に連絡すればいい。試す価値はあるかも知れない。

「やってみるか」

 俺はヘッドセットを装着し、せんべい布団に横になる。

 スイッチを入れると、体の力が抜けていくのがわかった。ヘッドセットから発せられる電磁波が、脳波と同期しているらしい。

 まどろみに包まれる。意識ははっきりしているが、手足の感覚がなくなっている。起きたまま夢を見ているような感覚だった。

 何も見えなくなる。最初は恐怖を感じたが、徐々に慣れていった。

「シャングリラ・オンラインの世界へようこそ」

 美しい声が聞こえた。耳に心地いい。

「あなたはこれから、火星の地下世界へと赴きます。その中にあるいくつかの国の一つ。シャングリラの住人として、これから数多くの冒険をする事になるでしょう。あなたの体となる、アバターを選んで下さい」

 目の前に突然、人の姿が見えた。姿見を見ているかのように、至近距離だ。人物の右上には、名前や性別、生い立ちや性格が表示されている。

 美しい映像だった。CGだとは思うけど、実写にしか見えない。本当に鏡を見ながら、自分の姿を確認している錯覚に陥る。

 今俺の目の前にいるのは男性。ローガンと言う屈強な戦士だ。

 左上には、その人物の能力が表示されている。いわゆるステータスとスキルだ。ステータスは力、知恵、魔力、生命力、素早さ、運の強さ、である。

 ローガンは力と生命力が異常に高い。スキルもパワータイプで、強そうだ。

 でも、俺が求めているのはこういうキャラじゃない。俺はMMORPGをプレイする場合、基本的に魔法職を選択する事が多い。

 何故って? それは魔法というものに憧れているからだ。30歳まで童貞なら魔法使いになれるという伝説は、眉唾だった。俺は彼女いない歴イコール年齢の、ただのしがないフリーターでしかない。

 と言うわけで、ローガンはパスだ。魔法職のアバターを探してみよう。違うアバターを見ようと考えるだけで、勝手に切り替わっていく。

 しかし、色々いるな。公爵令嬢の武術家や、露出狂のシスターなんかもいるぞ。VRで女性になりきってみるのも面白そうだけど、今回はパスだ。

 出来れば万能の魔法職である、賢者とか理想だよね。

 賢者、賢者っと。

 おっ、いたいた。「大賢者ファーナス・ラー」。

 顔もイケメンで背も高い。年齢は20歳。若くして大賢者ってすごいな。

 肩書きや容姿も素晴らしいが、注目すべきはそのスキル。なんと、全ての魔法を最初から習得済みだ。使用する魔法に関わると言う「守護精霊」は、「精霊王ロロ・マギア」だそうだ。王って響き、いいよね。

 いやー、いいねー! ちょっと反則的に強すぎるけど、いいじゃない! こういうキャラを探してたんですよ俺は!これにします!

「大賢者ファーナス・ラーですね。かしこまりました。それでは、あなたは今から彼となります。シャングリラにおいての人生が、より良いものになりますように。では、いってらっしゃいませ」

 目の前のアバターが消え、再び目の前が暗くなった。それと同時に、手足の感覚が蘇る。普通に動かせるみたいだ。どうやら現実に戻ったらしい。

 ん?もう終わり?ゲーム始まってないんですけど......。ああ、モニターだもんな。体験版みたいな感じで、キャラ選択までしか出来ない仕様なのかも知れない。

 少しガッカリしながら、目を開ける。

「え? ここ、どこだよ......」

 どう見ても俺ん家の天井じゃねーぞ。ふと、柔らかい感触が右手に当たる。ん? なんだこれ。すごい素敵な触り心地。

「あん♡ ファーナスさまったらぁ。本当におっぱいがお好きなんですね♡」

 やや上ずった女性の声が聞こえ、俺はドキリとした。声のする方を見ると、黒髪ショートボブの美少女が、妖艶に微笑んでいた。

「私のおっぱい、やっぱり揉みたくなっちゃいます? どうぞ、お好きなだけ揉んで下さい♡」

 少女はクスッと笑って、俺の頰にキスをする。えええ!? なにこれ!? えええ!?

「君は誰だ? どうして私は君と......それにここはどこなんだ?」

 あれ? 普通に喋ってるはずなんだけど、なんか変だぞ。やけに堅苦しい喋り方だ。

「ここは王城にある、賢者様の私室ですよ。私たちは賢者ファーナス様のお世話係。昨晩は夜伽のお相手も致しました♡」

 よ、夜伽!? 俺、39歳にして、ついに脱童貞!? いやいや待て待て。全くその記憶が無いのはどう言う訳だ!?

 それに俺は賢者じゃ......、ん? 

 なんか左手にも柔らかな感触が......クスクスと言う笑い声に誘われ、そちらを見る。栗色の、軽くウエーブがかかった髪がふわりと香る。こちらにも、大きな目をした美少女が!

「私のおっぱいも、また好きなだけ揉んで下さい♡ファーナス様」

 おいおいおいおいー! 両側に美少女! ハーレムかよ!

 うーん、なんだろこの状況。考えられる可能性は二つ。一つ目は、夢を見ている。二つ目は、まだVRゲームの世界にいる。

 美少女たちの感触に、鼻腔をくすぐる彼女たちの香り。あまりにも生々しい。

 よって夢の線は消える。つまりこれは......信じがたいが、ゲームの世界だ。

「すまないが、手鏡を持っていたら貸してくれないか」

 黒髪ショートボブの娘の素肌に触れていた手を掲げ、鏡を要求してみた。

 すると彼女は、俺の手の甲にチュッとキスをし、それから鏡を持たせてくれた。

「ありがとう」

 礼を言って鏡を見る。この顔、間違いない。アバター選択画面で見た「大賢者ファーナス・ラー」の顔だ。

 そう確信したと同時に、俺の脳にファーナスの記憶が流れ込んでくる。どこで生まれ、どこで育ったのか。いかにして、大賢者となり得たのか。

 全てを理解した。と同時に、このシャングリラこそが現実である気もしてきた。もしかしたら、VRゲームをプレイしている筈の現実の俺「室井剛志むろい つよし」の記憶こそが、夢であるとも。

 だが冷静に考えれば、そんな事は有り得ない。辻褄が合わない。俺は現実逃避しそうな自分に、残酷なリアルを受け入れさせた。

 だが、現実がろくでもない分、このゲーム世界では思う存分楽しんでやるぜ!

 二人の美少女の名前も、ファーナスの記憶がインストールされた俺には分かっている。

 黒髪ショートボブがレイン。栗色ウエーブがアーリアだ。俺は彼女達を抱き寄せ、充分にその柔らかさを堪能した。

 しばらく戯れていると、ドアが遠慮がちにノックされた。

「入室を許可する」

 そう声をかけると、ドアがゆっくりと開いた。そしてメイドらしき少女が、静かに入室した。

「大賢者ラー様。国王陛下がお呼びでございます。なんでも、アールアース公爵の領地にダンジョンが出現したそうです」

 ダンジョンが出たか。ならば急がねばなるまい。

「レイン、アーリア。朝食の準備と、着替えの用意だ。五分で支度せよ」

「かしこまりました、ファーナス様♡」

 二人は同時に答え、仕事を開始した。

 ファーナスの記憶によると、ダンジョン作成は魔族の仕業らしい。人族の領地に攻め込む場合、拠点として作成するのだそうだ。

「さてさて。今度は誰が来るかな。魔王でも来てくれれば、少しは張り合いがあるのだがな」

 俺が独り言のように言うと、レインとアーリアが笑う。

「例え魔王でも、ファーナス様には敵いませんよ。それと、今度はダンジョンを壊さないで下さいね。冒険者が生き埋めにでもなったら大変ですから」

 レインがそう言って、ピンと人差し指を立てる。

「そうですよ。ダンジョンには冒険者をおびき寄せる為の宝箱が無数にあるんですから。全部奪って、魔族を財政難に追い込んだ方が面白いです」

 アーリアの言うのはもっともだ。確かに面白そうである。

「なるほどな。ではなるべく、壊さないように進むとしよう」

 俺はどんなパーティ構成にするかを思案しながら、用意された朝食に手をつけた。
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