おっさん賢者の、ハーレム居酒屋繁忙記!

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第4話 おっさん、居酒屋のバイトでチートの片鱗を見せる。

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 目覚めると、見慣れた天井。ボロアパートの一室だ。

「ゲーム、抜けたのか......?」

 せんべい布団の上に、俺は寝ていた。顔に触れ、ヘッドセットを装着していない事に気付く。

「あれ? どこ行ったんだ。無意識のうちに外しちまったかな?」

 テーブルの下や布団の中も探したが、どこを探しても見つからなかった。

 不意に、スマホのアラームが鳴り響く。時刻は16時。そろそろ仕事の時間だ。

 仕方ない。なんかモヤモヤするけど、探すのは帰ってきてからにしよう。

 職場へは徒歩で向かう。俺は車を持っていない。それもあって、職場に近い中心街にアパートを借りているのだ。

 大衆居酒屋「徳兵衛」。昭和レトロな雰囲気が、老若男女問わず人気の繁盛店だ。店内には昭和のCMや歌謡曲、アニメの主題歌の有線が流れる。壁には古い映画のポスターや、ブリキの看板。メニューも懐かしの給食や、駄菓子なんかもあって楽しい。

「おはようございます」

 店に入り、店長に挨拶する。店長は、22歳の若造だ。ちなみにこいつ、めちゃくちゃ態度がでかい。そして性格も悪い。

「やっときたか、おっさん。おめぇ鈍臭ぇんだからさ、もっと早く出勤して来いよ。明日から一時間早く来い。ああ、でもタイムカードはちゃんと出勤時間になってから押せよ。おら、さっさと仕込みやれ」

 タバコをふかしながら、指図する店長。

「え? 今日の仕込みは店長がやる予定でしたよね? だから俺、今日この出勤時間だったんですけど......」

 予想外の指示に、戸惑う俺。反論すると、店長は眉間にしわを寄せた。

「ああ!? なに口答えしちゃってんだおっさんよぉ! 39にもなってアルバイトって、恥ずかしくねぇのかテメェ!雇ってやってるだけでも有り難ぇと思えやゴラ! くだらねぇ事言ってねぇで、とっとと仕事しろや!」

 ドスの効いた声で怒鳴る店長。年下相手に情けないが、俺はすっかり萎縮してしまった。

「す、すいません」

 今から仕込みやっても、多分開店には間に合わない。だけどやらなきゃもっと最悪だ。仕方ない。とにかく出来る限り早く準備をするしかない。

 サービスで出す味噌汁を大鍋で作り、その間に米を炊く。備長炭に火をつけ、炭火の準備をする。

 あとは揚げ物の衣付けや、串焼き用の肉刺し、鉄板焼きのポーションの作成など。

 店長は事務所で、スマホをいじりながらタバコを吸っている。

 俺は怒りが爆発しそうだったが、言うだけ無駄だ。我慢するしかない。

「おはようございます」

 最近入った新人の女の子、山本紫月やまもと しづきちゃんが出勤してきた。彼女はホール担当である。ホール担当はもう一人いて、バイト歴5年の男の子、三谷博之みたに ひろゆき君だ。そろそろ出勤するはずだが、彼は遅刻癖がある。

 今日は平日だからそんなに混まない。俺がドリンクを作り、店長が厨房を一人で担当。ホールが紫月ちゃんと博之君。以上四人で、今日は店を回す手筈である。

「おー、おはよう紫月! 今日も可愛いね! おっぱい揉ませてよ!」

 出勤するなり、店長のセクハラをくらう紫月ちゃん。彼女は小柄でボーイッシュなショートヘア。顔は小動物のような可愛らしさだ。大きな目と、アヒルみたいな口がなんとも魅力的である。

 しかも、めちゃくちゃ巨乳なのである。

「もー、やめてくださいよ店長! いい加減訴えますよ!」

 笑顔でさらりとかわす紫月ちゃん。きっとこの手の輩には慣れているのだろう。

 俺はまだ紫月ちゃんと話した事はない。せいぜい挨拶くらいだ。彼女の年齢は20歳。俺とは親子ほども年が離れている。こんなおっさんに話しかけられたら迷惑だろう。

 けれども、その可愛さについ目を奪われてしまう。今日も紫月ちゃんは元気だ。だけど、なんだか目が赤いように見えた。出勤前に泣いたのだろうか。

 その後も急ピッチで仕込みをこなしていき、どうにか開店に間に合った。

 だが、ホール担当の博之君が、時間になっても来る気配が無い。

 新人の紫月ちゃんだけでホールを回すのは、きついものがある。幸い、現在のお客様は1組だけだ。だがピークタイムまでに出勤してくれないとヤバイ。他にもスタッフはいるのだが、平日は都合が合わない人達ばかりだ。週末には戦力になってくれるのだが......。

 その時店の電話が鳴り、店長が出る。

「ああ!? テメェまじふざけんなよ! はぁ!? もういいわ、お前クビな!」

 そう言って、ガチャンと受話器を叩きつける店長。

「ど、どうしたんですか店長。今の電話、博之君ですよね?」

 俺は猛り狂う店長に、恐る恐る尋ねる。

「どーもこーもねーわ! あいつ、今起きやがったんだってよ! 急いで出勤するって言ったんだがよ!ムカついたからクビにしてやったよ!」

 いやいやいや。そこは我慢してよ......。クビにしちゃったら、もう来ないじゃん。今日の営業どうすんだよマジで......。

 なんて言えるはずもなく。

「おっさんさ、今日ドリンクやりながらホールもやってよ。そうすりゃ、何とかなるだろ。オーダーミスしたら殺すぞ!」

 そんな無茶な......。でもやるしかないか。

 俺はホールでテーブルを拭いている紫月ちゃんに声をかけ、事情を説明した。

「ええ!? 博之さん来ないんですか!? じゃあ頑張らないとですね。室井さん、ドリンクやりながらで大変だと思いますけど、フォローよろしくお願いしますね♡」

 ニッコリ微笑む紫月ちゃん。ぐほぁ! なんて凶悪な可愛さ! しかも俺の名前、覚えてくれてたんだ! すっげー嬉しい!

「うん。任せておいて。頑張ろうね」

 俺は緊張しつつ、そう返した。リアルで女の子と話すのは、俺にとっては貴重な体験である。緊張するなってのは無理な話だ。

「はい! 頑張りましょう!」

 紫月ちゃんは、両手で包み込むように俺の手を握った。

 ぎょえええ! 頭真っ白!

 なんていい子。おじちゃん、好きになっちゃいそう。

 俺は元気百倍になり、テキパキと仕事をこなす。

「11番様、生ビール4丁いただきましたぁー!」

「はいよー! ありがとうございまーす!」

 伝票が出る前にビールを注ぎ始め、伝票出た時にはもう完成。即座にお客様に届ける。

 紫月ちゃんがオーダーを取ってる時にも、他のお客様のお呼びがかかる。そんな時は、俺がダッシュでオーダーを取りに行く。

 俺は燃えていた。初めて人の力になれている、そう感じた。

 体が軽い。いつもなら連発するミスも、今日は一切なかった。徐々に店内は混み合い、満席になる。

「なにやってんだゴラァ!」

 ホールからお客様の怒鳴り声が聞こえる。まずい、紫月ちゃんはクレームには慣れていない筈だ。店長は料理に追われてるから無理だ。俺はダッシュでホールに躍り出る。

 ガタイがでかい強面の若者たちだ。一人が立ち上がり、自分のズボンを指差している。

 状況から察するに、どうやら紫月ちゃんが飲み物をこぼしてしまったようだ。

 俺はスライディング土下座で突っ込み、ひたすら謝る。

「おっさんの土下座なんざ汚ねぇだけだからよ! そんなんじゃ、こっちの気はおさまらねーっての。この姉ちゃん、連れてくわ。あと俺らの会計、タダにしろや。わかってんだろーな、おっさんよ」

 土下座する俺の頭を踏み付け、無銭飲食と紫月ちゃんを要求するDQN野郎。俺の脳内で、何かが切れる音が聞こえた。

「おい。こっちは謝ってんだろうが。たかだか酒がこぼれたぐれぇで、何ガタガタ騒いでんだガキ!」

 思わずそう叫ぶ。俺はDQNの足を掴んだ。そして強引に持ち上げると、奴を席に押し倒す。

 こんな腕力が、俺にあったのか。怒りに震えつつも、どこか冷静な自分がいた。まるで、二つの人格が同時に存在するかのように。

 すると席に座っていた連中が、一斉に立ち上がる。今倒した奴を入れて、5人。自慢じゃないが、俺は殴り合いの喧嘩なんてした事は無い。普通なら怖気ついてしまうだろう。

 だが、俺の今の精神状態は、異常とも言える状態だった。恐怖を全く感じない。生まれて初めて感じた強い怒りで、吹っ切れてしまったのかも知れない。

「おいおい、なんだこいつ。おもしれぇー! なんかめっちゃ怒ってんですけど!?」

「激おこプンプン丸ってかー? こいつ、ボコっちまおうぜ。そんでこいつの目の前でよー、この姉ちゃんと遊ぶのよ。どう? 俺のプレゼンどう?」

「紫月ちゃんつったっけ? めちゃくちゃおっぱいでかいよねー。何カップ? ねぇ、何カップ?」

「なー、このおっさんの目玉に串刺していい? いいよな?」

 好き勝手言ってやがる。紫月ちゃんは困った顔で俺をチラチラと見る。助けを求める目だ。ここは俺が、なんとかしなければ。

「テメェー! 人の足掴んで何してくれてんだゴラァ! 覚悟できてんだろうな!」

 俺の頭を踏んでいたDQNが、今度は俺の襟首を掴んで持ち上げる。

 突然、俺の頭に呪文が浮かんだ。VRで経験した賢者思考が染み付いている。今の状況を切り抜ける魔法が、スッと浮かぶのだ。

恐怖種テラー

 人差し指をDQNの眉間に当て、魔法名を告げる。......はっ。俺は何をやっているんだ。魔法なんか使える訳ないのに。VRゲームがあまりにも現実味を帯びていた為、使えると錯覚してしまったのだろう。いい笑い者だ。

 俺は殴られる覚悟を決めた。だが、男は一向に殴ってこない。それどころか、真っ青な顔でガタガタと震え始めた。

「ひ、ひぃぃっ! 許してください! 許してくださいぃ!」

 DQNは俺の襟から手を離し、土下座をした。そして頭を床に擦り付け、うわごとのように許してくださいと繰り返した。

「お、おい、どうしたんだよカズ。お前らしくねぇぞ。このおっさんに何か言われたのか?」

 仲間の一人がカズと呼ばれたDQNの顔を覗き込む。

「馬鹿野郎! このお方に失礼な事を言うな! おい、お前ら! 会計して帰るぞ!」

 カズは震えながら立ち上がり、何度もペコペコとお辞儀をしながらレジに進んで行った。

「すごい! 室井さん、あのお客さんに何か言ってましたよね! なんて言ったんですか!?」

 キラキラした目で、俺を見上げる紫月ちゃん。

「いや、警察を呼びますよ、って言ったんだ。思った以上に効果があったみたいだね」

  紫月ちゃんは俺の言葉を信じてくれた。まさか魔法を使ったなんて、言える訳が無い。本当に使えてしまうとは思わなかったけど......「恐怖種テラー」は、不安や恐怖を感じてしまう映像を、見せ続ける魔法だ。多くの場合、術者を恐怖の対象として見るようになり、恐れるようになる。

「すいませーん!」

 おっと、そうこうしているうちに、およびのお客様が増えている。恐らくオーダーも溜まっている筈だ。俺と紫月ちゃんは持ち場に戻り、紫月ちゃんはさっきのDQN連中の会計。俺はたまっている伝票を確認し、怒涛のスピードでドリンクを作り続けた。

 ホールに出ると、毎回紫月ちゃんと目が合う。彼女は軽く手を振って、微笑んでくれる。くー!最高だぜ!

 俺と紫月ちゃんの距離は、一気に縮まった気がする。よし、思い切って今日、飲みに誘うぞー!
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