呪術恋愛戦線 ―山奥ド田舎の陰キャ呪術師の俺が、都会から来た陰陽師美少女に狙われる異能バトルラブコメ―

杉林重工

文字の大きさ
31 / 55
彼女の名前は瀬路原野弦

特別な少年少女な普通な

しおりを挟む
「まったく、二人とも散らかしていくんだから。ごめんなさいね、ノツルちゃん」

 瀬路原家の階段で動けなくなっているノツルへ合儀椎子はそういった。その手にはガラス片とゴルフボールを回収したビニール袋が下げられている。先ほどノツルの部屋を掃除器で清掃し、飛び散った窓ガラスを完全に除去した直後であった。

「おばさん、ごめんなさい」

 ノツルは何とか姿勢を正し、立てないながらも椎子に向いた。そして、椎子が用意した水を口に含む。塩が入っているらしく、ノツルは一瞬顔をしかめた。

「そうね。本当に」

 椎子は肩をすくめた。

「失礼します」「失礼します」

 二人、作業着の男が現れる。近所の工務店の作業員である。

「二階。ドアが開いてますから、そこの窓をお願いします」

「はい」

 椎子の口利きで呼んだ彼らは、ナイススイング正隆のナイスショットで粉砕された窓の交換にやってきたのである。

 椎子はノツルの手と、置いたコップを手に取り、そのまま居間に移動する。ソファにノツルを寝かせると、その隣に椎子は座った。

「あと、もうしばらくノツルちゃんのお母さんは寝ててもらってるからね」

「はい。お手数をおかけします。あの、おばさん。わたしに、できることって、ありませんか」

「ない」

 明確に椎子はそう言い切った。

「でも、わたし、肺助君にも、それからおばさんにも、いろんな人に迷惑をかけて……」

「それも全部、肺助さんが悪いでしょう」

「いえ、肺助君は悪くありません。全部、わたしが勝手にやったことで……」

「知っていますよ。ずーっと昔、肺助が勝手に、あなたの前で気軽に呪術を使ったから。そうでしょう。自業自得です。あの子が自分で解決すべき問題です」

 椎子は大きく溜息をついた。

「そして、それはわたしの至らなさでもあります。ノツルちゃんは悪くない」

「でも、肺助だってナイススイング正隆には、一人じゃ勝てない……!」

 その言葉は、ノツルも口にしていいものか悩ましかった。だが、言わなければという使命感が勝る。対して、椎子は実に落ち着いていた。

「確かに、肺助では問題の解決なんてできないでしょう。でも、命香ちゃんもいれば……」

「違うんです! おばさん、わたしはずっと前から、肺助君みたいに特別になりたかったんです」

「ノツルちゃん。それ以上言うなら、わたしもあなたに呪いをかけて、そういうくだらないお遊び気分を消さないといけません」

 椎子は冷たく言い放った。ノツルの顔が曇る。だが、すぐに再び、きっ、と椎子の目を見返した。

「違うんです。おばさん、肺助はなんで呪術師なんですか」

「合儀家に生まれたから仕方ないでしょう。ノツルちゃん、呪術師は生まれながらに、その生き方が呪われてるの。どうやったって、呪術師以外の生き方はできない。肺助は特別に見えるかもしれないけれど、それは普通のことなの」

「違います。肺助は、特別な、普通のわたしの幼馴染です」

「……」

 ノツルは目を落とし、祈るように手を組みながら言う。

「わたしが困っていたら、助けてくれる。誰かに相談されたら無視できない。わたしだってそうです」

 ノツルはソファの上で身を起こした。ふらふらと立ち上がる。それを、じっと椎子は見つめる。

「だから、おばさん。わたしのことを、止めないでください。そのために、二人にはまずスマホを拾いに行ってもらったんですから」

 じっと、深く観察するような椎子の視線を、ノツルは真正面から見返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...