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彼女の名前は瀬路原野弦
特別な少年少女な普通な
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「まったく、二人とも散らかしていくんだから。ごめんなさいね、ノツルちゃん」
瀬路原家の階段で動けなくなっているノツルへ合儀椎子はそういった。その手にはガラス片とゴルフボールを回収したビニール袋が下げられている。先ほどノツルの部屋を掃除器で清掃し、飛び散った窓ガラスを完全に除去した直後であった。
「おばさん、ごめんなさい」
ノツルは何とか姿勢を正し、立てないながらも椎子に向いた。そして、椎子が用意した水を口に含む。塩が入っているらしく、ノツルは一瞬顔をしかめた。
「そうね。本当に」
椎子は肩をすくめた。
「失礼します」「失礼します」
二人、作業着の男が現れる。近所の工務店の作業員である。
「二階。ドアが開いてますから、そこの窓をお願いします」
「はい」
椎子の口利きで呼んだ彼らは、ナイススイング正隆のナイスショットで粉砕された窓の交換にやってきたのである。
椎子はノツルの手と、置いたコップを手に取り、そのまま居間に移動する。ソファにノツルを寝かせると、その隣に椎子は座った。
「あと、もうしばらくノツルちゃんのお母さんは寝ててもらってるからね」
「はい。お手数をおかけします。あの、おばさん。わたしに、できることって、ありませんか」
「ない」
明確に椎子はそう言い切った。
「でも、わたし、肺助君にも、それからおばさんにも、いろんな人に迷惑をかけて……」
「それも全部、肺助さんが悪いでしょう」
「いえ、肺助君は悪くありません。全部、わたしが勝手にやったことで……」
「知っていますよ。ずーっと昔、肺助が勝手に、あなたの前で気軽に呪術を使ったから。そうでしょう。自業自得です。あの子が自分で解決すべき問題です」
椎子は大きく溜息をついた。
「そして、それはわたしの至らなさでもあります。ノツルちゃんは悪くない」
「でも、肺助だってナイススイング正隆には、一人じゃ勝てない……!」
その言葉は、ノツルも口にしていいものか悩ましかった。だが、言わなければという使命感が勝る。対して、椎子は実に落ち着いていた。
「確かに、肺助では問題の解決なんてできないでしょう。でも、命香ちゃんもいれば……」
「違うんです! おばさん、わたしはずっと前から、肺助君みたいに特別になりたかったんです」
「ノツルちゃん。それ以上言うなら、わたしもあなたに呪いをかけて、そういうくだらないお遊び気分を消さないといけません」
椎子は冷たく言い放った。ノツルの顔が曇る。だが、すぐに再び、きっ、と椎子の目を見返した。
「違うんです。おばさん、肺助はなんで呪術師なんですか」
「合儀家に生まれたから仕方ないでしょう。ノツルちゃん、呪術師は生まれながらに、その生き方が呪われてるの。どうやったって、呪術師以外の生き方はできない。肺助は特別に見えるかもしれないけれど、それは普通のことなの」
「違います。肺助は、特別な、普通のわたしの幼馴染です」
「……」
ノツルは目を落とし、祈るように手を組みながら言う。
「わたしが困っていたら、助けてくれる。誰かに相談されたら無視できない。わたしだってそうです」
ノツルはソファの上で身を起こした。ふらふらと立ち上がる。それを、じっと椎子は見つめる。
「だから、おばさん。わたしのことを、止めないでください。そのために、二人にはまずスマホを拾いに行ってもらったんですから」
じっと、深く観察するような椎子の視線を、ノツルは真正面から見返した。
瀬路原家の階段で動けなくなっているノツルへ合儀椎子はそういった。その手にはガラス片とゴルフボールを回収したビニール袋が下げられている。先ほどノツルの部屋を掃除器で清掃し、飛び散った窓ガラスを完全に除去した直後であった。
「おばさん、ごめんなさい」
ノツルは何とか姿勢を正し、立てないながらも椎子に向いた。そして、椎子が用意した水を口に含む。塩が入っているらしく、ノツルは一瞬顔をしかめた。
「そうね。本当に」
椎子は肩をすくめた。
「失礼します」「失礼します」
二人、作業着の男が現れる。近所の工務店の作業員である。
「二階。ドアが開いてますから、そこの窓をお願いします」
「はい」
椎子の口利きで呼んだ彼らは、ナイススイング正隆のナイスショットで粉砕された窓の交換にやってきたのである。
椎子はノツルの手と、置いたコップを手に取り、そのまま居間に移動する。ソファにノツルを寝かせると、その隣に椎子は座った。
「あと、もうしばらくノツルちゃんのお母さんは寝ててもらってるからね」
「はい。お手数をおかけします。あの、おばさん。わたしに、できることって、ありませんか」
「ない」
明確に椎子はそう言い切った。
「でも、わたし、肺助君にも、それからおばさんにも、いろんな人に迷惑をかけて……」
「それも全部、肺助さんが悪いでしょう」
「いえ、肺助君は悪くありません。全部、わたしが勝手にやったことで……」
「知っていますよ。ずーっと昔、肺助が勝手に、あなたの前で気軽に呪術を使ったから。そうでしょう。自業自得です。あの子が自分で解決すべき問題です」
椎子は大きく溜息をついた。
「そして、それはわたしの至らなさでもあります。ノツルちゃんは悪くない」
「でも、肺助だってナイススイング正隆には、一人じゃ勝てない……!」
その言葉は、ノツルも口にしていいものか悩ましかった。だが、言わなければという使命感が勝る。対して、椎子は実に落ち着いていた。
「確かに、肺助では問題の解決なんてできないでしょう。でも、命香ちゃんもいれば……」
「違うんです! おばさん、わたしはずっと前から、肺助君みたいに特別になりたかったんです」
「ノツルちゃん。それ以上言うなら、わたしもあなたに呪いをかけて、そういうくだらないお遊び気分を消さないといけません」
椎子は冷たく言い放った。ノツルの顔が曇る。だが、すぐに再び、きっ、と椎子の目を見返した。
「違うんです。おばさん、肺助はなんで呪術師なんですか」
「合儀家に生まれたから仕方ないでしょう。ノツルちゃん、呪術師は生まれながらに、その生き方が呪われてるの。どうやったって、呪術師以外の生き方はできない。肺助は特別に見えるかもしれないけれど、それは普通のことなの」
「違います。肺助は、特別な、普通のわたしの幼馴染です」
「……」
ノツルは目を落とし、祈るように手を組みながら言う。
「わたしが困っていたら、助けてくれる。誰かに相談されたら無視できない。わたしだってそうです」
ノツルはソファの上で身を起こした。ふらふらと立ち上がる。それを、じっと椎子は見つめる。
「だから、おばさん。わたしのことを、止めないでください。そのために、二人にはまずスマホを拾いに行ってもらったんですから」
じっと、深く観察するような椎子の視線を、ノツルは真正面から見返した。
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