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13 信じたい人、信じたかった人。

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ナキッシュ殿下がお店を出ると、二階席は解放され、いつもの喧騒が戻ってくる。

お茶のお代わりをいただき、ぼんやりと外を見ていた。

リムと合流して家路につく。

「お嬢様、何かありました?」
「え?何?どうかした?」
「いえ、なんだか難しそうなお顔をされていたので」

いかん、いかん。
心配かけちゃったか。

「大したことじゃないんだけどね。考えなくちゃいけないことがあるのよ。気にしないで」

なんとか微笑みながら応えると、リムは頷いてそっとしてくれた。

部屋に戻ると、リムがハーブティーと見慣れないお菓子を持ってきてくれた。
下町で流行っているお菓子らしい。

「今日のお礼です」

彼女の心遣いに、ささくれた心が少し凪いだような気がした。

冷静になろう。

今、心のままに行動するのは悪手だ。

大切なのは情報の整理。

私の知っているサフィーは私を大切にしてくれている。
だけど、陰でサフィーは私の悪口を言っていたという。

矛盾。

人は、嘘をつくことができる。
なら、今の段階で嘘をついているのは誰?

私が信じるべきは何?

私は知るべき。
動くなら、その後だ。

深呼吸をひとつすると、魔道具を使う。

『あら?リシー、どうしたの?』
「話したい事があるのだけど、時間ある?」
『大丈夫よ。どうしたの?』

少し、悩んだ。


「聞きたいことがあるの。サフィー」
『何?』

「私の悪口を・・・殿下に言ってるの?」

沈黙。

『・・・いきなり、どうしてそんなことを聞くの?』

「今日、あなたの婚約者にあったわ。
サフィーが私のことを社会不適合者とか、あなたにすり寄っているとか言っていると聞いたの。」

サフィーから、返事はない。

「もう一度聞くわ。言ったか、言ってないかで答えて。あなたは私のことを陰でそう言っていたの?」

『・・・言ったわ』



お腹のあたりに黒く重いものがドスンと落ちてきたように感じた。
覚悟していたつもりでも、受けるショックは大きかった。



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