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第一部。オリム、結婚するので退職する
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※※※
クロノスがいなくなったことに慣れなくて、まだ彼の姿を目が探してしまっている自分がいる。
そんなある日、
ヴァイオレットからまた声をかけられた。
わざわざ書物庫まで呼び出しに来た。
付き合っている時も職場で彼と親しく話したことはなかった。
久々のヴァイオレットの登場で部下たちは色めきたっていた。
「先輩。ヴァイオレット様が来てますよ!!今日もマジで麗しいです!」興奮ぎみに部下に言われて、
みんなの視線のない場所までヴァイオレットと歩いた。
「何?」
きいたオレに、「リィの荷物だけど」
とヴァイオレットは言った。
「適当に捨ててくれればいいから」
「でも、魔術書とか、リィの大事にしてたやつもあるよ」
そうだ、それは欲しい。けど。
「リィが荷物運び出す間、オレは外に出てるから」
そう言って、ヴァイオレットは付き合っていた頃みたいな笑顔を作ろうとして、失敗した。
オレは思わず目をそらす。
そこまで言われて、オレは取りに行くことにした。
仕事をはやく切り上げ、ヴァイオレットの家に寄り、彼に外に出てもらう。
書斎に入ると、まず最初にチェアサイドのデスクをあけて中に白いハンカチがあるのを確認した。
指先がその布をなぞった瞬間、懐かしい記憶が蘇った。
10歳のころの話だ。
売られた自分を取り戻すために働いていた。
まわりは成人した社会人ばかりだった。
人格はいらなかった。
命令に従って魔力を使う。それだけだ。
まわりが羨ましくて、不幸だと思っていたし、嫌々働いていた。
そんな時、同年代の子どもと接する機会があった。
どんな事情かは知らないが、
貴族の子どもが2人だけで学園寮を抜け出して
立ち入り禁止の「夜の森」に入ったらしい。
命の価値は確実に違う。
身分の高い貴族の令息だから急いで探して欲しいと命じられ、
当直だったオレが出向いた。
見つけた時、2人は案の定、魔物に襲われていた。
黒髪と金髪の子供だった。
どちらも目をみはるほど綺麗で、おとぎ話のお姫様みたいだった。
とくに黒髪の子。
あれがオレの初恋だった。
返り血で汚れていたオレに、その子はハンカチを差し出した。
細く白い手は震えていたのに、目だけは真っ直ぐで。
「大丈夫?」と言われた一言が胸に焼きついた。
あの時はじめて『守る』という意味を知った。
身分も違うし、詳しい素性はおろか名前も知らされなかった。会話だって2、3言交わしただけ。
それきり2度と会わなかった。
でもその子の日常を守れているんだと思えば、どんな仕事でも誇らしく思えた。
あの子の真っ直ぐな瞳はオレの中でずっと宝物だった。
夜明け前の空みたいな紫色。
だからだろうか、クロノスを初めて見たとき、理由もなく惹かれたのは。
それからはその子に似たタイプにばっかり目がいった。
可愛くて頼りなくて守ってあげたくなるような…。
付き合ったのもみんなそんな子だ。
誰と付き合っても捨てられなかったハンカチ。
でもクロノスと付き合い出してからは、この家に置きっぱなしなのも気にならないくらい、
すっかり思い出さなくなっていた。
タイプは全然違う。
でも結局、自分から好きになったのは、クロノスとその子だけだった。
オレはハンカチを魔法で消滅させた。
もうすぐ仕事もやめる。
もしこの先あの子に会うことがあっても、心が動かない自信がある。
オレはクロノスのことが好きだから。
オレには、本当に欲しいものは絶対手に入れられないと思ってた。
でも違ったんだ。もうすぐ一番欲しいものが手に入る。
そっと薬指の婚約指輪に触れ、静かに本棚にむきなおった。
クロノスがいなくなったことに慣れなくて、まだ彼の姿を目が探してしまっている自分がいる。
そんなある日、
ヴァイオレットからまた声をかけられた。
わざわざ書物庫まで呼び出しに来た。
付き合っている時も職場で彼と親しく話したことはなかった。
久々のヴァイオレットの登場で部下たちは色めきたっていた。
「先輩。ヴァイオレット様が来てますよ!!今日もマジで麗しいです!」興奮ぎみに部下に言われて、
みんなの視線のない場所までヴァイオレットと歩いた。
「何?」
きいたオレに、「リィの荷物だけど」
とヴァイオレットは言った。
「適当に捨ててくれればいいから」
「でも、魔術書とか、リィの大事にしてたやつもあるよ」
そうだ、それは欲しい。けど。
「リィが荷物運び出す間、オレは外に出てるから」
そう言って、ヴァイオレットは付き合っていた頃みたいな笑顔を作ろうとして、失敗した。
オレは思わず目をそらす。
そこまで言われて、オレは取りに行くことにした。
仕事をはやく切り上げ、ヴァイオレットの家に寄り、彼に外に出てもらう。
書斎に入ると、まず最初にチェアサイドのデスクをあけて中に白いハンカチがあるのを確認した。
指先がその布をなぞった瞬間、懐かしい記憶が蘇った。
10歳のころの話だ。
売られた自分を取り戻すために働いていた。
まわりは成人した社会人ばかりだった。
人格はいらなかった。
命令に従って魔力を使う。それだけだ。
まわりが羨ましくて、不幸だと思っていたし、嫌々働いていた。
そんな時、同年代の子どもと接する機会があった。
どんな事情かは知らないが、
貴族の子どもが2人だけで学園寮を抜け出して
立ち入り禁止の「夜の森」に入ったらしい。
命の価値は確実に違う。
身分の高い貴族の令息だから急いで探して欲しいと命じられ、
当直だったオレが出向いた。
見つけた時、2人は案の定、魔物に襲われていた。
黒髪と金髪の子供だった。
どちらも目をみはるほど綺麗で、おとぎ話のお姫様みたいだった。
とくに黒髪の子。
あれがオレの初恋だった。
返り血で汚れていたオレに、その子はハンカチを差し出した。
細く白い手は震えていたのに、目だけは真っ直ぐで。
「大丈夫?」と言われた一言が胸に焼きついた。
あの時はじめて『守る』という意味を知った。
身分も違うし、詳しい素性はおろか名前も知らされなかった。会話だって2、3言交わしただけ。
それきり2度と会わなかった。
でもその子の日常を守れているんだと思えば、どんな仕事でも誇らしく思えた。
あの子の真っ直ぐな瞳はオレの中でずっと宝物だった。
夜明け前の空みたいな紫色。
だからだろうか、クロノスを初めて見たとき、理由もなく惹かれたのは。
それからはその子に似たタイプにばっかり目がいった。
可愛くて頼りなくて守ってあげたくなるような…。
付き合ったのもみんなそんな子だ。
誰と付き合っても捨てられなかったハンカチ。
でもクロノスと付き合い出してからは、この家に置きっぱなしなのも気にならないくらい、
すっかり思い出さなくなっていた。
タイプは全然違う。
でも結局、自分から好きになったのは、クロノスとその子だけだった。
オレはハンカチを魔法で消滅させた。
もうすぐ仕事もやめる。
もしこの先あの子に会うことがあっても、心が動かない自信がある。
オレはクロノスのことが好きだから。
オレには、本当に欲しいものは絶対手に入れられないと思ってた。
でも違ったんだ。もうすぐ一番欲しいものが手に入る。
そっと薬指の婚約指輪に触れ、静かに本棚にむきなおった。
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