恋人に浮気された腹いせに男娼を買ったら人生狂った。(完全版)

まりあ

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第二部。あれから一年後。オリム、さらわれる

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オレは彼を庇うように一直線に躍り出た。

牙をむき、飛びかかろうとしていた虎の前に。


ほとんど鼻先の距離だった。

手枷がまばゆいほどに青く輝きながら砕け、ガコンと石畳に落ちたのと同時に

どしゃ、っと音がして、見えない重圧におさえこまれたように虎が地面に伏せた。



オレはふらつきながら、手枷の外れた手で、服従する虎の綺麗な毛並みをガシガシと撫でた。




「服従してる…?」

信じられないものを見るように、セマが目を見開いている。



「オレ、この手枷つけられたの、2度目なんだ。

物理的な力以外にもこの手枷を外す方法がある。
許容量を超える魔力を食うと手枷がバグって壊れるって知ってたか?

オレ意外と努力家なんだ。2度も同じ手にはのるつもりないから、許容量を超えるまで魔力容量を増やしただけだ」

偉そうに言ったけど、練習では一度も成功したことがなかったし、本当にギリギリだった…。

「うそだろ、化け物かよ」

盛大に驚いているセマに、オレは丁寧に魔方陣を展開させて詠唱しながら、最低限のヒールをかけた。



もう魔方陣なしでヒールをかける力は残っていなかったからだ。

それどころか…。


視界が狭窄し始めていた。
失神しそうで、オレは立っているのもやっとなことを隠しながら訊く。

「どうして助けたんだ?
こんなことして大丈夫なのか?」


「ダメだよ。どうしてくれるんだ。オレ、死ぬ。絶対殺される」


「だったら、どうして」


「だって、
オリムが死ぬのは、もっと嫌だ。
……本当はオレ、あんたのことを…

いや、なんでもない。言ったらきっと全部壊れる」



何か言いかけてセマが口を結んだ。



「とにかく、オレの命にかえてもあんたをエスラストに送り届ける。
来て。出口まで案内するから」

セマがオレの手を引く。



わかるよ。本当はオレのこと、仲間だと思ってくれてるんだろ?そんなの、オレだって思ってるよ。



「嬉しいよ、オレもだ」



オレの言葉にセマは真っ赤になった。



「あんた、何言って…!!本気で言ってんのか?
い…いいから、行こう。こっちだ」




虎は牢の出入り口は通れないので、ここでお別れだ。



もう少しゆっくり歩いて欲しい。冷や汗が止まらない、足がもつれてうまく歩けない。

それでも必死で階段に足をかけようとしたところで、
上のほうで轟音が鳴り響いた。

パラパラと上から建物の破片が落ちて来る。

爆発だ…。


セマも何が起きているのか、わかっていないようだった。
この状態でのさらなる展開に、何が起きているのか、想像を放棄したくなる。

それはオレの気力を削いでしまうには充分だった。



セマがオレの手をひいて階段を上がろうとするものの、オレは膝をついてしまった。

セマが不審な顔でオレを振り返る。



もう動けないなら、せめてセマの足手まといになりたくない。

    
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