【完結】悪役だった令嬢の美味しい日記

蕪 リタ

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第一章

5.欲しくないモノ(1)

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「行かなくてはいけないのですね・・・・・・」
「仕方がないでしょう? 王家のお茶会だもの」


 有無を言わせない雰囲気に責め立てられ、否とはいえませんでした・・・・・・圧が凄いです、お母様。淑女教育のおかげで、だいぶ顔に出なくなったと思う・・・・・・だいぶね。あぁ、面倒だわ。

 あ、もうすぐ七歳になります。季節は春。場所は王都の我が家の御屋敷。何故かって?勿論、王子様方の為のお茶会の所為せいで。今年入ってすぐ三歳になられた第一王女様の御披露目と、来春から国立学院に入られる第一王子様の最終側近候補選び、今年十歳になられる第二王子様の側近候補と婚約者を決める為のお茶会です。嫌です。私には待っている厨房ひとが!!

 我が国ローズの王族は、十歳になると婚約者を決めます。えぇ、知ってましたよ。だって婚約者候補になってるって、浮かれきった属性鑑定の帰りに言われましたから。かつて前世の妹が話してくれたように、第二王子の婚約者候補に無事・・なってた。まだ数名いる婚約者候補の一人・・・・・なのでマシだけど・・・・・・気分が一気にドン底へ落とされた。属性鑑定のお祝いパーティーのおかげで、一回浮上することができたけどね。

 婚約者候補達の顔合わせお茶会も数回あったらしいが、他候補の方々のお家のお茶会は出席してないので私以外の候補って実はよくわかってない。どこのお家とか家族構成くらいは日々のお勉強・・・でわかるけど、人となりなんてわからない・・・・・・参加したくないからあんまり関わってないしね。

 本音を言えば全部回避したいが――お母様怖いので、王家主催のお茶会には顔見せ程度に参加したよ・・・・・・最低限の挨拶接触しかしてないけど。だって破滅は嫌だけど、単純に王子様の相手とか――無理です。中身アラサーには厳しいんです! 周りの子達みたいにキャッキャウフフ出来ないんです! 皆キラキラしすぎて、眩しくて・・・・・・。若干ギラついてるように見えたのは、気のせいだと思いたい。そんな子達と牽制合戦なんて、もってのほか

 そ・れ・よ・り! 王家のお茶会のお茶請けが美味しくて、見た目も綺麗で!お茶会で出たお菓子について、帰宅後に王都へ付いてきてもらってるヤンと語り合って再現を試みる方が楽しいんだもの!! お茶請けのために、他家のお茶会も行けばよかったな・・・・・・。



 で、今回。王族は三歳になると王家主催のお茶会で御披露目するので、王女様の年齢に近い貴族子女達は絶対参加です。私も王女様とは四歳離れるけど、逃げれません。高位貴族だし、五歳差までは有無を言わせず絶対参加。そんなお茶会で、第二王子様の婚約者最終決定します。

 思わず、ムスッとした表情を出してしまいそうになった。すぐに引っ込めたよ? 折角ポテサラ以外の『危ない事はしない約束』の中で作った料理で、正式に火や包丁を使っていいと口説き落とせたのに、順調にこなしてる淑女教育成果がないとわかれば、厨房出禁にされてしまうし。そんなの嫌!! 表情筋にお仕事してもらって、ここ一年で習得した鉄壁の仮面を被りました! 同年代の子達にはバレません・・・・・・まだまだ母にはバレてるが。今回は、見逃してくれたようです。仕方がない子ね、とあきれた顔されたけどもね。



 ちなみに。ポテサラの次に作った料理は、ふわふわのスフレパンケーキのミルクジャムがけ。アルバにもパンケーキもジャムもあるが、しっかり焼いてる硬めのパンケーキとフルーツジャムだけ。充分だと思うし、私は硬めのパンケーキの方が好きだけど、王家のお茶会に参加してたら無性にミルクジャムが食べたくなってね? 日本で自家製ミルクジャムを作った時だけ、濃厚なミルクに合うシュワっと口溶けるふわふわのスフレパンケーキを焼いてたのを思い出したの。  

 ヤンに火を使う部分は手伝ってもらいながら作ったら、あっさり火と包丁の使用許可くださいましたお母様。そんな母に、ミルクジャム作る時にあさった貯蔵庫にしまわれていた寒天で紅茶味の琥珀糖を作り一緒に出したら、「お茶会に出すわ!!」ってそのまま支度し出して驚いたわ・・・・・・。後から聞いたら、あめ落雁らくがん、マジパン等砂糖を使うお菓子があっても、琥珀糖は今までになかったらしい・・・・・・アルバの不思議。

 そういえば日本では、SNSで食べれる鉱物とか何だかって話題になってたな。まぁ私の場合、流行り出す数年前にお土産でもらった琥珀糖を気に入ったから食べたすぎて調べたの、作れるかなって期待して。そうしたら砂糖と寒天と水だけで作れるって分かって、余ってた寒天使えるしちょうどいいや!って作ったっけ。物凄く簡単だし。目敏めざとい妹がラッピング中のを見つけて、勝手に持って帰ったりして食べてたな。気付いた時には、大学の講義の合間用のおやつや友達にあげるように小分けにしてたのが減ってたんだよね・・・・・・。まあ、紅茶を煮出して作ると、綺麗な琥珀色になるから、ラッピングしてたら欲しくなるよね――綺麗だし、食べられるし。お姉ちゃんの方が最先端だよね!ってニコニコしてたわ、妹。姉はただ、あの食感が気に入って、好きな紅茶やハーブティーで作れないか遊んでいただけなんだよ・・・・・・。

 後日、ペッシャール家特有の瞳と同じ色の琥珀糖は、我が家のお茶会に必ず常備されるお茶請けになる事を、この時の私はまだ知らない。



 あ、父を落とすのには、豆腐の味噌漬けを作りました。味噌と砂糖とミリ酒みりんを混ぜ、豆腐の表面を覆う。冷蔵庫で冷やして・・・・・・食べる前に表面の味噌ダレを軽く取り除いて、食べやすい大きさに切るだけ。凄く簡単なご飯のお供で、会社終わりにちょこっと摘むのに最適な酒のさかなだったな。

 案の定、お酒好きな父や男性使用人達から絶大な人気を得た豆腐。簡単だし、チーズみたいな風味が出て美味しいよね。おかげで父は陥落かんらくし、火も包丁もあっさり使用許可くれた。やったね!

 味噌はお味噌汁以外に活用法がなかった・・・・・・・・から、厨房メンバーの食いつきも凄かった・・・・・・ていうか怖かった。
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