【完結】悪役だった令嬢の美味しい日記

蕪 リタ

文字の大きさ
7 / 39
第一章

6.欲しくないモノ(2)

しおりを挟む
 ここ一年のお勉強・・・は、マナー以外に歴史や初歩的な勉強も増えた。おかげで分かったのは、『乙女ゲームの世界』というよりも『乙女ゲームの素になった・・・・・世界』だと言うこと。

 この世界アルバは、主神である女神セラータ様が創った『魔法が使える世界』。人々の発展のために魔法が使えるようにしてあり、西大陸は特に魔法研究がはかどった。その中でも魔法を極めた国が我が国ローズ。他は魔法を道具として使えるように魔導具を研究開発し発展したフリジア、薬草を発見し医療系魔法を確立したホスタ、西大陸で発展した物を中央大陸との貿易で流通させたネモフィルに、大叔母様が嫁がれた魔法娯楽が盛んなセンパスチル。この五つの国が、西大陸を統べている。

 中央大陸も魔法でそれぞれ発展していったそうだが、どの大陸も問題だったのが『食の発展』。魔法が発展し便利な生活が出来るようにはなったが、発展させた人々は如何せん研究肌の者が多く、研究にのめり込みすぎて食がおろそかになり『食の発展』はしなかった。人が生きていく中で大切な食事・・を抜くことが多々あり、栄養失調等の起因で人口がなかなか増えず、困った女神セラータ様が人の発展の為にと『招喚術』を各王族たちへ授けた。

 様々な制約がある中招喚された他の世界の人々のおかげで食だけではなく、製法や食品加工等の様々な技術や物が発展していく。そんなある日、中央大陸のとある王族が禁忌を犯す。

 『招喚者』はアルバの発展の為に他世界から喚ばれる為、アルバで生きていけるよう全て・・の魔法が使えるように女神セラータ様から授かり、招喚される。そう、弱くたって全属性・・・の攻撃防御魔法が使える。そのため、招喚術を行う時は必ず「軍事利用しない」と女神セラータ様に誓約しなければいけないのだが・・・・・・誓約はただの口約束・・・・・・だと言い切り、中央大陸にあった某国が『戦道具』として強制召喚・・・・を乱発。怒った女神セラータ様が『招喚術』を全王族から取り上げ、怒りを買った某国を消滅させた。それが、今からおよそ百年前。おかげで、二度と招喚は出来ないので、今まで根付いた物だけで発展してきた、中途半端に食の発展をした世界アルバが出来上がった。

 だからお菓子もあるし、調味料なども一通り手に入るが、伝わり方がイマイチで一部伝わっていないものもあるし、そこからの発展もない。それで琥珀糖が伝えれててもおかしくないのか・・・・・・。味噌も味噌汁しか使い道がなかったのは、伝わりそこなったんだね。

 ちなみに、料理関係ならすぐ頭に入る私のために、勉学の家庭教師ジロー・ロゼ・ルブーフ先生が他の発展も料理の話から導入して教えてくださってます。ルブーフ先生は、我が領内の勉学の講師達を育てる機関を作り、高位貴族から平民まで分けへだてのない教えをする、教育に力を入れているダンディーなおじ様。沢山たくさんの生徒をみてきた彼のおかげで、個人に合った歴史の勉強がとても興味深かく、これからまだまだ続くので楽しみです。父も幼少期に教わったらしく、父は魔物関連から入ったそう。先生の引き出し凄いなぁ・・・・・・。



 魔法制御も無事始まりましたが、これが中々難しいんです! ラノベ的展開だと、日本人の妄想力でどうにかいけそうな気がするんだけど・・・・・・出来過ぎ・・・・ちゃうんです。威力の弱い生活魔法だけでも強すぎ・・・て、制御して弱く・・使うのが難しい。元々土地を治めるのに魔物と戦う必要があり、魔力量が多い者が貴族になった為、貴族は私のように使えすぎる・・・・・人が多く、五歳から制御訓練を始めると属性鑑定時に教えていただいた。

 属性は遺伝しなくとも魔力内包量は遺伝するようだが、たまに先祖返りや突然変異で内包量が多い平民もいる。私の魔法の先生がこのパターン。対魔物用海兵隊レンジャーの中でも珍しく『魔法専門スペシャリスト』で活躍し、後進育成の為に現役引退されたばかりのマリオン先生。二十代半ばで、バリバリ現役のお姉様です。彼女も平民のごく普通の家庭育ちでしたが、魔法学園入学時の鑑定で魔力量がトップクラスの貴族よりも多かったそう。国立学院に編入し、魔法を極めて我が領対魔物用海兵隊レンジャーの『魔法専門スペシャリスト』になったそうです。

 学院卒業時に王宮の魔法省へスカウトされたらしいが、「海の魔物が私を待っている!!」と言って蹴ったらしいです。それを聞いた時は、若干この先生大丈夫かなって心配した。けれど、ふたを開けてみれば一つの視点にとらわれず、多方面で魔法と向き合う方で、教え方が上手な先生でした。

 「海の魔物が私を待っている!!」と言ったのも、初めから変人回答をしておけば何度も誘われることもないし、魔法省のトップは頭の固いじじいばかりで反りが合わないから断ったと仰り、私も納得してしまった。魔法省が悪いわけではないのだが、マリオン先生と接していると伝統を重んじる魔法省では少し窮屈きゅうくつなのでは・・・・・・と思ってしまったので、伸び伸び狩りしながら研究できる対魔物用海兵隊レンジャーでよかったんじゃないかなと思う。言葉遣いもちょこっと荒いし。


 貴族は五歳の属性鑑定では、魔力量は測りません。魔力量を測るのは、貴族も国立学院入学時です。そう、乙女ゲームのイベントっぽいよね・・・・・・。でも属性が既に違うし、どちらかと言うと『乙女ゲームの素になった世界』で、実際に生きている人たちがいる世界。普通に生きているから、なるようにしかならないよね? はい!放置します!


 という感じで魔法制御も始まり、もう少し制御が上達すれば基本の生活魔法の勉強が始まる予定です! 頑張るよ! しっかり学んで、是非厨房で使って料理したいからね! マリオン先生も興味津々なので、確り制御を覚えて厨房で使っていきたい。



***

 戻したくない話に戻りますが、第二王子様の婿むこ入り先としては確実に西公爵家我が家がトップ。北公爵家は王妹様が嫁がれ、他国の婚約者を持つ男児二人が既に第一王子様の側近候補で女児がおらず。東公爵家は長女が第一王子様の婚約者になってて、双子の長男と次女は王女様と同じ三歳。南公爵家に至っては、昨年男児がお生まれになったばかり。他は第二王子様と同じ歳か少し上の侯爵家、伯爵家になり、年下でも家格としては私が上になってます。第二王子様がレティシア西公爵家我が家を拒否しない限り、序列的に確実に婚約者になります――寧ろ、他の誰かに興味持て!!

 そんな浅はかな願いは、軽く流されることだろうな・・・・・・。確か妹に軽く聞いた設定では、第二王子は誰一人興味なく周りを見下す俺様王子だったはず・・・・・・じゃあ、家柄だけで私決定な線濃厚では?嘘でしょ――嘘と言って!! 俺様王子なんて、ますます婚約者に欲しくない! いや、待って。既に私の性格違うし、『乙女ゲームの素になった世界』なら王子の方も、もしかしたら性格違う?そういえばお茶会で見た王子は、俺様王子っていうより寧ろ笑顔が胡散臭うさんくさく見えたような・・・・・・あれ? もしかしなくともお腹が黒そうな感じ?

 第二王子とはどういう人かあれこれ思案しながら目をさりげなく逸らした私に、母は確信をついてきた。


「レティ。あなたが行きたくないのは、厨房へ行く時間が減るからでしょう? 生き生きとしているのを見ると、楽しいのはよく伝わってくるけれどね。それにお話ばかりのお茶会が嫌なのでしょう?」


 あぁ、やはりバレてましたか・・・・・・。そう、だから行きたくない! 妃教育なんて始まったら、今以上に愛しい厨房ひとに会いに行けないし、お話だけでお茶請けと戯れる・・・時間が少ないのが嫌なんです!


「そんなあなたに、良い事を教えてあげましょう。今回のお茶会はあくまでも第一王女殿下のお披露目のため、多くの子女達が挨拶あいさつに来ます。親よりも子達の方が多いお茶会です」
「・・・・・・つまり?」
「顔合わせのお茶会同様、お茶請けがたくさん出るでしょう。王宮の給仕きゅうじに声をかければ、王宮料理人の方に直接聞きたい事も聞けるわよ?それに・・・・・・」
「それに?」
「王子殿下方の側近候補たちだけではなく、第一王子殿下の婚約者の側近選びもあります。つ・ま・り! その他大勢にまぎれる事も可能でしょう」
「――っ!! 行きます!」


 公爵令嬢なのにその他大勢に紛れてもいいかは疑問ですが、母の許しが出たのでその他大勢に混じります! 厳しい母でもなんだかんだで私に甘いので、社交をこなしておけばしばらく婚約者は居なくてもいいということでしょうか? いや、まさかもう決まって・・・・・・考えない!考えない!!

 それよりも! お茶請けが少なく、お話メインのお茶会だと思っていたので、沢山出るならとりあえずでも行きます! お菓子研究のために!! ついでに王宮料理人の方に、この間悩んでた再現出来なかった部分も聞きましょう!!




 テンション爆上がりした私は、婚約者云々うんぬん考えないように頭の片隅に追いやった。だって王子様には申し訳ないけど、中身アラサーでも外見七歳は現金なんです! 花より団子なんだよ!!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

貧乏で凡人な転生令嬢ですが、王宮で成り上がってみせます!

小針ゆき子
ファンタジー
フィオレンツァは前世で日本人だった記憶を持つ伯爵令嬢。しかしこれといった知識もチートもなく、名ばかり伯爵家で貧乏な実家の行く末を案じる毎日。そんな時、国王の三人の王子のうち第一王子と第二王子の妃を決めるために選ばれた貴族令嬢が王宮に半年間の教育を受ける話を聞く。最初は自分には関係のない話だと思うが、その教育係の女性が遠縁で、しかも後継者を探していると知る。 これは高給の職を得るチャンス!フィオレンツァは領地を離れ、王宮付き教育係の後継者候補として王宮に行くことになる。 真面目で機転の利くフィオレンツァは妃候補の令嬢たちからも一目置かれる存在になり、王宮付き教師としての道を順調に歩んでいくかと思われたが…。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...