2 / 10
2
しおりを挟む
それにしても、おかしいですわね? この乙女ゲームのアプリって、たしか純粋に恋愛だけを楽しむゲーム。中にはR指定ギリギリのラブシナリオが見られるコーデもありましたが、基本はイケメンと勉強ミニゲームをしたり、ライバルプレーヤーとコーデバトルをしてシナリオを進んでいくタイプのゲーム。ライバルプレーヤーはいたものの、コーデバトルは勝っても負けてもイケメンが褒めてくれたり慰めるために出てくるミニゲーム。恋の障害になるようなお邪魔虫要素である『悪役』なんてシナリオにもいないので、このように衆人環視のもとで責められるいわれはないはずですわ。
第一、ゲームでは婚約者は出てきませんのよ? それにしても物を水浸しにしたり、本を破ったりって……わたくしがするにしては稚拙すぎる虐めですわね。もしやるとしたら、権力を使ってお家の方から…………ね?
コテンと考えに耽りながら、山吹の房を弄るが……何も思い当たることがない。もしかして、でっち上げでもして冤罪被せて断罪する小説のヒロインの真似でもしているとか? いえ、それなら断罪された『悪役』に逆にやられてしまうのがお決まりですわよね? あまり詳しくないのですが、ネット小説では『悪役令嬢』モノが流行っていたとは聞きましたし。まあ、どうでもいいのですが。
とりあえず、聞きたくもないですが先を促しましょう。おバカたちが邪魔すぎて、目の保養時間が減ってしまっていますし。
受け取った愛用の扇を開き、顔の半分まで隠す。隠しながら少し息を整え、おバカ三人――いえ、四人衆? を見据えた。おバカたちは睨み付けられたとでも思ったのか、一瞬怯んでこちらに噛みついてきた。
「なっなんだ! 文句でもあるのかッ!?」
「貴女のような高慢な方に虐められて、ララさんも困っているんですよ!!」
「お前みたいなやつが、殿下にふさわしいと思い上がるなッ」
「…………」
代わる代わる五月蝿いですわね。今の発言だけでも充分ですが、黙っているだけで勝手に盛り上がってくれそうですわね? もう少し、様子を見てみましょうか。侍女たちがもつかは、わかりませんが。
そう思っていると、ついに四人目が小動物のようにプルプルと震えながら、潤んだ水色の瞳でおバカたちを――いえ、バカその一を見上げた。たしかに護ってあげたくなるような可愛らしい見目の方ではありますが……この子、王子が狙いなのかしら?
「アっアルくん! わっわたしは、大丈夫だから……」
「ララ、君が優しいのはよく知っているが、こう言うことはハッキリさせておかないと」
「でも……」
ちらっとこっちを見て怖がるフリ、しなくてよろしくってよ? こちらには、ニヤつく口の端が見えていますもの。ほら、みなさい。バカその一が満更でもなさそうにしだしたじゃない。鼻の下延びているわよ、気持ち悪い。いっそのこと、差し上げましょうか。わたくし的には、この婚約自体不本意ですし。
何も言葉を発していなかったせいか、小さくこぼれたため息が食堂の中にいきわたり、緊張感をもたらしてしまった。見ている側も苦痛よね。
「ひとつ、お聞きしますが。誰に向けて発言しているか、ご存じですわよね?」
「「「「……は?」」」」
あら、四人揃ってとてもおマヌケなお顔になったわね。その顔は、面白いけれど。そのままわたくしの見えないところで、コントでも始めてしまえばよろしいのに。
第一、ゲームでは婚約者は出てきませんのよ? それにしても物を水浸しにしたり、本を破ったりって……わたくしがするにしては稚拙すぎる虐めですわね。もしやるとしたら、権力を使ってお家の方から…………ね?
コテンと考えに耽りながら、山吹の房を弄るが……何も思い当たることがない。もしかして、でっち上げでもして冤罪被せて断罪する小説のヒロインの真似でもしているとか? いえ、それなら断罪された『悪役』に逆にやられてしまうのがお決まりですわよね? あまり詳しくないのですが、ネット小説では『悪役令嬢』モノが流行っていたとは聞きましたし。まあ、どうでもいいのですが。
とりあえず、聞きたくもないですが先を促しましょう。おバカたちが邪魔すぎて、目の保養時間が減ってしまっていますし。
受け取った愛用の扇を開き、顔の半分まで隠す。隠しながら少し息を整え、おバカ三人――いえ、四人衆? を見据えた。おバカたちは睨み付けられたとでも思ったのか、一瞬怯んでこちらに噛みついてきた。
「なっなんだ! 文句でもあるのかッ!?」
「貴女のような高慢な方に虐められて、ララさんも困っているんですよ!!」
「お前みたいなやつが、殿下にふさわしいと思い上がるなッ」
「…………」
代わる代わる五月蝿いですわね。今の発言だけでも充分ですが、黙っているだけで勝手に盛り上がってくれそうですわね? もう少し、様子を見てみましょうか。侍女たちがもつかは、わかりませんが。
そう思っていると、ついに四人目が小動物のようにプルプルと震えながら、潤んだ水色の瞳でおバカたちを――いえ、バカその一を見上げた。たしかに護ってあげたくなるような可愛らしい見目の方ではありますが……この子、王子が狙いなのかしら?
「アっアルくん! わっわたしは、大丈夫だから……」
「ララ、君が優しいのはよく知っているが、こう言うことはハッキリさせておかないと」
「でも……」
ちらっとこっちを見て怖がるフリ、しなくてよろしくってよ? こちらには、ニヤつく口の端が見えていますもの。ほら、みなさい。バカその一が満更でもなさそうにしだしたじゃない。鼻の下延びているわよ、気持ち悪い。いっそのこと、差し上げましょうか。わたくし的には、この婚約自体不本意ですし。
何も言葉を発していなかったせいか、小さくこぼれたため息が食堂の中にいきわたり、緊張感をもたらしてしまった。見ている側も苦痛よね。
「ひとつ、お聞きしますが。誰に向けて発言しているか、ご存じですわよね?」
「「「「……は?」」」」
あら、四人揃ってとてもおマヌケなお顔になったわね。その顔は、面白いけれど。そのままわたくしの見えないところで、コントでも始めてしまえばよろしいのに。
11
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
2/26 番外編を投稿しました。
読んでいただけると嬉しいです。
思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。
とてもとてもありがとうございます!!
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる