ヒマを持てあます令嬢の人生ゲーム

蕪 リタ

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 この時、王子と男爵令嬢はすでに「相手が悪かった」と理解し始めていた。

 
「また、階段から落とすのに上階で待っていたにもかかわらず、そちらの方ときたら『骨折したら痛いからイヤ』とか言われるんですもの。カップより重たいものを持ったことのない私の努力、踏みにじる気ですか?」

 
 この際ですから、言いたいことを言ってしまいましょう! その方が、物語の悪役っぽくもなるでしょうし。

 実は、マルティナはまだこのお遊びゲームを続ける気であった。
 王子や男爵令嬢のおかげでお遊びゲーム自体には飽きていたが、お遊びゲームを使って面倒な王子殿下お子ちゃまのお守役から解放されないかと期待が込められていたのだ。
 

「私だって、フェリクス殿下おバカさんとの結婚なんて嫌ですのよ? でも、王命だから仕方なく・・・・婚約者におさまりました。好きでもない男のために妃教育をこなし――これは、まあ楽しかったですが」
「「楽しかったんかい⁉」」
「ただでさえ自由な時間も少ないのに、好きでもない男が嫌だと言って覚えない外国語を代わりに覚え――わかりますか? あなたに退屈すぎた私の気持ちが!」
「え? 退屈だったの? 楽しかったの? 何⁉」


 必死に私の言葉を聞いているリアナは、そろそろついてこなくなってきましたわ。貴族云々ではなく自分が退屈だった・・・・・と言われて『意味がわからない』みたいな顔をしてらっしゃいますものね。
 横にいるフェリクス殿下おバカさんにいたっては、口を開けたまま混乱して――いるのでしょう。おバカ丸出しの顔ですもの。
 
 
「それなのに、あなたがたときたら……頭の中にお花畑でも咲いてますの? 婚約者がいるにも関わらずところかまわずイチャイチャイチャイチャと! 視界に入るだけでイラッとしてしまい……せめて鬱憤うっぷんでも晴らそうかと始めたんです」


 と、もっともらしいことを言ってはみましたが。人目もはばからずイチャイチャするように仕向けたのも、この私です。
 さて。彼らのかわいらしい反撃のお話もいたしましょうか。


「そちらの方は、殿下に泣きついてでもいたのでしょう。私のストレス解消法に気づいたのか、なかなか上手くいかなくて。『愛しい人』のために殿下なのか、そちらの方なのかはわかりませんが、冤罪を作るのではなく――反撃されてましたわよね?」
「じっ自分の身を守るための反撃なんだから! 正当防衛よ‼」


 もっともらしいことを仰ってますが、『不敬罪で処している』と言う私の言葉は、忘れましたわね。いいですわ、どうせそうだろうと思ってましたし。


「その正当防衛で出してきた紅茶なんて……ただ『苦い』だけですし」
「苦くて何がいけないのよ⁉」
「甘いわ‼ 血を吐いて倒れるような毒でも盛りなさいよ! 百歩譲っても、舌先が痺れる神経毒でしょうが‼」
(((百歩譲っても――毒)))
「お嬢様。怒るところがちがいます」
 

 なんで、周りも若干ひいているのですか? 上位貴族の嫌がらせなんて、毒は普通でしょうに。ミアもなんて顔しているのよ。

 
「毒も盛られない反撃でしたので、次は何にしようかと思っていたら。丁度、そちらのお家の領地が川下にありましたの。上流をせき止めたら、何の反撃が来るかしらとワクワクしながら工事の手配をしましたのに……まさか、周りの領地から感謝されてしまうなんて思いませんでしたわ」
(((ワクワクしながら……)))

 
 もう! 何ですか、この反応は。面倒になりましたわ‼ おもちゃ・・・・たちも張り合いないですし。早急に終わらせて、新しいことを始めたいですわ。
 

「私、飽きてしまいましたの。早く、婚約破棄でもなんでもなさいませ」
「ーっ⁉ なら、思い通りにしてやる‼ マルティナとの婚約なんか、破棄だ! 破棄‼」


 おバカ丸出しの顔でボーっとしてらしたのに。よく、復活されましたわね。フェリクス殿下おバカさん
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