お湯屋の日常

蕪 リタ

文字の大きさ
7 / 8

お湯屋番のバイト

しおりを挟む
 浴場までの廊下の奥にある扉をくぐり、ロッカールームとは少し違う狭い小部屋へと入る。ここはお風呂関連の備品と、お湯の温度管理するバイトが使う二脚のパイプ椅子と一台の長机が置いてあるほぼ物置部屋。

 今日の仕事のために、まず眼鏡の曇り止めをる。夕方から深夜までの温度管理が今日の仕事だ。塗り終わって乾かしている間に、素早く黒のTシャツと七部丈のズボンをき、紺色の前掛まえかけを先が赤色のひもで結ぶ。靴下を脱いでサンダルを履けば、バイト姿の出来上がり。

 眼鏡をかけなおしたところに、今日の相方がやってきた。


「おはよーさん。今日は外国のツアーないんだってさ」
「あら、じゃあ温度管理と軽めの掃除だけかいね?」
「何も無ければ。天気も良かったから、測るのも難しくないね」


 外国さん達が来たら、仕事が増える。文化の違いで、ツアーで来る人たちは大体バスタオルを巻いたまま入ろうとしたり、携帯電話を持ち込んで撮影しようとしたりするから。靴を脱がせたり、バスタオル脱いでもらったり、携帯電話取り上げたり・・・・・・温度管理の時間が若干前後する。若干じゃっかんならいいんだよ、若干ならね・・・・・・。大概たいがいは対応に追われ、三十分くらい前後する。そうなると、後の測定時間がどんどんずれていくから困る。

 今日は国内ツアーと個人のお客さんだけのようで、温度管理と洗面台周りの掃除中心の予想。個人の外国さん達は、温泉のために来日するような人が多いため、注意することもなく日本人のように自然と温泉に入ってくれるからこちらにとってもありがたい。折角お風呂に来てるのに、嫌な思いさせるのも、させられるのも嫌だからね。



 温度計と計測用の紙、鉛筆を二つずつ出して、今日の日付をえる。天気が悪いとボイラーのお兄ちゃん達に温度調整のバルブを開いてもらわないといけないから、もう一セット準備しないといけないが・・・・・・昨日今日と少し肌寒くなったとは言え、スッキリした快晴だったのでいらないだろう。

 書き終えたところに、準備ができた相方が弁当箱を広げた。


「今朝入ってた別の仕事が大変でね・・・・・・お昼が今になっちまったよ」
「おや、そっちの仕事は繁忙期かい?」
「いいや、ただの納期遅れの発注が増えただけさ。全くもう・・・・・・」


 ぷりぷり怒る相方も、話を聞く私ももういい歳だが、怒る相方がなんだか可愛く見えてクスクス笑ってしまった。

 ほほを膨らませたおばちゃんは、笑いながらおやつを出すおばちゃんの手作りおやつにほだされ、しばしのんびりとお茶を楽しんだ。




 今日はゆっくりと温度の管理ができそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...