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第七章 人生のやり直し
インターネットの普及
しおりを挟む11月も終わりに入った。日曜日だし何もやることがない。
自室には”テレビデオ”があるけどブラウン管だし、放送している番組はどれも見たことのある古いものばかり。
アナログすぎて死にそう……。
そんなことを考えながら、階段を降りてリビングへ向かうと。
キッチンから、うまそうな香りが漂ってきた。
お母さんがホットサンドを作っている。
「あら、藍。もう起きたの? おはよう」
「うん。おはよう……」
テーブルのイスに腰を下ろすと、お父さんが新聞紙を広げてひとり唸り声をあげていた。
「う~む。ついに発売するか……”ウインドウス95”。これは買ってもいいかもしれんなぁ」
俺はその懐かしいOSのバージョン名を聞いて、イスからずっこけてしまう。
床に尻もちをついてしまうほど。
「いたたた……」
「藍? 大丈夫か?」
「うん、ちょっとビックリしただけだから……」
「そうか、藍もウインドウス95が気になるか? これほど画期的なOSは他に見たことないからなぁ」
確かにお父さんが言っていることは間違ってないけど、前世でたくさんのパソコンを触ってきた俺からすると、今買う必要は無いと思う。
「もしかして、お父さん。そのためにパソコンを買うの?」
「ああ、検討しているよ。なんてたって、自宅でインターネットを利用できるんだ。これは買いだろう!」
「……お父さん、もうちょっと待って良くない? あと数年後には”98”が出るし、最低でも”XP”ぐらいが良いと思うんだけど」
俺の前世での体験談を話すと、お父さんは顔を真っ赤にして怒り始めた。
「藍っ! お父さんが毎日働いてボーナスで買うんだ! 決めるのはお父さんだ。訳の分からないことを言うなっ!」
「ご、ごめんなさい……」
※
お父さんとパソコンのことでちょっとした口論になってしまい、気まずい空気になってしまったので。
俺はさっさと朝ごはんを食べて、外へ出ることにした。
ただお母さんが作ったホットサンドを3個もおかわりしていたら、お父さんが驚いて静まり返ってしまった。なんでだろう?
しかし、日曜日になると毎回、私服選びに困るな。
そう考えると、毎日通っている中学校のセーラー服はみんな一緒だし、楽だ。
今日のファッションは、オーバーサイズのスエットにチェックのロングスカートを合わせてみた。
うん。この格好なら何か買い食いしても、お腹が苦しくならないぞ。
玄関を出て外に出ると、目の前にJRの線路が目に入る。
いつもなら、そのまま右側に向かうのだが……。
今日は学校が休みなので、たまには反対側へ向かうことにした。
まあ鬼塚の家の方向なのだが、理由は彼に会いたいわけではなく。
前に行った模型屋へ行きたいからだ。
鬼塚の弟、翔平くんが「今度、一緒に大会へ出ようよ」と誘ってくれたから。
”ミニモーターカー”本体とモーターはあるが、カスタマイズは何もしてないから、ちゃんと準備しておきたい。
以前買ったマシンを片手に、模型屋へと向かう。
~5分後~
模型屋に着いて、ひとりで店内を歩いていたら、誰かが俺の肩を叩く。
「水巻?」
「あ、鬼塚……」
偶然とはいえ、またこいつと出くわしてしまうとはな。
でも、今日は彼ひとりだけじゃなかった。
おかっぱ頭の少年、翔平くんも一緒だ。
「藍お姉ちゃん! ひょっとして大会用のカスタマイズするの?」
「うん、大会に出場するからには勝ちたいからね!」
「そうなんだぁ~ じゃあさ、お兄ちゃんに見てもらえば? ほら、だいぶ前の塗装もまだだし」
「え? 鬼塚に? でも、今は片腕が使えないじゃ……」
そう言った途端、鬼塚の顔が赤くなり声を荒げる。
「だ、大丈夫だって! 俺なら水巻のマシンぐらい片腕でも、塗装もカスタマイズできるから! 翔平、大会は来週か?」
「そうだよ、お兄ちゃん」
「よし、水巻。俺にそのマシンを任せてくれ! 必ず優勝できるように仕上げてみせるから!」
なに本気になってんだか……。
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