殺したいほど憎いのに、好きになりそう

味噌村 幸太郎

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第八章 ディナーデート

女の子あるある

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 鬼塚のおばさんと話し合ったというか、一方的にお礼を言われただけなのだが……。
 どうもかなり疲れていたらしい。そこへ息子たちのいじめやトラック事故などが耳に入り、心を病みそうになった時。
 俺と言うおっさんが藍ちゃんに憑依したため、結果的に愛する子供たちを助けたことになる。
 だから、俺が女神に見えるそうだ。
 まあ、確かにあの”クソ女神”がいなければ、こんな奇跡は生まれなかっただろうが。

 涙をポロポロとこぼしながら、俺とお母さんに何度も頭を下げるおばさん。
 自宅を出るまで何十回「ありがとう」と言われたことか……。
 まあ褒められるってのも悪い気分じゃないな。

  ※

 翌日の朝、いつものように優子ちゃんと学校まで肩を並べて歩いていると。
 彼女が不服そうに頬を膨らませて口を開く。

「最近さぁ、藍ちゃん。冷たくない?」
「え? 私が? そんなことをしているつもりはないよ……」
「だってさ! なんか鬼塚くんの弟も助けるし、鬼塚くんのいじめも解決したって聞くし。昔の藍ちゃんからしたら、考えられない行動だよ!」
「う……」

 確かに優子ちゃんの言う通りだ。
 元々、この水巻 藍という少女は文学好きで大人しく、頭も良い。そして悪く言えば猫背の陰キャな女の子。
 そんな女の子が元いじめっ子の少年と弟を助けるとは思えない。
 接点もないし……。

「前はもっと私と遊んでたじゃん? 最近は鬼塚くんとばっかり……」
「そうだったけ? ちなみにどんな遊びしてたの?」
「ほら、いつも近所のスーパー。”バキバキ屋”のフードコートで、お互い買った本を読んで時間を潰してたじゃん」
「え? それって遊びなの? ちなみにどれぐらい読書していたっけ?」
「ん~ 6時間ぐらいかな。大体アイスコーヒー1杯でそれぐらいは粘ってたもん」

 営業妨害だろ……。
 そんな遊びは絶対にしたくない。

「そ、それ以外で遊ぶことないの? もっとこう女の子らしい遊びとか」
「女の子らしい……? そうだなぁ、あ! 良いこと思いついた! もう少ししたら冬休みだから、私の家に遊びにおいでよ!」
「優子ちゃんのお家で遊ぶの? まあそれならいいかな」
「じゃあ約束だよ? 藍ちゃん」

 そう言って、右手の小指を差し出す優子ちゃん。
 俺も小指を差し出して、優子ちゃんの指と結んで約束を交わす。

「うん、約束。女の子同士でパジャマパーティーとかいいかもね」
「楽しみ~ あ、お姉ちゃんもいるから、きっと色んな話が聞けると思うよ」

 忘れていた。あの画力が半端ない腐女子のお姉さんもいたんだった……。
 お家遊びはやめておいた方が良かったかな。

 ~数時間後~

 中休みに入り、トイレへ行こうとしたら、優子ちゃんに声をかけられた。

「藍ちゃん、トイレなら私も付き合うよ」
「あ、うん……」

 女同士ってなんでこう”連れション”をしたがるのかね?
 俺からしたら、ただの排泄行為だ。それに女子は男と違ってみんな個室でするのに、意味あるのか。

 廊下を歩きながら、優子ちゃんが花柄のハンカチを取り出して、俺に見せつける。

「じゃーん、これ。いいでしょう?」
「うん、かわいいね」

 褒めたと思ったのに、優子ちゃんは頬を膨らませて怒っている。

「ちょっと、藍ちゃん! なんで気づかないの?」
「は? 普通にかわいいハンカチだと思うよ」
「違うよっ! おそろいでしょ? 藍ちゃんと!」

 言われるまで気がつかなかった。確かに俺の自宅のタンスに入っているハンカチと同じ柄だ。
 わざわざ同じものを買ったのか。

「あ、本当だ……でも、それ何の意味があるの?」
「ひどいっ! 藍ちゃんと私だけのハンカチだからお揃いにしたんだよ? 嬉しくないの?」
「え……ごめん。よくわからない」
「やっぱり、最近の藍ちゃんは冷たいと思う!」

 中身がおっさんだからな……前とは違うでしょうよ。
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