殺したいほど憎いのに、好きになりそう

味噌村 幸太郎

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第三章 1995年の休日

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 大好きな”ギャンプラ”の話で、鬼塚のあとをついていくことになった。
 まさか、こいつの家へ遊びに行くなんて考えられなかった。
 でも……昔、前世でいじめられる前に、何回かこいつと遊んだ記憶があるような……。

 ~前世での1993年頃~

 確か、小学校の5年生になってクラス替えをしたころ。
 鬼塚という少年に出会い、最初のころは俺に興味を持ったらしく。
 何回か、俺の家に「遊びに行ってもいいか?」と言われて、嬉しかったけど。

 いざ自宅に招くと態度が変わって……。
 
「水巻ん家ってさ。金持ちなの?」
「え? ごく普通の家庭だと思うけど」
「ふ~ん、この家が普通ね……」
「どういうこと?」
「お前には、分からないことだよ」

 それから、俺のゲームソフトや大切にしていたプラモデルも壊すし。
 母さんが気を利かして出してくれたお菓子も食べずに捨てる……本当に失礼なやつだと思った。
 その後も鬼塚は、何度か俺の家へ遊びに来たけど。
 終始、機嫌が悪く。部屋にあるゲームを片っ端から遊びまくって、おまけに部屋を荒らして帰ったけ。

 正直あいつが何を考えているのか、わからなかった。
 気がついたら、学校で俺を殴り始めて、何もしてないのにしょっちゅう股間を蹴られる。
 私物は全部、トイレの便器に捨てられる……など、陰湿ないじめを繰り返す。
 一体、俺が何をしたってんだ?


 あ~ 思い出したら、イライラしてきた。
 長い髪をグシャグシャにかき回していると、前を歩いていた鬼塚が驚く。

「み、水巻? どうかしたのか?」
「いや……別に」

 目の前にいるお前がやったんだぜ? と言っても、この世界じゃ別人みたいなものだからな。

「あ、あれが俺ん家だよ」

 そう言って彼が指差した方向には、赤レンガ調のタイルで作られたマンションが並んでいた。
 5階建てのマンションが4棟。
 先ほどの模型店から歩いて数分。JRの踏切を渡ったところにすぐある。
 
 てことは、俺の家からかなり近いな。
 踏切を渡って左手に進めば、すぐだから。
 知らなかった。鬼塚の住むマンションがこんな近くだったとは……。

  ※

 彼に案内されるまま、黙ってついていく。
 このマンションは管理人がいるけど、エレベーターは無いようだ。
 鬼塚が住んでいるのは、最上階の5階。
 膝が疲れる……。

 5階に着くと、左右に二つの扉があったが、右手にある扉は開けられたまま。
 無防備だな。
 すると、中から幼い少年が出て来た。

「お兄ちゃん! お帰り!」

 そう言って鬼塚に抱きつく少年。
 誰だ、この子?
 鬼塚に弟なんて、いたっけ? ダメだ。思い出せん。
 
「おう、ただいま。”翔平しょうへい” 模型屋でインク買ってきたから、また塗装してやるよ」
「本当? お兄ちゃん、大好き!」

 と鬼塚の胸に自身の顔を埋める少年。
 兄貴と違って、素直で可愛らしいな。肌も白いし、頭はお坊ちゃまカット。
 取り残された俺は、ひとりでボーッと二人を眺める。
 すると、翔平と呼ばれた少年が俺に気がつく。

「あ、この人。誰?」
「そうだった……この人はお兄ちゃんのクラスメイトで、水巻さんだ」

 急に名前を呼ばれてビックリしたから、緊張してしまう。

「え、えっと……水巻 藍って言います。よろしくね」
「そっか! じゃあ、藍お姉ちゃんだねぇ。お姉ちゃんはギャンプラ好き?」

 別に鬼塚の弟とか、全然興味ないし。むしろ、前世の恨みをこの子で晴らしてやりたいぐらいだが……。
 身体は正直なもので、つい反応してしまう。

「好き! めっちゃ好き! 翔平くんはシリーズならどの世代?」
「え? ギャンダムならどれも好きだよ」
「違うって、私が言いたいのは、地球軍派か宇宙軍派ってことだよ!」
「えぇ~ よくわかんない」

 どうやらこの子には、俺の持っている全知識を叩きこんでやる必要があるな。
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