殺したいほど憎いのに、好きになりそう

味噌村 幸太郎

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第五章 バスケットボーイズ

いじめられる理由

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「はい。では、教科書の130ページを開いて……」

 数学の授業になり、担当のハゲ教師に言われるがまま、指定されたページを開く。
 教科書に書かれている問題を解いて、各自ノートに書き提出しろとのこと。
 ヤベッ、マジでわかんねぇ……。

 ふと隣りの席に座る褐色の少年を見ると。
 手に持つシャーペンはスラスラと動いていて、止まることはない。
 意外だ。鬼塚は頭も良かったのか?
 迷うことなく、問題を解いている。

 それに比べて、俺は一問も解けていない。
 どうしよう? このままじゃ、チャイムが鳴ってしまう。白紙のまま提出したら、怒られるよな?
 ええい! もう無茶苦茶で良いから答えを書いちゃえ。

  ※

 今日、一日過ごしていて、思ったことがある。
 それは鬼塚が全然、いじめられていないということだ。
 一体なぜだろう?
 あの天ヶ瀬あまがせという上級生のヤンキーこそ、姿を見ないけど。
 取り巻きである他の同級生は何人か見かけたのに。

 ”中休み”に鬼塚を連れて、渡り廊下で話を聞いてみることにした。

「ねぇ、なんで最近、鬼塚はいじめられてないの?」
「え? 俺がいじめ? いじめられている覚えはないけど……」

 自覚していないのか。これはこれで、かわいそうだな。

「ほら、天ヶ瀬ていう二年生とその他にも何人かの同級生が集まって、鬼塚を狙っていたでしょ?」
「ああ……あいつらね。ダサい奴らだよ。一人じゃ何もできない。しょうもない人間」
「え? でも鬼塚のことを大人数でめちゃくちゃにしていたじゃん」
「だから、水巻が言ったそのままだって。自分一人じゃ、俺にケンカを売ることすらできないんだよ」
「どういうこと? じゃあなんで、鬼塚は天ヶ瀬ていう人に狙われているの?」
「それは……ちょっと面倒くさい話でさ」

 彼は話したくない様子だったが、俺がしつこく理由を聞いてみると。渋々話してくれた。
 元々、小学生時代に鬼塚は一人の級友をいじめていたのだが。
 そのいじめに加担していたのが、今鬼塚をいじめている同級生たちだ。
 しかし、被害者である級友が引っ越してから、学校内で問題になり主犯として、取り巻きに罪を擦り付けられた。

 そして中学校に入学したと同時に、鬼塚は夢だったバスケットボール部に入部。
 背は低いが、運動神経の高い彼は一年生とは言え、チームから選手として高い評価を得たそうだ。
 しかし、一歳上の天ヶ瀬という先輩がそれをよく思っておらず、彼にちょっかいをかけるようになり……。
 気がつけば、今のような状態になっていたそうだ。

「そうなんだ。じゃあ、天ヶ瀬先輩の逆恨みが原因なの?」
「まあ逆恨みかは知らないけど。そうなんじゃねーの? 上級生の天ヶ瀬が今、謹慎食らっているから、あいつらは何もしてこないし」
「謹慎? 中学校でそんなことある? 一体、なにをしたの?」
「あいつは色々と学校で揉め事が多いから、同級生と殴り合いになったらしいぜ」
「ふーん」

 つまり、トップが不在なため、ヒエラルキーが変わってしまった。
 早い話が天ヶ瀬先輩さえいなければ、鬼塚へのいじめも無くなるということか?

「先輩には悪い話だけど。天ヶ瀬先輩がいない日は、同級生からも狙われないってことだよね?」
「うん。あいつら本当はビビりだから、群がって俺をボコボコにしたいだけだよ」
「鬼塚さ、このことを先生に話したりした?」
「いや、なんでする必要があるんだ?」
「あるじゃん! トイレで裸にされたり、カバンをボールにされたり……もう立派ないじめだよ!」
「水巻、気を使ってくれるのはありがたいけど……こればかりは、時が解決するしかないって」

 のんきな鬼塚の回答に、俺は怒りを隠せずにいた。
 
「はぁ!? 下手したら、命の危険に関わることなのに!」
「違うんだよ。俺がバスケを諦めたらいいけど。諦められないから、我慢するしかないってことなんだ」
「バスケをやるのに、なんでいじめられないといけないの!? おかしいじゃん!」
「まあ、元々は俺の小学生時代が悪かったからだけど……今回の問題は、俺の夢が関わっているんだ。そこにはどうしても天ヶ瀬がいる」

 だからってバスケをやるために、あんな酷いいじめを味わえってのか。
 おかしいだろ……鬼塚のやつ、いじめられすぎて感覚がマヒしてないか?
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