殺したいほど憎いのに、好きになりそう

味噌村 幸太郎

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第五章 バスケットボーイズ

インターバル

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 昨晩は深夜遅くまで、お母さんに”女の子たるもの”を説教され続けたため、睡眠不足。
「結婚するまで、キスはもちろんのこと。身体のどこを触らせてもダメ! 男はケダモノなんだから!」
 と酷い性差別を体験してしまった……。
 じゃあ、中身がおっさんの俺は何なんだよ?

 鬼塚からもらったゴマフアザラシのキーホルダーだが、机に飾ろうと思ったけど。
 お姉ちゃんにいじられるのも嫌だし、せっかくだから学校のカバンにつけていこう。

  ※

 寝不足だけど、どこか身体は軽くて心もウキウキしていた。
 だから早起きして、さっさと準備を終えると玄関の扉を開く。
 
「おはよう、藍ちゃん!」
「あ、おはよう。優子ちゃん」
「今日は珍しく早起きだね? いつも朝が苦手なのに……」
「まあ慣れたのかな、あはは……」
「ふ~ん、ていうかさ。なんか焼けた?」

 ギクッ!? さすが優子ちゃん。
 昨日マリンワールドから自宅まで、二時間も歩いて帰ったので、どうしても肌が焼けてしまった。
 鬼塚ほどではないが……。

「ちょ、ちょっと昨日、遠出したからさ……」
「え? まさか、本当に鬼塚くんと水族館に行ったわけじゃないよね?」

 怖っ! 見たこともないような目つきで俺を睨む。
 声も冷たいし……こんな優子ちゃん、嫌だな。

「えっとね……優子ちゃん。私はさ……」
「私、行くなって言ったよね? 男なんて獣しかいないんだよ? ホテルに連れ込むことしか考えてないチンパンジーなの」

 すごい偏見だな。うちのお母さんと話が合いそう。

 
 とりあえず、中学校へ向かうことにして、歩きながら話題を変えてみる。

「そのぉ……唐突な話なんだけど。優子ちゃんって”機動戦士ギャンダム”とか見ないよね?」
「え? 見るよ。特に今期の”W”は男キャラが5人もいるし、毎回どのカップリングにするか迷っちゃうもん」

 やはりそっち目線で見ているのか……。
 しかし、これで優子ちゃんの怒りを抑えることができる。

「じゃあ、優子ちゃんは誰が好きなの?」
「ん~ 今のところ主人公かな。無口なところが良いし、邪魔な女キャラを一話目で『お前を殺す』って宣言しているから潔い男の子だよね~」
「えぇ……」

 あれは、そういう意味じゃないと思うんだけど。

「そうだ! Wを語るなら、お姉ちゃんの新作があるんだけど、読まない?」

 ここで読まないと、昨日のことでまた怒り出すんだろうな……。
 よしっ! 気合を入れて拝読させてもらおう。
 
 ~10分後~

 激しいめまいと吐き気で、どうにかなりそうだ。
 大体、二次創作のマンガってどうしても作者の絵柄というか、癖が出るものなのに。
 オリジナルとなる作品へのリスペクトを忘れていない。
 あまりにも忠実な二次創作。だからこそ、原作ファンで俺にとっては、苦痛。
 この姉妹、センスの塊り。

「どうだった? 今回のお姉ちゃんの作品は?」
「じ、純粋に創作者として、すごいと思います。しかもアナログなのにここまで仕上げるとは……」
「アナログ?」
「とりあえず、お姉さんにはそのまま突き進んで下さいと、お伝えください」
「なんで、敬語なの? 変な藍ちゃん」

 あなた達の創作に対する情熱がそうさせたのです……。

 二人して長い坂道を上っていると、赤いユニフォームを着た少年たちが道路に並んで立っていた。
 担当の教師が笛を加えて、生徒たちを見守る。
 次の瞬間、ピーッ! という音と共に少年たちは、一斉に坂道を全力で駆け上がっていく。
 坂道だから、みんな顔を真っ赤にして走っている。

「うわっ、なにあれ?」
「あれは”インターバル走”だよ。たぶんバスケ部だね」

 優子ちゃんが教えてくれて良かった。
 軽い気持ちで部活に入れば、俺も朝からこんな苦行をさせられたのか。
 しかし、次の列に並んだ少年を見て、俺はドキッとしてしまう。

 昨日、一緒に水族館を回った褐色の少年。鬼塚 良平。
 俺の視線に気がついたのか、彼はこちらに振り向いて手を振る。

「よっ! 水巻、昨日は悪かったな」
「あ、うん。別にいいよ……」

 と恥ずかしさから、前髪を触れていると。隣りにいた優子ちゃんが鬼塚を睨みつける。

「ねぇ、鬼塚くん。私に隠れて藍ちゃんと密会しているの?」
「密会? 普通に二人で水族館へ行って、遊んだだけだよ……」
「私の藍ちゃんなんだから、勝手に連れ回さないでよね!」
「ご、ごめん。桃川ももかわ……」

 いや、誰のものでもないけど。
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