殺したいほど憎いのに、好きになりそう

味噌村 幸太郎

文字の大きさ
58 / 105
第六章 いじめの解決法

もう一つの顔

しおりを挟む

 天ヶ瀬あまがせ先輩の家から出て来たお姉さんは、俺の話を聞くと「ここで待ってて」とまた家の中へ戻っていく。
 あの人、本当に先輩のお姉さんなのかな? 先輩はハーフって感じの顔つきだが。
 さっきのお姉さんは髪の色こそ明るかったけど、顔は普通の日本人女性に見えた。
 それに年もかなり上の人。たぶん、20代前半ぐらいじゃないかな?

 なんてひとりで考えこんでいると。
 門扉がゆっくり開く。そこに現れたのはモデルのような長身のイケメン。
 坊主頭だが、スタジャンにジーンズを格好よく履いてみせる。
 天ヶ瀬先輩だと分かるまで数秒かかった。

「あ、お前。デカ女だろ?」
「どうも……この前はすみませんでした」

 そう言って頭を下げるが、先輩は俺に目もくれず、ジーンズのポケットからタバコを取り出す。
 留年しているとはいえ、年齢はまだ15歳だぞ。堂々とタバコを吸うとは……。
 本当に不良なんだな。

「で、一体なんなの?」

 なんて冷たい声なんだ……この前の一件もあって、更に怖く感じる。
 でも、勇気を持って謝らないと。

「あ、あの……この前、私。天ヶ瀬先輩が鬼塚の腕を折ったって勝手に決めつけて……。本当にすみませんでした」
「はぁ? お前さ、一体なにがしたいの? 俺をバスケ部から追い出したかったから、あんな風に文句を言いに来たんだろ」
「いやいや、本当にこんな結果になるとは考えず、やってしまいました……」
「ふぅ~ん。ま、終わっちまったもんは仕方ないよな」

 そうは言うが、俺の顔面に向けて口から白い煙を吐き出す。
 目に染みるし臭い。嫌がらせのように感じる。

「なんて言ったらいいか……私の勝手な行動で先輩にも迷惑がかかって」
「お前さ。めんどくさい性格って言われない?」
「え?」
「人間何かをする時にさ、全部を捨てたくないとか。ただの偽善者だぜ」
「……」
 
 罪悪感からか、何も答えることができない。
 まだ夕方とはいえ、閑静な住宅街だ。
 あまりの静けさに耳が痛くなる。

 気まずい空気の中、時間だけが過ぎ去ると思っていたその時だった。
 また門扉が開かれると、先ほどの若い女性が現れる。
 外行きの綺麗な格好をして、どこかへ向かうようだ。

「”ウィリー”、私もう行くから……あんまり他の女に優しくしないでよ?」

 そう言うと俺の顔を睨みつける。
 なんか、勘違いされてない?

「わりぃ、わりぃ! こいつはそんなんじゃないって……俺は年下の女が嫌いだって言ってるだろ? ”香里かおり”が一番だってぇ~」

 先ほどまでの態度とは一変し、天ヶ瀬先輩は甘えるような声で香里と呼ばれた女性の肩を優しく掴む。

「そう言って、この前も他の女を家に連れ込んだでしょ? ウィリーが言うから家の掃除をしたけど、知らない髪の毛落ちてたもん」
「いやだなぁ~ あれはきっと親戚の子じゃないかな、あはは」
「私のこと飽きたなら、もう別れてもいいんだよ……」

 なんか急に痴話ゲンカが始まったぞ。
 俺、この場にいて良いのかな?

「待てよ、香里。俺にはお前しかいないって!」

 そう言うと天ヶ瀬先輩は何を思ったのか、その場で彼女を抱きしめる。
 最初は女性側も嫌がっていたが、先輩の甘い言葉と濃厚なディープキスにより、頬を赤く染めて言いなりになってしまう。
 一体、俺は何を見せられているんだ?

「っぷはぁ……もうウィリーのばか」
「な? 俺には香里しかいないって」

 天ヶ瀬先輩がウインクしてみせると、女性はため息をついて苦笑する。
 肩からかけていたショルダーバッグから財布を取り出すと、1万円札を3枚ほど先輩に手渡す。

「また電話してよね」
「もちろんだって! 俺には香里しかいないから、愛しているぜ!」

 天ケ瀬先輩って根っからの不良だと思ってたけど。
 女癖の悪いナンパ野郎というか、ヒモだったの?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

処理中です...