6 / 26
第6話
しおりを挟む『おはようございます。もうすぐ、名古屋駅です』
目を覚ますとビルとビルの隙間から綺麗な朝日が昇っていた。
「おお、久しぶりの名古屋だぜ」
「おめーさん、名古屋の人間だぎゃ?」
「だぎゃ? ああ、いや、違います…」
隣りに座っていたサラリーマン風のおっさんに話しかけられた。
「そうか、そうか。草加せんべい。だぎゃ!」
なんだこのうぜーおっさんは。
「んで、何しに来たんだぎゃ? ひょっとして、女だぎゃ?」
「まあ、そんなもんですね」
既に自分の女と化す初恋の相手(20年以上前の)
「そりゃ良いだぎゃ。んじゃ、フラれたら俺んとこ来いだぎゃ!」
渡されたのは、ピンクの名刺サイズのカードだった。
「なんすか、これ……」
風俗のチラシだった。
「ぎゃっぎゃっ! ウチなら可愛い女の子もぎょうさんおるだぎゃ! あ、着いたぎゃ……んじゃ、それじゃな!」
風俗の店長らしきおっさんは、ニコニコ笑いながら去っていった。
「いや…俺には必要ないっしょ!」
バスから降りると、たくさんの人たちが広い駅の中を行き交っていた。
「うわー、俺のいた頃と全然違うじゃん! マジで迷うな」
20年以上の違いを感じながら、案内を見たり、人の歩く方向を見たりして、改札口を目指す。
脇汗をかきまくって、ちょうど良い頃合の男性フェロモン全快の悪臭が鼻にまで伝わってくる。
やっとのことで切符を買い、電車に走り乗る。
祭日だったので比較的、座席は空いていた。だが、立って窓から見える風景を楽しんでいた。
といっても、しばらく地下が続き、目標の駅に近づかないと外に出ない路線なのだが。
やっと見えた外の風景はたくさんの思い出がよみがえってくる。
「おお、動物園か懐かしいな! あそこはやっぱコースターだよな」
「あのデパートまだやってんのかよ? チャリでいったよな」
懐かしい風景に嬉しさも覚えたが、同時に胸に大きな穴ができたようで、すごく苦しかった。
近くに座っているカップル、若い女子大生。家族連れ。
みんな…みんな…この20年で大人になったんだよな。
俺は20年で何も…1つも成長できてない。
イッチーや神埼は…。悪い予感が胸をしめつける。
頭を強く左右に振る。
(そ、そんなの許さない! 認めない! 俺は…俺は今度こそ神埼と…)
少年時代を過した馴染のある駅についた。
駅に着くとそんなことは忘れ、腹が鳴りまくっていた。
「腹へったな。この近くでうまいメシ屋は……お! 『ガキガキ屋』があったな♪ あそこの五目ごはんがうまいんだよ」
ガキガキ屋というのは中部地方ではよく見られるラーメンなどを主にしたファーストフード店だ。
俺は子供の頃、ラーメンと五目ごはんを食べたあと、デザートにソフトクリームを食べるのが大好きだった。
駅近くの店舗はいつも女子高生がたむろしていて、デザートを食べなら学校帰りに化粧をしていたものだ。
そのガキガキ屋は歩けども歩けども見つからない。
「なんでだ? あそこはでかいチェーン店だろ?」
だが、やはりなかった。移転とかかな? まあ考えたって仕方ない。
舌打ちをしながら違う店を記憶の中から考えて歩く。
「んー、この近くなら…ちょっと歩くが、どうせイッチーの家に行くんだし、『キャビア』に行くか!」
キャビアというのは近所にあったゲームセンター。なのだが、同時に店内で弁当も売っていた。
そこの海苔弁当がマジでうまい。
思い出していると胃袋が踊りだし、歩調が自然と速くなる。
だが、目標らしき場所についても、これまた見つからない。
「うそだろ? あの、俺たちのキャビアだぞ?」
いらつきながら、イッチーに電話する。
「おい、キャビアがないぞ? どういうことだ?」
『え? キャビア? なんのこと?』
「ほら、駅近くのゲーセン」
『ええ!? ヒロちゃん、もう名古屋にいるの!? キャビアならかなり前に潰れたはずだよ?』
「はあ!? 俺たちのキャビアが!?」
『そんなにゲームしたかったの? 僕ん家ですればいいじゃん』
「ちげーよ、あそこの海苔弁当が好きだったんだよ!」
携帯の向こうでしばらく爆笑している声が途切れなかったので、とりあえず電話を切ってコンビニに向かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果
景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。
ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。
「俺……ステラと離れたくない」
そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。
「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」
そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。
それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。
勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。
戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──?
誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。
イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在
唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話
中山加恋(20歳)
二十歳でトオルの妻になる
何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛
中山トオル(32歳)
17歳の加恋に一目ぼれ
加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する
加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる
会社では群を抜くほどの超エリートが、
愛してやまない加恋ちゃんに
振り回されたり落ち込まされたり…
そんなイケメンエリートの
ちょっと切なくて笑えるお話
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる